指針は決めておくべきものだから
「これからどうするつもりだい?」
「とりあえずチームには興味あるから、オルディネのために頑張ってみようかなって。リーデルはともかく、解散とか聞いたらほっとけないし」
「相変わらず、お人好しだな。君は」
司郎は困ったような笑みを浮かべて呟く。
「あかね嬢はこの二ヶ月間で、結祈や朔姫達に認めてもらわなければならない。その為には、色々とやらなければならない事があるわけで……まずは何をするつもりかな?」
これからどうすればいいのか。
どうしたいのか。
先程、昶に似た質問をされた事を思い出しながら、あかねは現時点で考えている事を口にする。
「まずは異能者のことを知るところから始めたいです。私、異能者だけど、深くは知らないから」
「着眼点は悪くない。情報は確かに大切だし、使い道によっては大きな武器になるからね。けれどそれだけでは、リーデルになれない事は分かるかい?」
自分がリーデルにならなければ、オルディネは解散。
そう告げられた事によって、リーデルを目指す事を決めた。
しかし決めたと言っても、自分自身がリーデルを熱望しているわけではない。
ただ目の前で転んでしまった人を放っておけないように、彼らを放って置けなかった。
司郎が言うように、お人好しだ。
とはいえ、リーデルになる為に何をすべきが考えても、やはり今は漠然としたものしかなく、明確な事など一つもなかったのも事実だった。
「正直言って、まだ何をしていいのか分からないんです。ごめんなさい」
「謝らなくていいよ。今日明日で決められる事ではないから。だからこそ、どちらの選択を取るのかだけでも決めておこうと思ってね」
昨夜ジョエルに言われた事が脳裏に過ぎる。
結祈達を説得して認めさせるか、新たな異能者を探してオルディネに所属させるか。
どちらも理が適っているが故に、なかなか決断を下せない。
「あかね嬢が迷っているのは分かってるつもりだけど、指針は決めておくべきものだから」
どうするかはともあれ、最低限の目的だけでも決めておく事に越したことはない。
「…アーネストさんはどう思いますか?」
「私もジョエルと同じように、新たな所属者を探す方がいいかな。あかね嬢をリーデルとして認知させた上で、所属させればいいからね」
そこまで聞いて、ふと疑問に思った事を口にする。
「気になっていたんですが、何人くらい探せば?」
「そうだね……私個人の意見になってしまうけれども、賛成派が優勢となる為には過半数は欲しいところかな。ジョエルは立場上、表立って賛成は出来ないことと、渦中の君を抜いて……五人は欲しいね」
「五人……」
五人の新しい所属者を探し見つける。
一聞、大した事ではない。
だがそこら辺にいる人達から、探し集めるのではない。
異能者の……それも無所属の彼らの中から、探し出さなければならない。
片手で表せるその個数のはずが、あかねに重くのしかかる。
「途方もないですね」
「大袈裟に捉えなくていいんだ。チームの所属者募集は定期的に行われているもので、求人を出したり、養成所とかで引き抜いたり色々な方法があるんだ」
「養成所?」
「異能者の養成所だよ。知らないかい?」
アーネストの言葉に、あかねは司郎に目配せする。
「君は知ってるだろう?」
「ええ、又聞き程度ですが。異能のコントロールが不十分な子供や、一般世間に馴染もうとする異能者達が集まる訓練所と言ったところでしょうか。と言っても、そんな殺伐としたところではなくて、ニュアンスの近い例えを言うなら、特殊学級ですかね」
司郎の答えに満足したのか、アーネストは笑みを浮かべる。
「さすがは佐倉くん。養成所はそういうところだから、様々な事情を抱えた幅広い層の異能者がいる。君の眼に適う者もいるかも知れないね」
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