ビーチー原人

11/26  inシーパンドン 


 日の出とともに起きる。島の朝は静かで涼しく、気持ちが良い。体調は良さそうなので、昨日考えたとおり、滝の近くのビーチでジャンベをたたくことにする。長い時間いるつもりなので、バンビエンで買った“もの”を久しぶりにとりだす。ザ、“サブー”!


 赤くて小さい錠剤をはさみの先端におき、ろうそくであぶって煙を吸う。プッシャーの家で吸ったときみたいに大量の煙は出ないが、科学臭い煙がしっかりと肺に入ってくる。どれくらいの量を使っていいかわからないので、半分でやめておく。


 具体的にどう変化するとかはなく、よくわからない。けど、気分は盛り上がる。錠剤にXYと彫ってあるので、実は“エクスタシー”で飲まなきゃ効かないとか、くだらないことを考えてしまう。準備はそろったのでチャリを借りて滝へ出発する。


 空は曇っていてすこし残念だが、チャリをかっとばす。橋を渡りチケット売り場をのぞくと人はいない、通り過ぎて滝へ向かう。滝の手前にはチケットチェックのおばちゃんがいるが、チェックせずに通り過ぎる。滝に着き、ココナッツじいさんに挨拶して、ビーチへ急ぐ。


 ひとけがゼロでグッド! たき火をしたいので、夜まで楽しめるだけの大量の木を集める。木に火をつけて砂と砂の大きな割れでたき火をする。岩に座りジャンベを叩くと、「かるい!」腕は軽く動くし、音もクリアだ。確実にうまくなっている。うーん、感動。楽しくなりひたすらたたき続ける。


 涼しくて最高だ。けっこうたたいたので火に木を足し、朝の一服をする。うーん、気持ち良い! 最高!とにかくたたき続ける。汗が出て暑くなってきたので、上半身裸になりたたき続ける。


 ビーチでたき火をしている、上半身裸で髪の毛がぼさぼさの浅黒い日本人、見た目は完全にこじきだろう。一人で無人島暮らしをしているような錯覚におちいる。人がきたらまずいな。日は昇り、空を覆っていた雲はいつの間にか消えて、太陽がでかい顔をしている。


 長い時間人は来なかったが、朝になると外国人カップルがやってくる。裸で英会話本を読んでいたので、ふいをつかれてびっくりする。つい挙動不審になってしまう。外国人は関係無しに平和だ。急に恥ずかしくなり、ジャンベを叩くが、音がでかいのでニット帽をかぶせる。


 外国人カップルはどうやら河に入るらしく水着だ。女性はトップレスだ。別にどうってことはないが、旅行中でたまりにたまっているので興奮してしまう。河に入り下の水着も脱いでいる。目が悪いので良く見えないのが残念だ。


 その後も外国人軍団が来たりと、思ったよりも人がやってくる。たき火をしながらあまり気にせず、ジャンベをたたく。外国人連中が全員帰ったので再び大きな音でたたき始める。


 暑い! T-シャツを着れない暑さだ。持ってきた水はすっかりお湯になり、おいしくない。たき火の木は切れかかっているし、暑いので帰る準備をする。木をすべて燃やし、ぶりってジャンベをたたき始めると、ラオス人の男の子が二人やってくる。見ているのでしかたなく真面目にたたくことにする。今日は長時間たたいているので、それなりにたたくことができる。なかなか良い感じだ。男の子はまだ見ている。思ったよりも楽しいぞ。


 気がつくと男の子はいない。終わりとしてはちょうど良かったのでてっしゅうする。


 ココナッツおじさんのところへ行き、ココナッツを飲む。うまい! 朝から何も食べずお湯のみだ。普段よりもココナッツの味が舌にしみる。店のハンモックでくつろいでから出発する。


 時計を見ると一時だ。六時間もビーチにいたと考えると、「よくいたな~」とあきれてしまう。橋のふもとにあるレストランでフルーツサラダを食べて宿へ戻る。


 体中砂だらけなのでシャワー浴びるが、30秒で水は止まる。中途半端だがシャワーを終えて、部屋でくつろぐ。さすがに疲れたのでベランダのハンモックでのんびりする。ぶりってゆらゆらと揺れる。


 夕方になったのでメシを食べに出る。ついビールを頼んでしまう。ルアンパバーン以来のビールだ。うまいけれど、一人で飲むと何か物足りない。食べ終わる頃にはほろ酔いで社交的になる。久しぶりに社交的になった気がする。


 雑貨屋で釣りのえさはおいてないかと聞くと、青年はロッドをもってくる。別の青年が来て、その人に事情を話すと、えさをみせてくれる。腐ったタルタルソースが固まったようなもので、とても臭い。今日は使うことがないので、明日もらいにくると伝える。


 部屋に戻り、ぶりってお菓子を食べる。暇なので2004年度をふり返る。思い出してみるとけっこう楽しんでいる。昔は良かったなと思うが、今のほうが良い。思い出しすぎに疲れ、頭が痛くなったので、ぶりって眠る。


 “サブー”のせいかわからないが、ジャンベを六時間。“サブー”を使うと集中力がとぎれず、疲れない。“サブー”さまさまだ。

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