第6話 カンティングアームズ
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紋章の
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「なーなー。前言ってたおっぱいの紋章の話って結局なんだったん?」
「かっ、軽々しくそんな風に呼ぶでない! きちんとした紋章だと言うたであろうが!」
「おっぱいが?」
「ち・ぶ・さ・じゃ! よろしい、今日はその話をしてやろう!」
さすがにしびれを切らしたのか、分厚い紋章学の辞典を引っ張り出してくるセルクシノイ。
猛然とめくり、目的のものを見つけるとすっ、と指で指し示す。
「さて!お主がさっきから連呼しておる紋章はこの家系のものじゃ。
「で、それとおっぱいとになんの関係が?」
「
「……それだけ?」
「それだけ、とはなんじゃ。家名にちなんで紋章を作るということは非常に名誉なことなんじゃぞ」
えー、という顔をするアオイを尻目にセルクシノイはさらに言葉を重ねる。
「こういった紋章は特に
「……要はダジャレなのかこれ」
「……それを言われると辛いところではあるがの。たとえばこれなんかどうじゃ?」
そういってセルクシノイは
「
「鋭い。アオイにしては大変に鋭い!!」
「にしては、は余計。どこの家のだよ」
「シェイクスピア家じゃな」
「ダジャレじゃねえか!?」
「それ言われるとちょっと……あとはこういうのもあるかのう」
今度は
「鐘。それも
「音が鳴らぬようにしてあるのう」
「音のない鐘、か……どういう
「音がない。『
「やっぱダジャレじゃねえか!!」
「
ぱたん、と辞典を閉じながらセルクシノイは言葉を連ねる。
「
「マジでいっぱいあんのな」
「覚えやすいほうがいいじゃろ、なんでも」
「そうかもしれんけども」
セルクシノイは辞典をしまいつつ記憶を漁る。そういうものがポンポンと出てくるあたり、ミットフォード家始まって以来の才女という話もあながち誇張ではないのだろう。
じっとりとした目でアオイはその姿を眺める。
「んでもさー、なんでこの話をしだしたんだ?」
「まぁ、さほどの意味はないのじゃがの。最近お主が興味を持ってくれているのならばあまり基礎的な話だけでは飽きるだろうと考えて、じゃ」
「おお、教育的配慮」
「先生役を務めるのに慣れておらんからの。せめて、な」
「それはそれは、ありがたいことで」
「殊勝な心がけじゃな。それでこそ儂の助手じゃ」
よしよし、とセルクシノイはアオイの頭を撫でる。どう見ても犬を撫でる時のそれである。
「撫でんな撫でんな」
「お主はたまにこうしたくなるのう……」
「犬じゃないんだからさー」
「犬以上じゃよ。さ、仕事の続きへと戻るかのう。あと15件処理すれば終わりじゃよ」
「へいへい……」
なんだか他の紋章官の視線が痛いが、この際無視することとする。
「セ、セルクシノイ様の助手だからと……」「貴様……!」「いつか密かに……」
やっぱりここの紋章官たちはおかしいと思う。
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