猫瓜

安良巻祐介

 

 猫瓜を三つほど手に入れたので庭に干しておいたのだが、ヘタを切るのをつい忘れていたせいで、良い日向についうとうとまどろんだ隙に、三つのうち二つは四つ足を生やし産毛を生じて、逃げて行ってしまった。はっと目が覚めて慌てて残る一つを捕まえたが、それもどうやら逃げ出す途中であったと見えて、中途半端に毛を生じ足のような出っぱりが生えかけている。こうなったらもう片付けねばならないから、その日の晩に調理してさっさと食ってしまったが、すでに爽やかさと瑞々しさが抜けてだいぶん血生臭い味になっていて、大して旨くなく腹も膨れなかった上に、その夜は顔のない小さい仔に延々追いかけ回される夢を朝まで見てしまって、びっしょりと背に汗をかく羽目になり散々だった。

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猫瓜 安良巻祐介 @aramaki88

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