♯01 転生したのはオークでした

きっかけは、つい2時間前だ。

あ~暑い、めんどくせえ!

「ここをこうしてーーー」

7月の暑い教室に先生の声が響きわたる。

めんどくせえ、だいたいなんで相対性理論なんか覚えるんだよ。

絶対、将来使わないよな。

そもそもなんでこんなことしなくちゃいけねえんだよ。

「おい松山、ここをやってくれ」

なんでいつも俺を指名するんだ、この先生は!

「どこをやるんですかー」

やる気のない声で答える。

「聞いて無かったのか、(1)の・・・。」

よし、時間が稼げた。これでここから逃げられる。

全速力でドアまでダッシュする。

それを必死で止めようとする先生。

だが、もう遅い。俺は手をドアに掛け、外へ飛び出して逃走した。

やっぱ、くそだ、この学校は。

朝読書もないからラノベも読めねえし。

勉強をする時間を全部本に当てたい。

「こんな世界もう嫌だ!」

途端に、視界が暗くなる。意識が遠退いて・・・。

そこで記憶のい糸はぷっつりと切れていた。



それで今に至る。

この間の記憶が嘘のようにスッポリ抜けている。

転生したのはいいが、目的がない。

そもそも、転生したときの記憶を有していないのだから。

まあ、あとは推測だが、俺はたぶん何者かに助けを求められたのだ。

例えば女神様が、

「あなたを勇者として異世界に送ります」

とかいって、勝手に俺を転生させたとか。

でも、それだと記憶がなくなった説明がつかない。

もしかしたら、もうとっくのとうに転生をさせられていて、いまが一時的な記憶喪失とか。

でも、これはこれで、森にいる説明がつかない。

多少の装備を持っていたのなら、クエスト中に記憶を・・・なんてことも考えられたが、

いや、それもないか。オークだからクエストさえ受けられないと見るのが妥当だろう。

では、やはり初めの説が最も有力か。

記憶は・・・

 もしかしたら、何かの不都合で女神自身に消されたのかもしれない。

しかし、困った。

こんなことを考えているうちに、追っ手は迫ってきている。

そういえば、ラノベの世界ならここにヒロインが現れてもおかしくはないはずなんだけど、

俺はオークだ。さすがにそれは無いだろう。 

いくらなんでも、女だろうと、オークに欲情はしないよ?

そこまで変態じゃ無いし。

 その話は置いといて、ステータス画面はどうだろう、もしかしたらあるのではないか?

そう考えてステータス画面を開いてみる。

するとどうだろう、目の前に透明な板が現れた。

おそらくこれがステータス画面だろう。


確認すると、スキルという部分には、2つのものがあった。

どうやら、文字は読めるらしい。


名前;松山 光

年齢;16 成人済み

ステータス;Lv 1 0/10

初期スキル;1 無属性 オークの威圧 0/20 ランク規格外

     

初期スキル;2 無属性 翻訳   ランクN 0/10

       モンスター共通語


特性;なし

何だろう、オークの威圧って?

よくわからないけど、使ってみるのも手かもしれない。

あとの一つは、ノーマルスキルだ。

これは、この世界の人間ならば皆持っているだろう。

あ、まあオークだから珍しいのかもしれないけど。

とりあえずスキルを使えば、この危機は乗り越えられる。

それでは使おう。

「オークの威圧!」

直後、男が怯んだ。そして絶叫しながら帰っていった。

成功だ。よくわからないが、危機は去った。

しばらくすると、他のオークとおぼしき者がこちらに歩いてきた。

ちょうどいい、村を案内してもらおう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

しばらく進むと、大きな街が見えてきた。

「あそこに見えるのが、「ミャー国」の王宮だ。で、あの黄色い建物が外交施設。あの山の向こうに見える大きなところが、でっかいのが魔獣たちの王都だ

 死の水壁のこちら側にある国をまとめてるとこだ。

 国ごとに王宮はあんのに、王都は全体に一つしかないんだと。

 不思議なもんだよな~」

軽い説明を受けたあと、僕は街中をまわった。

「じゃあ兄ちゃん、まずはギルドに職業申請だ。

 ちなみに、この辺は、ミャー国のオーク支部だってよ。」

へー、魔獣の中にもギルドってあるんだ。

「はい!」

いや、待てよ、名前は大丈夫なのか?

そもそも僕はオークだ。申請なんかできるのだろうか。

魔獣の中でも、オークって偏見が多いようなイメージがあるんだよね・・・。

「はい、承りました。松山さんですね。職業は何になさりますか?」

よかった、あやしまれなかった。

今考えてみれば、オーク支部というくらいだ。

このへんにはオークしか住んでないんだろう。

「こ、これはすごいですよ!あなたスキルを2つももっているじゃないですか!

 絶対に冒険者になることをオススメします。」

「じゃあ、冒険者で。」

職員は慣れた手つきでカードを作っていく。

「これがあなたのギルドカードになります。」

これを持っていると身分証明になり、電子マネーのような役割も果たしているらしい。

でも、なんかつまんないんだよな~。スキルの多さでもう少し驚いたりしないのかな・・・?

「説明はうけますか?」

「いえ、大丈夫です。」

僕をなめないでほしい。なんせあらゆるラノベを読み漁っていたのだから。

「はい、登録完了です!」

この世界でも、僕はなんとかやっていけそうだ。

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異世界転生したらオークだった件について @mackio12

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