エピローグ
そこは暖房のきいたコンビニの店内。窓際は、訪れた客が店の外を見ながら飲食できるように、細長いテーブルをしつらえてある。窓のそばには、スイセンを生けた花瓶がおいてあり、黄色の花びらをほころばせていた。
「……うーむ……」
椅子に座っているマユミが、つぶらな目をゆがめている。紙コップの熱いコーヒーをすすると、また念じる声がつづいた。
「マユちゃん、何を考えているの?」
右隣に座るカザカが、アンマンと湯気のたつコーヒーを手に尋ねた。すると。
「コーヒーフィルターと水性ペン、それとミネラルウォーター。これでペーパークロマトグラフィーの実験をしてみようかと……」
「ああなるほどね、数種類そろえると色がさまざま出て綺麗だよね」
そこへ左隣の理奈が、ピッツァまんをほおばって聞いてきた。
「なんでミネラルウォーターなの? 水道水でいいんじゃないかしら?」
「……うん……でも……」
マユミは決めかねた返事である。不意にカザカは、何かを見つけたように目を一度だけ瞬きする。
「まてよ、雪がいいかもしれない」
それを聞いたマユミはうなずいた。
「うん、雪を溶かした水で、虹をつくってみるっす」
彼女たちは、明るい店内から、窓の向こうの雪景色を覚え込むようにながめた。
ラボφ ~最悪の冬~ 私掠船柊 @violet-planet
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