第32話:父親の死と母の痴呆(2017-201802)
その後、夏から普通の生活を始めて、9月頃から両親が散歩を開始し、今までの生活を取り戻した。その後、七郎は週に2回、入間の学生寮に出かけた。学生達を集めて、家庭教師の仕事を探すので、希望しない人は手を上げて下さいと言うと、手を上げる人がいないので、全員の家庭教師のバイトの手配を開始する事にした。
2017年10月から、学生寮や、近くの施設や最寄りの3つの駅にも、家庭教師募集のポスターを貼らせてもらった。その他、イオンやコストコにもポスターを貼らせてもらった。内容は、土日、毎週1-2回、1回は2時間とした。高校生、5千円/時間と書いた。
ポスターを貼った翌日から学生寮の2つの電話や学生寮のホームページに依頼の知られが、次々と入ってきた。1週間で56件の応募があり、ほとんど全てが2教科を希望していた。先生と生徒の組み合わせは、できるだけ同性の先生に振り分ける事にした。これで2万円の報酬を得られれば学生の助けになると思われた。家庭教師、希望の高校生と教える先生、振り分けして11月から家庭教師を開始した。家庭教師、希望の高校生に学生塾まで来てもらう事にした。こうして、2017年も終了した。
2018年に入り七郎が学生に家庭教師と他のアルバイトの状況を聞くと家庭教師で2万/月、その他、平日、学校を終えてからのバイトで3-5万円で食事代込みで寮費が3万円/月と、実家から仕送りがなくても贅沢しなければ生活できるようになったと感謝された。
2018年に入り1月12日の寒い日に恵子さんの父、吉永仁さんが再び体調を崩して救急車でKU病院に運ばれたとの連絡が入った。急いで、恵子さんと共に病院に行くと、担当の先生から、心不全の兆候が見られて、クラスⅡからⅢに移行している。つまり、日常動作をしても心不全の症状、息切れ、むくみ、呼吸不全を起こしやすくなっていると言うのだ。とりあえず、入院して、治療をして、症状の改善をはかるつもりですと話してくれた。
七郎が治癒する見込みは何%位あるんですかと単刀直入に聞いた。すると、かなり厳しいかも知れないと言い呼吸不全が直らないと死の危険が増すと言った。今回も母親の吉永仁美さんが取り乱して、興奮状態になって死ぬんじゃないですよねと担当の先生に叫んだ、心配しないで、できるだけの事はしますからとの返答だった。
先生と話して、今回も特別室に移して患者さんの奥さんも一緒に入院してもらいましょうと言ってくれた。七郎が恵子さんに実家から近いからタクシーを使って行き来して看病しなさいと言った。
その日から数えて15日目に恵子さんの父の吉永仁さんの容態が回復せず、静かに息を引き取った。彼の妻の吉永仁美さんが、この出来事に対して、現実を受け入れられないように、取り乱して、錯乱状態になった。先生が鎮静剤の注射をして眠らせた位の興奮状態だった。彼女が目を覚ますと、隣に、旦那さんの姿はなく、今度は泣き出してしまった。泣き終わると窓の外の一点を見つめて、お父さんが、お星様になったですかと七郎や恵子さんに問いかけてきた。やさしく、そうです、お星様になったんですというと、私も一緒にお星様になりたいと言い出した。
言動の変化に驚いて先生を呼ぶと、あまりのショックで、痴呆が急激に悪化したのかも知れないと言い、精神科の先生に見てもらいましょうと言った。
少しして若い精神科の医者が来てゆっくりとした口調で吉永仁美さんに語りかけた。少しずつ落ち着いてきたが今度は口数が少なくなり、ただ、ぼんやりと外を眺めているだけの状態になった。精神科のお医者さんが、病室を替えて、数日、様子を見るために入院してもらいましょうと言い、それに対して、七郎と恵子が宜しくお願いしますと言った
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