衝撃のツールスレーン博物館

12/9  シェムリアップ→プノンペン 


 ドアをノックする音で起こされる。時計を見ると6:45だ。バスの出発時刻は7時、GHのスタッフに迎えが来ていると言われる。急いで支度を済ませて外に出ると、迎えは行ってしまったらしい。“タイゾウ”の運転するバイクのうしろに乗り、送ってもらう。陽気なGHだった。


 バス乗り場に着くとけっこうきれいなバスが並んでいる。ラオスみたいなトラックを覚悟していた。“タイゾウに”1ドル支払いお別れする。すっきりしない別れかただが、それがカンボジア人らしい。


 バスは出発する。道は舗装されていて快適だ。今日も食事代を節約したいので、できるだけメシを我慢する。寝たり起きたりともうろうとしながらバスの中でぐったりする。頭がはたらかない。


 一度目の休憩所のメシは高いので我慢する。二度目の休憩でメシを食べる。バスに戻ると完全復活する。眠気はきえさり、妄想しているとプノンペンに到着する。


 ちょうどお昼時なので時間はまだまだある。バスを降りると客引きのバイタクが寄ってくる。シェムリアップのカンボジア人が宿を紹介してくれ、男が待っていると言われているので探すと、「いた!」自分の名前が書かれた紙を持っているカンボジア人を発見! なんてわかりやすいのだろう。バイクのうしろに乗る。


 バス乗り場からどんどん離れていく。プノンペンを完全になめていた。おもった以上に広い街で、人も大勢いる。バイクがいたるところで走り、道はたまにしか信号がないので危ない。店はたくさんあり、屋台も多い。食べ物には 困らなさそうだ。


 GHに到着する。外から見るとわからないが、中に入るとたくさんの白人がきれいなレストランでくつろいでいる。ネットも使えるし、広くて快適そうだ。部屋を見るとあまりきれいではないが、ドミトリーが1泊1ドルと破格の値段。シングルも2ドルと安いがドミに決定する。部屋にはベッドが二つあり、結構快適だ。


 チェックインを済ませて、部屋で地図を見ると、中国大使館が近くにある。そうだ! プノンペンで中国ビザをとればいいんだ。チャリを借りて、ネットカフェに寄り、ビザについて調べて、出発だ!


 プノンペンの道は“デンジャー”だ。気をぬくとバイクにひかれそうになる。地図をたよりに大使館を探すが、なかなか見つからない。あらためて、自分の方向音痴を思い知らされる。


 何度も人に聞き、ようやくたどり着く。ところが平日の9~11時まで、とっくに閉まっている。まあ、ベトナムでとればいいか。


 疲れたので道路に座って地図をひらく。たまたま通りかかったアイス屋から300リエルのアイスを買い、ほおばりながらどうしようか考えていると、ツールスレーン刑務所博物館がちかくにあることに気がつく。余裕があるので行ってみよう。


 あたりを探しまわるがまたまたわからない。また、人に聞き、なんとかたどり着くと、外観は当時の状態っぽく荒れている。チケットを買い中に入る。


 殺風景な部屋にはベッドがひとつだけ置いてあり、壁には当時の写真がでかでかと貼られている。写真はモノクロでわかりにくいが、かろうじて人間だとわかる。自分が今いる場所で、残酷なことが行われていたとは実感しにくい。


 建物は全部で3棟だ。1つは小部屋だらけで、2つ目は殺された人々の写真が展示されている。すさまじい数の写真は大人から子供までさまざま、全員目に輝きはなく、冷たくて暗い。落ち着いて見透かしているような顔の人もいれば、あっけにとられている人もいる。感情がなさそうに見える。


 生き残った人々の写真も展示されている。当時の写真とその後の生活の写真があり、男の人が子供と手をつないでいる写真をみると、不思議と熱くなってしまう。特に印象的なのが一人の老婆の写真、“Still Living”と写真に書かれていて、その老人の目は深みがあり、強さを感じる。いろいろと見てきたのだろう。


 3つ目の建物は、大きな部屋をレンガでしきられた独房がある。とてもせまくてより恐怖を感じそう。大量のどくろが展示されていて、凄惨な写真が何枚も張られている。なぜ、こんなことをポルポトはしたのか? ポルポトという人物に非常に興味がわく。空腹で疲れはじめたので、アンケートを書いて宿へ戻ることにする。


 途中でメシを食い、宿を探すが、やっぱり迷う。なんとか宿にたどり着き、ネットカフェに行くと日本人がいる。話しかけられ、ガイドブックが見たいと言うので、あとで貸す約束をする。


 ペグメールにどっぷりとつかり、遅くなる。さっきの日本人ともう一人いる。警戒心がなく、はなっから大麻の話をふってくる。そういう人はわかりやすくて大好きだ。ガイドブックを渡し、宿の前のベンチで話す。


 ガイドブックを渡した人は以前に南米にいたらしく、南米の安全さと快適さを教えてくれる。思ったよりも安くていろいろとまわれそうだ。毎日コカインを吸っていたみたいだ。


 もう一人の日本人は、我が強くて個性的、カンボジアの大学に通っているらしく入学して三ヶ月になるそうだ。それまで2年間デンマークにいたらしい。すごい! 英語が好きらしい。


 話しているとバイタクのおっちゃんが近づいてくる。大麻を持っているか聞くと値段が高い。日本人二人がメシを買いに行っている間に話しをする。バンビエンでお世話になった“サブー”を持っているらしく九ドルだ。ちょっと買えないや。


 二人が戻り、話をしているとついに三ドルでオッケーサインがでる。やったー! さっそく日本人三人で吸うことにする。“デンマーク”はノードラッグなのでみてるだけ、“南米さん”と吸う。うん、おなじ味だ。“南米さん”が大麻を持っているので一緒に吸う。完全にぶちきまり、さらに話しをする。“デンマーク”は良くしゃべる。自慢が多くて偏見を持っているが、自分を持っている男だ。


 夜中まで話をして寝る。なにげに充実した一日だ。

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