清花たちの七五三参りに出かけよう

 さて11月15日には子供の無事の成長を祝う行事である七五三参りがある。


「そろそろ、清花たちの髪置きの儀の準備をしないとな」


 俺は妙にそういうと妙もうなずいた。


「そうですね、無事に育ってくれて何よりです」


「清花、髪置きの儀がもうすぐだぞ」


 俺がそういうと清花が聞いてきた。


「えびじょと一緒ー?」


 俺は清花におおきくうなずいた。


「ああ、海老蔵と一緒だ」


 そういうと清花はバンザイして喜んでる


「やたー」


 弾左衛門が処刑され、遊女や芸人などの扱いは僧侶や神主、医者、学者などと同じ士農工商穢多非人の身分外となった。


 つまり、武士であろうが町民であろうが、穢多非人であろうが基本的には相手の身分に関係なく対応するということだ。


 僧侶、医者、神主、学者、茶人、それから遊女などは大名と直接話せたり、特に医者などは御殿内の奥に入り、藩主の体や奥方などの体に直接触って脈をとって治療をしたりもできる。


 武士でも上下の身分が厳しく定められている身分制のこの時代では、かなり身分の高い家臣であっても、奥に入れるの物はごく少数。


 また大奥は男子禁制で基本的に将軍以外の男性は立ち入り厳禁とされたが、実際には病人の往診に来た医師や老中らによる定例の巡回、女性だけでは困難な力仕事を代行する場合などには、男性が大奥に入ることが許されていたし、寺に参拝した多くの女中と僧侶が話をすることも珍しくない。


 そして遊女は大名とも直接夜のお相手をする存在で、それに芸人は加わったわけだ。


「これを機に大奥に呼ばれる女旅芸人や女流作家も増えるかもしれねえな」


 そんな感じで僧侶、医者、神主、茶人、遊女や楼主は江戸時代の身分制度の身分外にあったわけだ。


 幕府の管轄としては寺社奉行のままなんだけどな。


 ともかく歌舞伎役者も非人ではなく身分外の扱いになったことで寺社の参拝などは問題がなくなった。


 でまあ七五三参りにみんなで行こうぜとなったわけだが、もともとは江戸やその周辺地域のみで行われていて、旧暦の11月15日は二十八宿の鬼宿日(鬼が出歩かない日)に当たる


 この日は、何事をするにも吉であるとされたことや旧暦の11月は収穫を終えてその実りを神に感謝する月でもあったので、その月の満月の日である15日に、氏神への収穫の感謝を兼ねて子供の成長を感謝し、加護を祈るようになったが三歳までの男女はおかっぱ頭もしくは丸坊主で、そのおかっぱ頭や坊主頭から前髪を伸ばし始め、結髪をする「髪置きの祝い」を三歳に行なう。


 実際は七五三が11月15日になった由来は、三代将軍徳川家光の四男徳松の健康を祈っての参拝から決まったらしくて、この日に参拝するのは江戸だけで、その他の地域では誕生日や、1月の吉日にお祝いしているらしい。


 ああこれは数えだから現代でいうと二歳だけどな。


「清花の稚児衣装を用意してきましたよ」


 ニコニコしながら妙の両親が立派な稚児衣装を持ってきてくれた。


「いつもありがとうございます」


 そして母さんもニコニコしている。


 そしてみんなで浅草寺へ出発。


「じゃあ行くぞ」


「あーい」


「はい」


 きれいに稚児衣装に着飾った清花や海老蔵を始めとして、遊郭の遊女や芝居役者たちに同じ年齢の子供がいればそれらの皆に俺は金を出して稚児衣装をきさせて親やその両親が入れば皆で揃って子供を連れて、浅草寺に参詣する。


「縁起のいい千歳飴、子供に一つどうだい?」


 神社境内での千歳飴売りもたくさんいて大いに繁盛しているっぽい。


「ああ、2つ貰おうか」


 俺は紙に入った千歳飴を清花や海老蔵に渡した。


「とーしゃあいあと」


「ありがとうございます」


 千歳飴の長い袋を引きずるように持ちながらお参りをする二人を見るとほっこりするな。


 そして子供の成長を祈る縁起物として、七五三の日には「千歳飴」がつきものだがこれは大阪の平野甚左衛門が1615年に江戸に出て売り始めたというが、浅草寺では水飴をねって紅白に染められた棒状の飴を売るものがたくさんいる。


 原料は麦芽糖を使った水あめではあるがそれでも十分甘い。


「おいち」


「甘くて美味しいですね」


 そしていつものように皆でお祝い膳として両家の皆でお赤飯炊いて、近所に配り歩いたり、その他に紅白のなますを作り、鯛の尾頭付きも焼いてみんなで食べたんだ。


「これからも元気でいてくれな」


「あい」


「はい」


 まあ清花たちはまだ母乳がメインなんだけどな。

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