楽しい予感? パンガンライフ
10/15 inパンガン
朝方、バスは緑豊かな南国の植物に囲まれた、小道のわきにある事務所に到着する。ゲリの調子は相変わらずで体調はすぐれない。バスを乗り換え船着場に到着する。
マッコウクジラぐらいの大きさのスローボートに乗り込み、旅行者の荷物はひどいあつかいで積まれていく。どうやら川を下って海にでるようだ。それにしても景色がすごい! テレビでみたことのあるようなアジアの川は、水は茶色に濁っていて、川幅は日本の川に比べると断然広い。壊れた船が対岸に置き去りにされていて、人と犬がその上を歩いていて、生活の一部のように見えてしまう。タイはすごい! 感動したまま出発する。
川を下るにつれて水の色は茶から緑、そしてブルーと徐々に澄んでいく。まわりには雲がのしかかっている島々も見える。雨が降っているのだろうか、かすんでいる島もある。本当に景色が素晴らしい!
そう思えたのは最初の一時間ぐらいで、途中から体調の悪さと眠さで飽きてしまう。“地球の歩き方”を読んでパンガン島について調べると、泊まる場所はあまりないみたいなことが書かれている。急に不安になる。そんな気持ちを察してか、一人の若いタイ人男性が話し掛けてくる。人と話したい状態じゃなかったけど、苦笑いで話す。ポンという名の男はとても感じの良い人だ。パタヤという場所はバンコクから近くて、とても良いところだから行ってみてはと言われる。本当に良い人だ。せっかくなので。自分の持っていたキャノンのデジタルカメラで自分の写真とポンの写真をとる。最高に良い人だ。
三時間ぐらいでようやくパンガン島に到着する。船着場には多くの現地のタイ人が客引きするために待ち構えている。すごい! 呆然とその光景を眺めながら、これからどうしようかと考えていると、近くの女性に、「日本人?」と聞かれる。ついに日本人を発見! その女性の後ろにはバスで立ち寄った食堂で一緒にメシを食べた男性もいる。みかんさんという名のさばさばした元気な女性と、ミッキーさんという落ち着いた人と一緒に行動する事になる。やったー!
三人で“ソウテウ”という、トラックの荷台を改造した乗りものに乗って、フルムーンパーティーがある“ハードリン”という場所へ向かう。荷台には白人も一緒で、あきらかに定員オーバーだけど、賑やかで楽しい。
途中、ばかげた角度の坂道を越え、20分ぐらいであき地に到着する。まずは泊まる場所を確保する為にゲストハウス探しだ。麦藁帽子をかぶった目のりりしいおっさんに「良い宿があるから来い!」みたいなことを言われ、軽トラックの荷台に乗って見に行く事にする。
凄まじいジャングルの道を素晴らしい運転で10分、小汚いバンガローのある場所へ到着する。ビーチ沿いでとても綺麗なロケーションだが、繁華街から遠い、それに汚い。三人で相談した結果、違う宿を探すことにする。重い荷物を背負ったままビーチ沿いを歩いて1軒,2軒とバンガローをあたるが、どこも満室だ。しかも恐ろしい高さの宿代だ。
ビーチが途切れて山道へ突入する。照りつける太陽と凄まじい暑さ、長い距離の移動、そして宿も見つからず、どうしようという気持ちでみんな口数が少ない。途中にあった民家で少し休憩してどうするか話し合う。まずは町に出てネットカフェで情報を集めよう。この役目はみかんさん。自分とミッキーさんは歩いてゲストハウスを探す事にする。よし、決まればあとは動くだけだ!
森の中を抜けて5分、にぎやかな通りに出るとお目当てのネットカフェがありそれぞれ作戦開始。宿を手当たり次第聞いた結果、予想以上に空いている宿が多く、しかも150Bから300Bのあいだ、ビーチ沿いの宿に比べてはるかに安い。5件ぐらいに絞り込んだ結果、150Bの“チャラン”と言うゲストハウスに泊まることにする。一泊150Bでシャワー、トイレは共同だ。うーん、悪くない。荷物を置き三人で宿のレストランで食事する。相変わらず頼むのはフライドライスだけど、安くておいしいからついついたのんでしまう。良い宿が見つかって本当によかった。
腹が満たされ元気も出てきたので、この島にある“マア島”という場所に行こうという話になる。さっそく三人でバイクを借りて、道を調べずに出発する。いやー、楽しい!
行きに通った地獄の坂にさしかかる。一台のバイクに三人乗っているから、少しでもスピードを緩めるとのぼりきる前に止まってしまう。下りはブレーキの加減を間違えると止まれなくなってしまう。危険だけどそれが楽しい。
平坦な道になり出発から約20分、船着場に到着する。少し休憩したあと、次はミッキーさんに運転をかわる。空は広く、海の色はエメラルドグリーン。まわりは背の高い椰子の木や、見たことのない南国の植物がうっそうとするジャングルが広がり、まさに何度も夢に見た南国の島だ。夕方の気温は昼間に比べて暑すぎず、風がとても心地よい。ふと、昔読んだ村上龍の「フィジーの小人」を思い出す。
そんな爽快な気分に浸っていると、道が次第に悪くなっていく。舗装された道路から砂利の道にかわり、雨が降っていたらしく、赤茶の土には水溜りが点々としている。ぬかるんだ道を滑りそうになりながら進む。「まあ、何とかなるだろう」とのんきな気分でいると、いつの間にかバイクで通るにはハードな道になる。これ以上進むのはまずいという雰囲気が漂い始める。すっかり日は落ちてあたりは真っ暗闇の中、道の悪いジャングルには日本人三人だけ。雨が降り始めさらに雰囲気を重くする。しかし、どうする事もできないので進む事にする。
いやー、冒険らしくなってきたぞ! 気合で悪路を進む。視界が悪いので、転倒しないように意識を集中させて運転する。オフロード車にぴったりの山道に何度も後輪は滑り、そのたびにすっころびそうになる。そういえば、レンタルバイク屋の兄ちゃんはおろしたてのバイクを貸してくれた。すっかり汚してしまった。
ひたすら進んでいると、舗装された綺麗な道路にぶつかる。目の前には一軒の小屋がぽつんと建っており、バイクの運転に疲れていたので休憩させてもらうことにする。小屋で生活している一人のおばあちゃんに“マア島”の場所を聞くが、言葉が通じない。しかし、この近くにはないということだけは手ぶりで読みとれる。立ち去ろうとすると、おばあちゃんは、「ガンジャ、ガンジャ」と言いながら小屋の奥から10グラムぐらいの大麻をとりだす。このおばあちゃんは何をして生活しているのだろう? 不可思議な気持ちを残しつつ、お礼を言ってその場を立ち去る。
マア島へ向かう予定だったがあたりはすでに真っ暗闇、今着いたところで楽しめることは半減してしまうだろう。今日は行くのをやめることにする。後は帰り道を探すのみ。
途中にあったセブンイレブンで休憩し、現地の人に“ハードリンビーチ”の場所を尋ね、しっかりと帰り道を教えてもらう。大きな雨粒が顔にぶつかる中、痛さを我慢してバイクを走らせ、行きに通った交差点に辿り着く。やっと戻ることができた。
計三時間、三人でのドライブは子供心を思い起こさせる素晴らしい時間だった。
ハードリンに戻り、みかんさんのネット友達のまこと君という大学生の男と合流する。シンガポールからの帰りに島に寄ったらしい。大量の雨が降ってきたので4人で近くのレストランへ食事に行く。
日本での日常生活やこれから何をするか話ながらメシを食べた後、ビーチへ踊りに行く事になる。ミッキーさんはおつかれのようで、そのまま宿へ戻る。
ビーチは人がちらほらいる。ビーチに並んでいるバーはそれぞれジャンルの違う音をながしており、人それぞれ好きな場所で踊っている。エピックトランスが流れている“ズーム”というバーの隣の店の前で踊ることにする。
多くの欧米人と現地のタイ人が入り混じって踊り狂い、ファイヤーポーを暗闇のビーチで凄まじいはやさでまわす現地の青年を見ていると、自分の居る場所に現実感がなくなる。勢いに任せ一杯100Bのショットを三杯飲み干す。
充分に踊り、もうろうとした意識の中、3けつして宿へ戻る。時刻はすでに夜中の三時だ。
旅に出て一番楽しんだ一日だ。
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