第3話  弟子入り志願

二六日クリスマスは終わり町は元通りになっていた。綺麗なイルミネーションは片付けられ、売れ残ったケーキには割引のシールが貼られていた。


俺は先輩のことが気になっていた。どうやってあんな可愛い彼女と付き合ったのか。それが知りたくてたまらなかった。小山先輩は成績もよく推薦で明治大学に入学を決めていた。彼の成績なら楽勝だっただろう。


 今日なんとか彼に会えないだろうか、うまく話せないかもしれないが、それ以上に彼の事が知りたかった。勉強の成績を維持しながらどうやって恋愛しているのか。それを知りたかった。

昼休みも、休み時間も彼を捜したがいなかった。


せめて、会って話したい。しかし、放課後の今まで会えていない。今日のところは諦めて帰ろう。そう思ったとたん。下駄箱に彼がいるのを見つけた。丁度一人だ。

俺は一目散に駆け寄った。

「あの、小山先輩ですよね」

先輩はビックリしたようだった。彼は身長一六五センチくらいしか無い。俺は一七五センチくらいだ。突然大柄な下級生が話しかけてびっくりしているようだ。

「ああそうだよ。どうしたんだ?」

息を整えて言う。

「あの、イブの日なんですが、実はその……。先輩が可愛い女の子とラブホテルに入ったところを見て……。」

先輩はキョトンとしている。少し考えると意外な答えが返ってきた。

「女は金髪だった黒髪だった?」

「金髪です。」

そう答えると小山先輩は思い出したように、

「ああじゃあ夜の女か。お前見てたんだ。」

「買い物帰りに見かけました。」

「ビッチっぽいけど可愛かったろ?」

「はい、可愛い子でした。」

黒髪の事も遊んだということだろうか?つまり一日に二人とデートしていたのか?

「のぞきなんて童貞くさいな。」

「たまたまですよ。それより先輩、先輩はランキング常連なのに彼女もいるんですか。どうやって両立しているんですか。」

「俺もう帰るから、駅まで話ながらでいいか?上大岡だよな?」

「はいそうです。」


俺は先輩と一緒に話しながら長い坂道を下っていった。どうやら、イブに金髪の子と黒髪の子同日デートしてどちらともホテルでエッチしたらしい。

 そして驚いたことにクリスマスも彼女とエッチしてデートを楽しんだそうだ。

彼は俺の予想の斜め上を言っていた。

「先輩。俺も彼女を作りたいんです。でも、どうしたらいいか分かりません。」

「ほう。それで俺に声をかけたと。」

「先輩、俺には何が足りないんでしょうか。」

「何がというより、ほぼ、すべてだな。」

根本的な答えでショックを受けてしまった。

「まあ多分一番足りないのは、経験だな。ナンパやトークの経験。これは実践で補うしかない。」

「それから、女の子との接点。お前趣味は。」

「オタクです。」

「それだったら、脳内の女との接点しかないわけだ。」

「まずは接点と女の持ち駒を増やせ話はそこからだ。」

俺たちは上大岡駅についた。先輩が少しバーガーショップで話していこうと提案した。勿論、俺は快諾した。

 俺はバーガーとコーラ。先輩はチーズバーガーを頼んだ。

「で、君はなんで俺にしようと思ったのかな?あと名前聞いたっけ?」

「名前は楠(くすのき)です。先輩はイケメンではないのに可愛い子を連れてて驚きました。」

彼は笑いながら。

「お前ぶっ飛ばすぞ。」

「すいません。」

先輩は軽く笑い飛ばすと。

「確かに俺はイケメンではないよ。でも、フツメンでも可愛い子と付き合えるテクはあるんだよ。」

「それが知りたいです。」

「簡単に説明できるものではないんだ。お前本気でモテたいか?」

「はい、モテたいです。」

先輩は少し考えて

「じゃあお前を弟子にしてやるよ。大学まで時間あるし。」

「ほんとですかっ」

「その代わりテストする。」

「テスト?」

「今から一時間で三人の女の子に道を聞け」

今まで女の子に話しかけたことのない俺には鬼門だったが、やるしかない。

バーガーショップを出ると早速開始した。先輩は距離を置いてみている。

目の前に他の学校の女の子が信号待ちをしている。

「すいません、聴きたいことがあるんですけど……。」

よく見てなかったが髪が短くて可愛い子だった。心臓が高鳴る。大丈夫だ道を聞くだけだ。

「あの、この辺に百円ショップってありますか?」

彼女は少しだけ考えて

「ここから四つ目のビルの四回に入ってますよ。」

「本当ですか?ありがとうございます。助かりました。」

彼女は手を振って別れた。すかさず俺は先輩を見た。先輩は小さく親指でグッドを作ってくれた。

 その後も同じ方法で若い女性に声をかけた。楽しくなって全部で五人に声をかけた。


時間になり先輩が出てきて

「合格だ。明日から鍛えてやるよ。」

そして、連絡先を交換した。

 女の子に話しかけるのは初めてだったが、想像以上に出来たのと思った以上に楽しかった。家について二次元のポスターをすべてはがした。ソフトは捨てなかったが。ポスターはすべて処分した。

 もっと面白いエロゲーを見つけたからだ。

明日からどんな訓練が始まるのだろう。胸が高鳴ってその日は眠りにつくまでに時間がかかった。


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 キモオタ童貞、リア充になると決意  だびで @kusuhra830

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