Road of Relief

@Sinozaki557

第1話『Rord of Relief~クズな王子がクズになりきれない訳~』







~ ~







……救えなかったか………




もう何も見えない虚空に向かって伸ばした手は何にも届かない




「…………」












グシャッ













~第一章 王族の試練~



「王子…… 王子!!」



この日より始まる王選定、 間もなく出立するはずの男が隠れ潜む城内をその身でどうやって支えているのかという程巨大な鉄鎚を持った従者の女が探す



「あぁ、やばいなこれ最初から普通に行ってればよかったな、なにあの武器、女の子が持つ獲物じゃないだろ」



方や王子は専属のメイドと旅に出る事を面倒くさがり隠れていたら思ったよりも展開が死に直結していて本当に出てこれなくなっている



「王子、速やかに出てきて頂かなければ殺しますよ」



「ヒィッ!? ホントにやばい殺すって言ったじゃんあのメイド、よしもう1人で行ったことにしよう、専属のメイドを旅に出して怪我でもされたら心が痛むから☆A☆E☆T☆E☆放って置き1人で出立したと、ふぅむ、まぁー及第点な理由だろう、よしよしそうと決まれば窓からゆっくり抜けだs……」



ドーンッ!!!!



凍りつく程の轟音とともに隠れていた物置の壁が粉砕され巨大な鉄鎚を持った美しいメイドが立っていた



「……………………えっと、神様にお祈りをさせてください」



「すぐに済ませろ」



この後の事は語るまでもなく想像が容易につくだろうということで割愛させてもらう、この日より始まる王選定は ラウス帝国の次期国王を決めるために王性を持つ3人に旅をさせ最も功績を残した者に王の座を与えるというもの、そしてラウス帝国国王の座、すなわち世界の頂点を意味する



さてこの王選定に参加する人間は3人いる



一人目:ファウド・ビオレント  ラウス帝国の武闘会において頂点に立った男  大型の戦斧を2つ持ち大胆だが無駄のない動きで武闘会を圧勝した経歴を持つ



二人目:クラウス・ハウゼン  ラウス帝国軍元帥、カリスマ性、指揮能力が高く軍部のみならず国民にも信頼される最有望の人物



三人目:セドラ・ラウス  帝国の王子  一通りの教育課程をクリア 剣術もそこそこにこなしたが目立った特徴は無い、本人は自分の名前のラ続きを気にしている



そんな王選定に参加するセドラ・ラウスの旅の物語



______________________________


「おいファウド!! 話が違うではないか」




そこは暗い路地、幾多の戦場で鍛え上げられた肉体に巨大な戦斧を2本背負った男と、これも平均よりは体格の良い男が揉めている




「あの大会では俺を勝たせると約束をし金まで積んだ!! 貴様勝ちももぎ取った上に金も返せないとはどういう事だ!!」




今にも殺しにかかる勢いで怒鳴る男、しかし返答は単純で明快であった




「そんな約束をした覚えばないな、お前が言ったのは手加減してくれだったはずだ、あぁもちろん手加減したとも、それでも負けたのはお前だ」




「きっ、きっさまぁぁぁあ!!」




腰に帯刀していた両刃の西洋剣を抜刀すると渾身の力を込めて振り抜く




ガーンッ!!




重い金属同士がぶつかったような音が人気のない路地に響く、剣が当たったのは戦斧の柄、しかし戦斧にも戦斧の持ち主の男にも傷一つついてはいなかった、後ろ向きのまま身体の重心移動のみで受けきっていた




「なっ!!」




「自身の弱さを恨め」




すると一瞬にして戦斧を担ぎ振り返る




「そして死ね」




その言葉を最後に強烈な暴風が吹くような音と共に振り下ろされた戦斧は悲鳴をあげる暇も与えず剣の男を両断した




「下らん、この程度で帝国一の猛者になろうとは」




フッっと鼻を鳴らすと血糊を大振りで振り払い死体の服で拭う、すると闇に溶け込むように消えてゆき姿はやがて見えなくなる


_____________________________




神への祈りも届かずデカいトンカチでいたぶられた王子は泣きながら城を後にし付き添いのメイドがボコボコになった王子を引きずりながら今後の予定を発表する



「本当は触れるのも癪(しゃく)ですが王の命令ですので仕方ありません、さて王の慈悲によりメイドに引きずってもらえたあなたは幸運にも予定までもメイドに管理してもらえます」




「とりあえずゴミ、あなたはこれから冒険者になります、王子という肩書きはこの世界では意味なくないですが、それを利用しようとするゴミのゴミ精神が気に入らないので、使用した場合はミンチにしてハエに食わせます」




「(なんだこのクソメイド自意識高すぎだろ、こんなクソメイドが今後四六時中俺のそばを離れず同伴とか、授業参観で親が変なヤジ飛ばすより苦痛だわ、こいつどっかに置いてこ)」




ドーンッ!!!!




王子の後ろにあった木はメイドの鉄鎚の1振りで中央からごっそり消え失せ、無残な切り口の切り株だけが残った




「……………………一生おそばにいてください」




「次はてめぇのクビがこうなると思え」




しばらくの沈黙と恐怖の余韻を引きつった顔で楽しんでいる王子と、変わらぬ表情で話を再開するメイド




「では、改めて今後の方針を伝えます、ゴミが冒険者になるにあたりこの城下町の冒険者の寄合所が企業化した冒険者組合というものがあります、そこで組合に登録し仕事の斡旋(あっせん)と情報の収集を行います、よろしいですか?」




「なにから何までありがとうございます、是非そのようにさせて頂きます」




「はい、では移動しましょう」




途中今後必要になりそうなものと、王子顔なじみのおじさんから袋に詰められた何かを王子はこっそり受け取り冒険者組合、通称:ブレイブギルドへと向かう




「おぉ、ここは思ったよりも大きいな」




「はい、あなたがお城の女子便器に顔を突っ込んで遊んでいた頃、冒険者組合は冒険者の在り方を明確化する偉業を成し遂げた企業です、その功績は現国王から高く評価され現在では国営の組織となっております」




「あっ、てめぇ、俺に命令してやらせたトイレ掃除をそんなキチガイのお遊びみたいに表現しやがって、もう切れちまったよ、ほら、かかってきな、その巨乳可愛がってやるよ」




この後ゴミンチとメイドは冒険者組合に行き登録の手続きをすすめる



「中もとってもキレイですね」



「まぁ、あなた基準で言えばだいたいの物が衛生的で清潔感のあふれる空間になるでしょうがここは比較的最近国営化したこともあり現段階において最高クラスの技術者達により建造されましたからね、帝国内でもトップクラスの美しさを誇る建造物です」




「僕王子だからね、知ってた?ねぇ!!」




メイドにとって自称王子でしかない男の言葉は完全に無視され、冒険者組合のメインカウンターにいる案内人に話しかけ始める




「はい、そこのゴミンチと私の2人で組合冒険者の登録にまいりました、えっカップル割引ですか? 悪ふざけも大概にしてください、こんなゴミとカップルなんてそんな人類いると思いますか? 通常登録でお願いします」




「(こいつ遂に俺の悪口言うのに人類を引き合いにだしてきたよ)」




「はい、2人の登録で400クレジットですね、では1人分の200クレジットで、そこのゴミは依頼料で払います」




「あっ!? おい待てよ後200クレジットぐらいあるだろ出してくr…ださいよ」




「ゴミは少しでも実績が必要ですよね、ならば文句を言わず実績をあげなさい、私に恥をかかせる気ですか?」




「(くそっ!! "王選の闇"ってタイトルで本を執筆してやる!!)」




「はい、ではこの1万クレジットの『ブレードタイガー10匹の駆除』をやりましょう」




「おい!! なんでそんな高額なのやるんだよ200クレジットならそんなのやる意味無いだろ」




「なにを言うのですか? 私の食費、宿泊費を私に出させる気ですか?」




「いやいやそれにしても多いだろ」




「細かいゴミですね、とにかく行け殺すぞ」




「はい」




大まかに話がまとまるとベテランの冒険者でもやりたがらないブレードタイガー討伐を登録したての初心者がメイドに脅迫されやらされるという異例の事態に組合内がどよめいた、しかしそんな目線をお構いなく畑を荒らされた農村に移動することとなった




「ねぇ、メイド様」




「なんですかゴミ」




「受付の人も含め、とてもどよめいてましたよ、ブレードタイガーって強いって聞いた事ありますけど、ものすごく強いのではなくて?」




「…………いえ」




「間の空け方が絶妙でしたけど、私帰りたいですメイド様」




「それは許しません」




「いやでもね」




「それ以上喋ると、ここで気絶させてブレードタイガーの巣に放り込みますよ」




「はい」




「よろしい、そろそろ到着します、せめてその変顔はやめてしっかりと身なりは整えてください」




「おい、すごく傷つくんだが」




そうこうしていると目的の農村に到着する




「あぁ、のどかないい所だな、川も綺麗だ」




「そうですね、あなたの汚い顔を見てドブ水の流れるような声を聞いたあとに見ると余計に美しく見えますね」




「本当に失礼だね君、僕の事嫌いな他人でもそこまで言わないよ、本当にメイドなのか君は?」




「はぁ、せっかくの癒しもつかの間またドブの音が聞こえますね、まぁいいでしょう早速村長のお屋敷に向かいますよ」




「俺が良くないよ?」




しばらく上記の様な言い合いを続けつつ村を散策する




そして目的にあった農村の中でもやや大きめの屋敷の前に立ち、ノックをした後に声をかける




「失礼致します、私達はギルドからの斡旋で"ブレードタイガー10頭の討伐"にやってきた者です」




返事はない




「あのー、もしもしどなたかいらっしゃいますか?」




数分後ゆっくりトビラが開く音と共に中から小さな女の子が顔をのぞかせる




「あ、あの…… どちら様ですか?」




恐怖に怯えた様な少女が今にも消え入りそうな声で聞いてきた




「私達はこちらの村長さんに呼ばれた者です、あの差し支え(さしつかえ)ないようでしたらご両親に代わって頂いてもよろしいですか?」




「…………そ、それが」




そう言うとだんだんと目に涙が溢れさせる




王子とメイドは顔を見合わせ、メイドがゆっくりと少女背に手をまわし、優しく撫でながらたずねる




「どうしたの?」




「じ、じづわ、おがあざんもおどうざんも帰ってこないの、もう1日だっでるのに、がえっでごないの…」




泣きながら少女は言葉をつむぐ




「あぁ、なるほどな」




少女の言葉を聞き思いをめぐらす、この子の気持ち、考え、願い、きっと心の中はとてもぐちゃぐちゃで、辛くて苦しい思いをしているのだろうと




「なぁ、お嬢さん」




こぼれる涙はきっと辛い思いが溢れている証拠だろう




もしかしたら助けられるのか? そんな自答を何度か繰り返した後




「なぁ、お嬢さん教えてくれ、もしかしたらお兄ちゃんは君の事を助けに来たのかもしれない、お兄ちゃん君の気持ちを考えただけで辛いんだ、だからきっと本人の君の気持ちはもっと辛くて苦しいんだと思う、でも少しだけ勇気を出して教えてくれ、お父さんとお母さんはどこに行ったんだい?」




「うっ、うぅ…… お父さんとお母さんだけじゃなくて、村の大人達は村の外れにある森の中に罠を張りに行ったの、で、でも悲鳴が聞こえて、それきり帰ってこないの……」




また辛くなった少女は今度は隠すことなく大きく泣きじゃくる、そんな少女の頭をゆっくり撫で少しの間を置き立ち上がる




「カリナ、この子と村のこと頼むぞ」




「かしこまりました」




軽く身体を伸ばし、動く準備を整えるそしてヨシッと気合を入れると森の方へ歩き出す




「セドラ1つ忠告です」




「ん?」




「もし貴方が死んだりでもしたら、貴方の肉を餌にして私が功績を立てるので、そのつもりで」




「あぁ、そうしてくれ、じゃあ行ってくる」




そう言うと勢いよく駆け出す、そこそこ鍛えられてるからか、身体は身軽でかなりの速度で走り抜ける、しばらく走ると歩速を徐々に緩め、考えをめぐらす




「よし、あのメイドこの村に置いていこう、適当に鎧脱いでどっかに転がってる肉片の近くおいときゃバレねぇーだろ、肉使って倒すとか言ってたし、どう考えてもあの女の方が適任だろ、はぁぁぁ〜ホンットに付き合わされてる俺はほとほと困ってるわけだよまったく、あぁ辛い辛いホントにやんなるよ」




ぶつくさ文句を垂れながら歩みをすすめ




「あぁ、ホントにやんなるよ自分が、こんな好機に非情になれなきゃあの女巻けねぇーってのに、はぁ、俺ってもしかしてロリコンなのか?」




こんなことを言いながら二匹のブレードタイガーらしき動物を見つける




そこにいた獣は両腕から長く白い刃物のような何かが伸びていて、身体はやや小柄なトラのようだった




「あぁ、ほんと強そうじゃん、さてどう攻めるか、近くに仲間がいる可能性もあるし、そもそも2体相手に立ち回るのなんて普通は無理な相手なのかもしれん、さてここでこれの登場だ、さっき市場で仕入れた生肉、コイツに毒を盛るそして少し焼きたいところだが、火をつけてる間に音でバレて俺が晩飯なりかねんからしばらく木にでも登ってるか」




そして毒性の高くほぼ無臭のキノコから抽出したエキスを肉に垂らしその肉を地面に置いたまま安定感のありそうな木に登りしばらく様子を見る




しばらくすると一匹ブレードタイガーが肉の方へと近づいていき、肉を見つける、肉を見つけるなり臭いを嗅ぎ出し一舐め、するとビクっと身体を震わせたブレードタイガーが足元から崩れ白目を剥き泡を吹き始める、それを見たもう1匹のブレードタイガーが倒れた仲間の状態を見ると突然大声で遠吠えをあげ始めた




「うぇ、マジかよやばいなこれ」




「動かない方がいいとは思うが、なんせ相手は獣だからな鼻がききそうだ、どうしたものか」




すると背後から突然ヴァウッ!!という獣の鳴き声と共にブレードタイガーが飛びかかってきた




「クッソ!!」




避けのに体制を崩し、木から転倒する




「はぁ〜痛てぇ、ふざけやがってどんだけいい鼻持ってんだよ」




そして腰を抑えながら立ち上がり周りを見ると、そこには6匹のブレードタイガーが自分を中心に円形で囲んでいた




「はぁ、思ったよりもまずいな」




この絶対的窮地の中で思った以上に冷静でいられある一つの疑問点に辿りつく




「(仮にコイツら村の人間を食い尽くしたんだとしたら、こんなに寄ってたかって俺一人なんかのためにヨダレダラダラ垂らしながら襲おうとしないだろう、そして何より口元にもどこにも新しい血の跡がない、で、なんか聞いてたより4匹少ないと)」




「そうか、これはちょっとまずい事になってるのかもしれないな、ブレードタイガー以上の脅威が現れてブレードタイガーを捕食し、村人もどうにかされてるか、最高の状態は勇者様とかがみんな助けて安全確認がとれるまでどっかでかくまってるみたいな感じだが、まぁー無いだろうな、ただどちらにしろ急がねぇーと、ここはあまり時間をかけたくないな」




「よし、待たせたな獣共、喋ってる間待ってもらって助かったわ、まぁーと言ってもお前らは気づいててあえて寄ってこなかっただけだろうが」




気づくとセドラの右手から赤黒いモヤが立ちはじめる




「誰にも言ってないが、実は俺は少し特殊な魔道適性が高くてな、特に攻撃に適した能力にかなり恵まれている、まぁー獣に言っても分からんだろうが、ようするに、俺はちょっと強いぞ」




それを合図にセドラが身体を回転させると、その軌跡に合わせ赤黒いモヤは細く長く鋭利に形を変え、そのまま横薙ぎに一閃、回避が間に合わなかった2匹がその鋭利な何かに引き裂かれる




そこに畳み掛けるように距離をとっていた残りの中の2匹が勢いよく飛びかかってくるがそれに対して腰に差してあった剣を引き抜き、1体を剣で貫き、もう1匹はレイピアの様に鋭く形を変えたモヤで貫く




獣達が怯んだ隙に剣を投げ一匹を貫く、そして脚に力を入れると足にも赤黒いモヤがかかりそのまま踏み出す、するととんでもない加速と共に残り一匹に近づき勢いそのままにモヤで切り裂く




「戦闘終了」




そう言うと剣を回収し急いで森の奥へと進んでいく




「くそっ、幼女が悲痛な顔して泣き出す姿なんて見たくないぞ、間に合ってくれ」




勢いを増しさらに走り抜ける、もうすぐで森を抜けるきっとあの先に一つの結果が待っている、それが恐怖に塗られた結果だったとしても歩速を緩めることはできない、故に駆け抜けるその先の結果へ…





森を抜ける





そこに広がるのは




目の前には、肌の色がやや灰色で、背中からは漆黒の翼を生す負傷した男がブレードタイガーらしき獣の死体を4匹地面に転がし息を切らせていた




「えっ!?」




灰色(はいしょく)に塗られた悪魔のような男が息を切らしながら立ち、こちらを見て口を開く




「貴様、この国の兵士か?」




唖然としてしまった




「おいっ!! 間抜けヅラ晒してないで答えろ!!」




「い、いやただの冒険者だが、道中にいたブレードタイガーは倒した」




それを聞くと少し驚いた顔をする




「ほぉ、なかなか優秀だな」




「い、いやそれよりお前は誰だ? あっ!! 待てそんなことよりこの辺で村人らしき人間を見かけなかったか?」




「あぁ、あいつらか、それなら心配するな、奴ら土地勘があるみたいで散らばってある程度安全な場所に隠れていたようだ」




「あっ……そうか……」




力が抜けてしまった、そのままどれ程の時間が経ったか、しばらくして声をかけられる




「おい、その口をあけたまま固まるアホヅラ気持ち悪いぞ」




「おい、今人がせっかく安心感に浸ってたというのに、お前と似たような暴言ばかり吐く鬼畜メイドと旅してるの思い出しちゃったじゃねーか」




「知るか、とりあえず今後の事はお前に任せるぞ」




「あ、おい 」




「ではな…」




「ちょ、ちょっと待ってくれお前は何者なんだ?」




飛びたとうとしたその男は少しだけ間を置き飛び立ち始める、そして浮遊しながら




「………… 悪魔族と言われる者だ」




そう言い飛び去る




「やはり、悪魔だったのか………… なんだ悪魔っていい奴らなんだな」




「こうしちゃいられんな、とにかく村の人達の安全確保をしないとな」



______________________________




飛び立った悪魔は満身創痍の身体で主の住む城へと帰る




「遅ればせながら、ただいまヤルド戻りました」




静まり返った城主の間に不穏な空気が流れる




「ヤルド、貴様何をしていた?」




「ハッ、ラウス帝国の偵察をして参りました」




「ほぉ、ならば帝国の状況がどうなっていた教えてもらおう」




「ハッ、帝国では現在王選が始まり3人の候補者がそれぞれ功績を上げるための旅に出ました」




「ほぉ、なるほど貴様はあくまでしらを切るか」




「いえ、そのような事はなぜそのような事を仰られるのですか?」




「ふんっ、ヤルド 貴様には帝国に組みしたとされる反逆罪がかけられている!!」




「何をおっしゃいますか!! 私はそのような事は決してしておりません!!」




「黙れ知れもの、この者をつまみ出せ」




ハッ、という短い返答の後2人の悪魔がヤルドを抑え城主の間から連れ出そうとする




「待ってください陛下!! 私はそのような事しておりません!! 陛下!! へいかぁぁぁぁあ!!」




その断末魔だけを残し再び城主の間に静寂が蘇る




その後陛下と呼ばれた悪魔は小さく何かを呟いたがその声は誰にも聞こえず虚空の一部となり溶けて消えた



______________________________



セドラは森の中を走り回り村人達に声をかけながら安全な道を確保し帰路についた



親達が帰ってきたと知った子供たちが、一斉に家から飛び出し各々親の元へ駆け寄る、駆け寄ってきた子供たちに対して親達はごめんねと謝りながら強く抱きしめる、そんな光景をぼーっと見つめていた



「あぁ………」



「おかえりなさいゴミ、首尾は上場だったようですね、それとそのアホ面気持ち悪いです」



「あぁ!!もうそれ!!優しくしろよ!!もっと甘やかせよ!!もう結構やばかったんだからな!!王子の冒険、エサになりましたで終わるところだったんだぞ!!」



「そうですかゴミ、お疲れ様です」



「ぐっ、もういいよ」



そんなこんなでしばらく不貞腐れていると、朝あった女の子とその両親らしき大人が近づいてくる



「あぁ冒険者様、なんとお礼を言えばいいやら、本当にありがとうございます、こちらはささやかではありますが村からの報酬の1万クレジットと簡単な宴を催しますのでよろしければご参加ください!! たくさん料理とお酒を振る舞いますので!!」



「えっ? それはまことなりや?」



「えぇ、もちろんですとも是非とも参加お願いします」



「やったー!! お腹すいてたんですよ!! ありがたくちょうだい致しますね!!」



ドスッ!!



「グホォッ… な、何しやがるメイド」



するとメイドは耳元に口を近づけ小さな声で



「てめぇ、王候補がこんな所でお世話になっていいわけないだろゴミが、いいから適当に断っておけ殺すぞ」



そんな怖い事を耳元で言われたので少し涙目になるセドラ



「あ、あのぉ、やっぱりぃ、ご飯大丈夫ですぅ、ただ皆様をお救いするために来ただけなのでぇ、ぼ、僕達帰りますぅ」



「いやいやいやいや!! 何をおっしゃいますか!!我々たかだか村人ですがそれでも果たすべき矜持を胸に持っております、助けていただいたのにお礼もしないなどと、それは人間の恥です!!是非お礼をさせて下さい!!」



思ったよりも強い剣幕にメイドが少しタジタジになりながら



「い、いえたかだか村人などと、我々ラウス国民は皆様方が作られる作物で生かされてるようなものです、そのような方々が私たちのような旅人のためにそこまでして頂かなくても…」



「なにを言いますか!! いのちをすくってもらったんです、娘の顔をまた見してくれたのです!!もうそれだけでいったいどれだけ我々が救われたか!!」



そんな村長の声に周りも賛同し、そうだそうだお礼をさせてくれーとチラホラ声が上がり始める、するとセドラかまニャッとしながらメイドの方にゆっくりと顔を向け



「お世話になりましょうよ、カリナさぁん」



と憎たらしい顔で言うので、みぞおちに強烈な一撃を周りにバレないように放ちぐったりする王子



「あぁ、そうですねうちの剣士もどうやら今回の戦闘で少し疲れてしまったみたいですので、御言葉に甘えまして宴に参加させて頂きます」




「おぉ!!左様ですか左様ですか!! よし!! それじゃあ村の衆今宵は宴だ存分に英雄達をもてなそう!!」




おぉぉぉぉお!!と意気揚々に掛け声をあげる村人達に苦笑いで会釈をし「少し失礼しますね」と言って1度その場を離れる




そして王子を村の外れにある肥料が溜めてあった場所に放り込み宴に参加する、その際セドラがいない理由は「寝かせてきました」であった



15分ほどたった頃




「宴会………飲酒……うっみぞおちが………」



「あぁ、ここはどこだ?うっ!!うぅ……くっせぇ!! なぁんだここは!?」



辺りは暗いが上には夜空が見えた



「穴的ななにかか…」



ひぃひぃ言いながらなんとか登りきり辺りを見回すと畑が広がっていた



「ん………    肥溜めじゃねーかここ!!  くっそ、こんなことをするのはあのメイドぐらいだろう許さん」



許さんと言いつつも何かすると最低でも100倍ぐらいで仕返しされるので何もしないのであった



「まぁーとりあえず身体洗うか」



近くにあった井戸で身体を綺麗になるまで流す




「はぁ〜、ちょっと臭い抜けねぇなぁ、あのメイドほんと嫌い、前なんか手に手が少し当たったぐらいでその日の記憶がなくなるぐらい殴られたことあったしな、ほんとパパもなんであんな奴雇ったの、巨乳が良いとか言ったからかな……」




はぁ〜、とダメ押しで何度も水を被り臭いを消そうとするがなかなか落ちない




「あっ、そうかこうなりゃあのクソメイドの使ってる洗剤と香水で臭いを上書きするか」




そう言ってその日、村人達に貸し与えられた宿に行き香水を服にかけ洗剤で身体を洗う




「よしよしいい感じだな、さていい感じになったしそろそろ俺もご相伴に預かろうかな」




しかしこの時はまだ気づいていなかった、メイドの荷物の中を漁ったために起きることとなる悲劇を、しかし気づいていないため上機嫌で村に向かうセドラであった




「おぉ? セドラさんじゃないか!! 起きたのかい? ん?なんでそんなにずぶ濡れなんだい?」



「いや、大した理由じゃないんだ、とりあえずお腹すいたので、なにかもらえないですかね?」



「あぁいいとも、今うちの娘に持ってこさせるよ!!  おーいミヤ!勇者様に美味しいもの持ってきてくれ!!」



「ほほう」



すると近くの家の中から声が聞こえてくる



「はーい、少し待っててくださいねぇ〜」



「(なかなか可愛い声だ、よしよしさっきは肥溜めにダストシュートされてテンションガタ落ちだったがこういう事があるならば問題はない)」



ニヤけた顔を片手でおおいなんとか隠そうとしていると



「これはセドラ、起きたのですねおはようございます」



突然バツグンのプロポーションを持ったメイド服の女が現れる



「はっ… か、カリナ…さん」



しかしこの絶世の美女にはまったく喜びを覚えない王子である



「よろしければご一緒してもよろしいですかご主人?」



「あぁもちろんさ!! 今日の宴の主役達が一同にうちに来てくれるなんて嬉しいな、ミヤ!! もう一つ追加を頼むよ!!」



「はーい、待っててくださいね!!」



とても和やか雰囲気の家庭の中に一人だけで場違いな程震ている男がいる



「あ、あのご主人」



「おぉどうしましたセドラさん!!」



「い、いやそのだな、ち、ちょっと体調g……」



「おやセドラ、この匂いは貴方の大好物のブリ大根じゃないですか、まさか貴方がこれを食べないなんてことはないですよね?」



「ひっ!? ひゃ、ひゃい、だいしゅきでしゅ!!」



「おっ、よく気が付かれましたなカリナ殿、そうなんです、今日はうちの娘の得意料理ブリ大根です、ぜひ堪能してください!!」



そんなこんなで逃げられなくなった、その後家主の好意で酒や肉も大量にご馳走になり、娘のミヤのブリ大根も味わうとなんだか隣のメイドなんか捻り潰せるんじゃないかぐらいに思えてきて気分が良くなってきた頃



「あ、あのセドラさん」



「ん?どうしたミヤさん」



「えっと、よろしければ旅のお話とか聞かせていただけないかなと、なにしろ世間に疎いものでして、きっとこれだけ優秀な勇者様だとさぞ勇敢な冒険をされてきたのだろうと思いまして」



「(えっ、やべ、今日冒険始めたんだよなんて言えねぇ)あ、あぁまぁー僕基準で言うなら大したものではないんだが、まぁー周りから見たら大冒険みたいにもなるのかなぁ!!」



「ぜひ!! 聞かせてください!!」



「へぇ、ぜひ私にも聞かせていただきたいですねセドラ」



「へ!? いやそのあれだよ俺の旅はほかの人の冒険ほど華々しくないからね!! 伝えていいものでは無いんだよすまないね、ミヤさん」



「あぁそうなのですね、大変でしたでしょう今日だけでもいっぱい身体を休めて行ってください、そして貴方に神の祝福と良き出会いがありますように」



そう言うと軽くウィンクをして「お飲み物お持ちいたしますね」と言い家の方に戻っていく




「あぁ………なにあの子可愛すぎ、勢いで俺と結婚とかしてくれないかなぁ」



「なにを言ってるのですかゴミ、あなたが見ていいものはゴミか鏡に写ったあなたの姿ぐらいですよ」



「えっ、そんなに言う!? もうごめんなさい」



「いいえゴミ、ここは「ありがとうございます」と言うところですよ」



「えっ、ありがとうございます」



「素直でよろしい、死ねゴミ」



「ふぅ……」



「…………」



「俺の記憶では俺は王子だったきがするんだよな」



「何を言ってるんですかゴミ、あなたは昔からゴミでしたよ」



「うん、俺の気のせいみたいだ」



「さて、では私達はそろそろ休ませて頂きますね」



「えっ、まだ飲みたい、、、あっ、やっぱいいです寝ましょう」



ものすごい顔でにらまれやむなく休むことにした、今後もこんな感じになるのかと落胆をあらわにしてると無慈悲にもド突かれたので泣くことにした



そして貸し与えられた宿のベットで寝準備をしていた時にふと思い出した



「(そう言えば、あの悪魔とか言ってたやつは何者だったんだろうな、まぁ村ではおおむね俺の活躍を話してもらってたから良いことにしたが、なんか思ったよりこの世は複雑らしいな、まぁ~その辺のゴタゴタは他の王候補者にがなんとかしてくれるだろう、あぁ疲れた寝よ寝よ)」






次回に続く




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