自然の脅威

11/25  inシーパンドン 


 目が覚めると、部屋のすきまから日が射し込んでいる。ニワトリの鳴き声がそこら中に響き、いやでも目が覚めてしまう。時刻は朝の六時、ベランダにでると朝日がのぼりはじめるところ。久しぶりに朝日を見た気がする。


 急にやる気がわき、日記を書く。こんな朝に日記を終わらせておけば、あとの一日は楽になる。朝日が本当に美しく、気温は涼しい。強い日差しはまだないのでジャンベをたたくにはちょうどよい。それに朝だから人は少ないだろうから、田んぼにはだれもいないだろう。急にジャンベをたたきたくなる。朝の貴重な時間が日記でうばわれるのはもったいないので、レンタルチャリを借りてたたける場所を探しに行く。

 

 10分ほど走ったところに大きな芝生がある。田んぼの横でまわりに民家はなく、人の気配もしない。白人女性二人がチャリをこいでいるが関係ない。さっそくジャンベ開始だ! 到着する前からブリっていたが、さらに一服いれる。


 さすがに早朝から思い切りたたくのは気がひけるので、ニット帽をかぶせてたたく。音は静かだが、低、中、高音はわかる。人はほとんど通らず、安心してたたくことができる。朝からジャンベをたたけるなんて、早起きは良い! 


 ぽつぽつと人があらわれはじめる。ラオス人は早起きだ。ほとんどの人が起きている。たまにニット帽をはずしてたたくと、音が違う気がする。かるくてきれいな音でたたきやすい。ニット帽も馬鹿にはできない。二時間ほどたたいてGHに戻る。


 朝食を食べて、シャワーを浴びる。一汗かいたみたいで気持ち良い。ぶり(大麻)が効いているのでベッドに横たわる。完全に動けない。


 一時間ぐらい仮眠し、やる気を出し再び動き始める。チャリンコを借りてもう一つの島、ドンコンの方へ向かう。


 島のまわりをはしり、橋にたどり着く。ドンコンへわたる橋だ。渡りきったところに看板があり、近くに小屋がある。どうやらお金を払うみたいだ。ちかづいてみるとラオス人の青年が座っている。9000キップでガイドブックにも載っていた滝が見られるらしい。簡単に滝が見られるとは思わなかった。場所を教えてもらい、先へ進む。楽しみだ!


 細い道を走っていると道はさらに細くなる。路面は悪く、くだりの道はとてもハードだ。道を降りきると砂浜がある。河にこんな砂浜があるとは思わなかったのでびっくりする。とてもきれいだ。ラオス人の中年男性がいるので、滝があるのか聞いてみると、場所が違うらしい。間違えた! けど、ジャンベをたたくには良い場所だ。人はいないし、景色は抜群だ。ただ、ここまでの道のりはけっこう遠い。道を引き返して滝を探しに行く。


 途中に曲がる道があり、進んでいくと小さなお土産屋がある。ここだ! チャリを置いてさらに進むと、「ゴォーーー」という水の落ちる音が聞こえてくる。どんな滝だろう? 音はさらに大きくなり、河に近づくと、「スゴイ!」 垂直落下の滝ではなく、さまざまな場所から小さい滝が流れている。大きさ、水の量もすごいけど、滝の数と河の広さに圧倒される。渓流を途方もなく大きくしたみたいだ。


 日本じゃまず見られないスケールの大きい自然に、とにかく感動する。近くの店のおっちゃんに言われるがままココナッツを買わされ、観光準備万端だ。さらに道を進むとなんとか滝を見渡せるポイントがあり、どこからでも壮大な滝を眺めることができる。ちょうどよい場所に切り株があるので、一服いれ、ジャンベにニット帽をかぶせてたたき始める。巨大な自然を見ながらジャンベをたたく、最高に贅沢な時間だ。


 すこししてからさらに道を進む。河から離れてしまい、道はせまく、笹が生い茂っている。さらに進むと砂浜が見えてくる。道から砂浜にでると、小さいビーチがあり、河にとどいている。小さな砂浜で人の気配はまるでしない。ほとんど来なさそうだ。流木がころがっているのでたき火ができそうだ。音はまわりの木に遮断され、さらに滝の音にかき消されるだろう。本気で叩けそうだ。それに眺めが良い。


 ぶりりすぎてまわらない頭と、重い体であたりを探索する。とにかく感動! その勢いで岩に座り、ジャンベをたたく。ニット帽なしだから爽快だ。久しぶりに生で叩くような気がして、調子も良い。朝に練習して夕方も練習する、充実した一日になっている。ジャンベを三日連続たたくと腕が軽く、少しうまくなったきがする。確実にうまくなってきている。


 日が暮れはじめるまでたたいて宿へ戻る。


 部屋で休んでから、つりのえさになるものを探しにでる。ビーチで座った岩の地面に、たまたま釣り針が落ちていたからだ。ロープで仕掛けががっちり縛ってあり、めったなことじゃ切れなさそう。釣り針は相模湖で使ったときぐらいの大きでとても頑丈だ。


 ソーセージみたいなのがあればいいがみつからない。と、いうよりも店がない。あきらめてメシを食べることにする。朝からたくさん動いたので普段の三倍ぐらいの量を注文する。


 料理が出るまで約一時間ほど待ち、後悔する。つい頼みすぎた。


 なんとか完食して、GHに戻る。昨日、ろうそくを買ったので色々と工作してから眠る。


 人間がつくりだした遺跡は悪くないが、100パーセントの自然が作りだした景色のほうがスケールが大きい。のんびりとジャンベを叩く島の生活は最高だ!

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