時空漂流体ウラシマ

Acta est fabula.

時空漂流体ウラシマ

硝子体ガラスボディ旅人ウラシマ

今日も今日とて旅をする

那由他の海を股に掛け

見果てぬ大地に胸焦がす


水面に揺蕩たゆたい、微睡まどろめば

思い出すのは産業革命スチームパンク

空を見上げて海猫ウミネコ見れば

懐かしいのはライトフライヤー号イカロスの夢


水面に揺蕩たゆたい、微睡まどろめば

いつか夢見た黄金時代ベル・エポック

空を見上げて雲見れば

忘れたいのはキノコ雲ウラノスの悪夢


がらんどうなその体に秘めるのは、

宇宙にも入りきらない壮大な物語

未来に夢見た双子の兄は、

そらの最果てで竜宮城スターボウを見る


月日でくすんだその体が護るのは、

五劫経っても色褪せない斬新な物語

過去を生きた双子の弟は、

年下の兄ウラシマとの昔話に花を咲かせる


「拝啓、今では無い何時かに住む君へ

私の今は君の過去であり、君の過去は私の今である

この時代の輝きは、君の時代でも観測できただろうか?

君達が望遠鏡を覗きこんだ時、

在りし日の星空に思いを馳せるのだろうか?


拝啓、今では無い何時かに住む君へ

私の未来は君の今であり、君の未来もまた私の未来である

君の生きている時代は、私のいる時代よりも輝いているだろうか?

未来の君達が望遠鏡を覗きこんだ時、

今の君達の放つ輝きに思いを馳せるのだろうか?」


硝子体ガラスボディ旅人ウラシマ

今日も今日とて旅をする

那由他の海に別れ告げ

見果てぬ大地で「君」と会う

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

時空漂流体ウラシマ Acta est fabula. @Acta_est_fabula

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ