第19話:与えられた人生?、何せねば!(2011-12)

 この事件を機に七郎は、自分の歩んできた道が本当に良かったのか、また正しかったのか振り返る時間がもてた。2011年で58歳を迎え普通は、あと2年で定年を迎える。確かに金銭的にも、対人関係でも、今までは恵まれた人生だった。お金もでき、地位も、仕事も、名誉も手に入れた。


 しかし自分で勝ち取ったものは何一つなく全部、家族、友人のおかげだったことに気づいた。つまり、与えられた人生であり自分の足で切り開いたとはいえない事に気づいて、七郎は数日間は呆然とした。自分の手で何かしたい。何かしなければいけない、そうでなければ生きている意味がどこにあるのだと悩みはじめた。


 数日後、いつもの様に運動のため、散歩をしていた時、とある寺の前で足を止めた。入り口に、毎週日曜日、無料座禅教室を開催してますので、お気軽にご参加下さいと書いてあった。これだと思い、寺の座禅教室に入会した。翌週の日曜、最初の座禅に参加した。日頃、座る生活をしていないので、うまく座禅が組めない。見かねて、お坊さんが、座布団を持ってきて、何とか座禅を開始できた。座禅し始めてすぐ、頭の中から何かが抜けていく様な不思議な感じがした。しかし嫌な感じと言うよりも、爽快感さえ感じた。


 座禅終了後、お坊さんが、座禅の第一歩は雑念を捨て、無の境地を感じることですと教えてくれた。静かな感じ、爽快な感じを体感して下さいと言った。その後、参加者から、いろんな質問とお坊さんからの話があり1時間ほどで終了した。


 七郎は、座禅は苦しかったり、痛かったりするんだろうなと予想していたが、反対に爽快感を感じ、何か奥深ささえ感じた。その後、毎週、座禅に通い、3ヶ月後には、お坊さんの言う「無我の境地」を、ぼんやりとだが、感じることができるようになっていった。


 そして、日頃の悩み自分は一体何をしてきたんだろう今後何をしていったら良いんだろうかという質問をした所、与えられた人生を過ごしてきたと思うおもうなら、今度は人に与える人生をすべきであり、その方法は自分自身で考えなさいと言われた。


 新聞で東日本大震災で親をなくした子供の数1698人と言う記事を見て、木下七郎は心が痛んだ。自分も飛行機事故で一瞬にして、家族4人をなくしたことが思い出され、東北大震災で親を亡くした孤児達を自分の稼いできた、お金で助けようと思いついた。


 RSC時代に知り合いになった芸能人のチャリティー・ショーなどを年に4回企画し、収益金を全部、東北大震災の孤児のために送った。2008年に金、3000kgを63億円で購入してい分を2012年年末に金価格が急上昇し、5000円/gを越えそうな勢いだったので金地金を5000円/g、3000kgをで全部売却して150億円を得た。その時の総資産が154億円1840万円となった。この時点で2013年七郎基金に10億円寄付したので、約144億円となり、1人ではとても使い切れない。増やすことは終了して、うまく使う方法を考え始めた。

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