遺跡をはしご
10/26 inスコータイ
昨日は何時に寝たのだろう? ぐっすりして早いお目覚め、今日の体調は万全だ。出かける準備をして、宿のおっちゃんにバイクを借りたいと伝える。ガイドブックを見ると道は一本で簡単に行けそうだ。今日はジャンベと一緒に出発だ。
50CCの原付かと思いきや、110CCのカブを用意してくれる。最高速度85キロのすぐれものだ。パンガンの時はだれかと一緒にバイクに乗っていたが、ここでは一人で飛ばし放題。まわりの景色はもちろん最高だ。天気が良く、空気はうまく、朝の気温はすこし肌寒い程度でいうことなしだ。
30分ぐらいで小さな仏教寺院の横で休憩する。遺跡に着くまで一服は我慢するつもりだったけど、バイクの運転があまりに気持ち良いので、もう限界だ! 寺からながれてくる音楽に耳をかたむけながら一日の始まりの一服をいれる。うーん、気持ち良い!
昨日の後半は吸いすぎで自滅したから、今日はすくなめにいれる。まわりの景色とカブの凄まじいエンジン音にとばされながら走っていると、森に囲まれた道からひらけた田んぼへと景色が変わる。ジャンベを持ってきたことだし、叩きたくなったので横道にそれてバイクを停める。
広大な空間には自然の音だけので、ジャンベの音がよくひびく。相模川のそばで一人ブリって叩いていた時のことを思い出す。ジャンベを持ってきて正解だ。適当に叩いて“シーサッチャナーライ遺跡”を目指す。
いくら走っても遺跡が見えてこない。のんきに走っていると、行き先を示す看板は見かけなくなり、山の方へ向かっている。どうも間違っているみたいで、道を引き返すが迷ってしまう。日本でもすぐに道を間違えるのに、外国で間違えないはずがなかった。屋台で腹ごしらえをして“シーサッチャナーライ遺跡”を探す。
ようやく遺跡っぽい建築物がちらほらあらわれだす。遺跡への看板もでてきたので、めについた遺跡をひとつひとつ見て回る。昨日もそうだったけど、今日も一人貸しきり状態で、プライベート遺跡みたいだ。ジャングルの中にある遺跡で二服目をいれる。やっぱり良い! すこしだけ入れてもじゅうぶんに効く、それに疲れない。木陰にすわってジャンベを叩く。遺跡の中で一人ジャンベをたたく姿は、はたから見ると変人かもしれないが、自分にとっては贅沢な瞬間だ。大麻はまわりはじめ、タイムスリップしているかのようだ。ジャンベの音はけいかいに聞こえて、まるで自然と融合しているみたいだ。
そんな調子で小さい遺跡を見ながら進むと、“シーサッチャナーライ遺跡”に到着する。公園内にはすぐに入らず、大物は後の楽しみとして、最初はまわりから攻めていくことにする。
ヨム川のそばの遺跡、“ワット・プラッシー・ラタナー・マハタート”は非常に大きい。ドラゴンボールに出てくる“かりんとう”のようだ。ぶりった頭で建物の周りをあるいていると、中心の塔にのぼれることに気がつく。急な階段だ。
どうにかこうにかのぼっている最中に、なんで昔の人はこんなに急角度の階段を作ったのか疑問を感じる。一つ一つの段はとても高い。はしごのような階段をのぼりきると、「高い!」地上にいる白人が小さくみえる。こんな建物をよく建てたなと、昔の人に感心してしまう。
バイクに乗り、遺跡の横のわき道を進むと、大きな釣り橋がかかっている。ロープと木で作られた自然な作りのつり橋は、歩く部分の木がぼろぼろで味がでている。幅1.5メートルぐらいのつり橋を、バイクで器用に渡る現地の人はすごい! 橋の中央から川を眺めると、ペグちゃんと一緒に行った岐阜の郡上に似た雰囲気の川で、長良川を思い出す。
橋の近くの食堂で飯を食べてヨム川沿いを走っていると。「やっちゃった!また道を間違えた!」いくら走っても遺跡は見えてこないので、引き返して川沿いをもどると、わきに横道を発見する。バイクを降り、細い道を抜けると小さな平原にでる。森にかこまれているので、大通りからは見えない。向かいは川に阻まれているので、人が入るところは限られている。正面には対岸が見え広大な自然しかない。すこしはやいけど、場所が良いので三服目をいれる。
ジャンベを叩いてから出発する。バイクだと行動範囲が広がるので、思わぬ場所を見つけたりと、楽しみが広がる。
遺跡公園に入るとバイクで観光する人が多くなってきた。きれいに整備された公園の芝生は日の光に照らされ、緑色に輝いている。スコータイとは違って、ここの遺跡は川沿いの遺跡という雰囲気があり、こじんまりとしている。一つ一つ遺跡をみながらバイクでうろうろしていると、はっと気がつく。「吸いすぎて景色に飽きはじめている!」まだ昼過ぎなのに、見るものもなくなってきた。どうしようと考えていると、あっ!“カンペーン・ペッ”の遺跡へ行こう!
ひらめいてしまった。明日見る予定の“カンぺーン・ペッ”を今日中に行けば明日の乗り物代はうくし、GH代もうく、なによりも時間が節約できる。バイクは楽しいから全然苦にならない。
そう決まり、急いでスコータイへ戻る。フルスロットルでバイクをかっとばし、あっと言う間にスコータイへ到着する。お気に入りのシェイク屋で休憩してから、“カンペーン・ペッ”の遺跡に出発する。
ぶり(大麻を吸う、または大麻を吸っている状態)すぎて記憶がとびとびだ。森の道をひたすら走り、一時間程して、田んぼの脇にバイクを停めて四服目をいれる。完全に吸い過ぎだ。ジャンベもさすがに叩く気分じゃない。けど、気持ち良い! この“ねた”は少量できまるすぐれものだから経済的だ。パンガンのレゲエバーのトムに感謝!
再び走ること一時間。予想よりも遠くて驚いたがなんとか到着する。んっ! あまり見るところがなさそう、というよりも、遺跡の場所が把握できない。ぶりってまわらない頭を使い、遺跡公園に突入する。なぜか入り口にマラソンマン(マラソンしている人)が大勢いる。
すっかり夕方だ。日はだいぶ沈んでいるので、急いで遺跡を見学する。昼間の遺跡は明るくさわやかだけど、夕方の遺跡は暗くて怪しい、神秘的な雰囲気だ。小さな遺跡を一つずつつぶして“ワット・チャン”へ。赤みがかった夕焼け空にこの遺跡はとてもよく似合う。10人ぐらいの家族も見学していて、ほのぼのとした良い空間が広がっている。正方形の台座に壊れかけの塔があり、のぼることができる。のぼりきった場所からみるグラデーションの空は最高にきれいだ。
他の遺跡を見ているといつの間にかあたりは真っ暗闇だ。少し消化不良な感じだけど帰ることにする。
帰りの道はなんて神秘的なのだろう! 灯りというものがまったくなく、バイクのヘッドライトのみが唯一光をはなっている。そのライトは壊れていて、ハイビームしか使えず、他の人に迷惑をかけるひねくれたライトになっている。まわりは暗すぎて何も見えないが、空を見ると多くの星が輝いている。いまだかつて、こんなに星がたくさん、しかも、強く輝いているのを見たことがあっただろうか? 月はすがたをみせず、道は長い一本道、対向車がやってくると小さな光が見え始め、しだいに大きくなっていく。まるで長いトンネルを走っているような現実感のなさは、別の世界にいるようだ。
ただ、虫が多すぎる! 虫は休む間もなく次々とぶつかり、体中が痛い。大きな虫が目に直撃すると大変! 肝心な目がとうぶんつかえなくなり、運転に支障が出てしまう。それでも顔に大きな蛾がぶつかったりしては、虫をよけることに集中して走る。気が付いたらいつの間にスかコータイへ到着している。幻想的で夢のような楽しい帰り道だった。
バイクを返却すると宿のおっちゃんに、「おそい!」としかられる。今日はとにかく行動した。遺跡のはしごはハードだったけど、とても有意義な一日を過ごせて幸せだ。見てない遺跡もあったのは残念だけど、全部見るのは厳しいから仕方がない。
スコータイの世界遺産見学は終了し、明日は次の遺跡の町、アユタヤーに移動だ!
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