二日酔い

10/13  inバンコク

 

 昼前に目が覚める。一体ここはどこだろう? 昨日の酒が残っているらしく、頭が痛くて重い。ベランダにあるシャワーを借り、さっぱりしてから手すりによりかかって外を眺める。すごい景色だ! ぼろぼろのマンションがあたりに立ち並び、地上にはさびれた工場がある。そうだ、ここはバンコクだ。昨日は酔っ払っていたから何も考えていなかったけど、冷静に考えるとここがどこだかわからないし、持ち合わせのお金も微々たるものだ。部屋にいるのは二人のタイ人女性とタイ人男性とヨーロッパ風の男性、現実離れした光景が一層不安をあおる。どうしよう! そんな不安を察したのか、みんながカオサンまで送ると言ってくれる。助かった!


 外に出てタクシーをつかまえ、全員でカオサンまで行く。どうやって移動したか覚えていなかったが、30分ぐらいで到着する。感謝の気持ちを体であらわしてお別れする。あいかわらず頭が痛いので、メシを食べて部屋に戻る。完全に二日酔いだ。ベッドに倒れこみ、眠る。


 夕方に起きるが、頭の痛みは変わらない、こんなひどい二日酔いは久しぶりだ。ゲストハウスの1Fに行くと昨日いた日本人達が話している。どうやら先ほどまでみんなで映画を見に行っていたらしい。ずるい! 一緒に行きたかった。九時に昨日知り合ったタイ人女性のサービーと食事に行く約束があったので、待ち合わせ時間までみんなと世間話をする。昨日も思ったけど、人から入る情報は本当に役に立つ、“地球の歩き方”ではわからないことが多い。みんなと会話を続けるが頭が痛くて気持ち悪い。


 時間通りにサービーはゲストハウスへ迎えに来る。他の日本人にからかわれながらゲストハウスを後にし、カオサンにあるレストランに行く。しかし、頭の痛みのせいであまりのる気がせず、正直言って行きたくない。


 レストランでトムヤンクンと豚の炒め物を食べると、辛い食べ物が苦手な自分は、酢っぱ辛いトムヤンクンがまったくおいしく感じない。無理に食べようとしても体は言う事をきかず、慣れない英語の会話でさらに疲れてしまい部屋に戻りたい気分でいっぱいになる。サービーがせっかくタイ料理をおごってくれたが、申し訳ないことにありがた迷惑だ。そんな態度が出てしまい、つまらなさそうにしているとサービーはイライラしはじめる。時折、「ドントシャイ!」と、サービーはやさしい言葉をかけてくれるが、今の自分には言葉の意味が耳に入らない。


 カオサンでサービーと別れて部屋へ戻り、ベッドに横になる。


 本当に気持ちの悪い一日だ。

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