勧進興行はなんだかんだで大成功だったと思うぜ

 さて、裁判の結果がでてすぐに、弾左衛門に壊された桟敷席や芝居小屋はすぐに立て直し、改めて勧進船の中での猿楽や猿若舞、絡繰り芝居の興行なども行われた。


 そして各自の勧進興行をすぐさまやり直し始めたが、なんだかんだで上は大名から下は一般町民まで、連日の満員大入りの賑わいを見せた俺達の勧進興行は大成功した。


「なんだかんだで大名旗本のお殿様やお武家様も結構来てくれたし良かったなみんな」


 中村勘三郎は大きくうなずいた。


「ああ、お上に上納する分を差し引いても十分大成功だ」


 金剛太夫もうなずく。


「今後は弾左衛門の横槍を気にしなくて良くなったのも助かりますな」


 結城孫三郎と江戸肥前掾もホクホク顔だな。


「絡繰り芝居を改めて大名様方に知ってもらえたのはでかいな」


「全くだ、今までは町民相手だったからな。

 しかし6割もお上に収めないといけないというのはなんとかならないのか?」


 江戸肥前掾が俺にそう言ってきたが俺は首を横に振った。


「今回はあくまでも畿内や九州などの地震復興が名目の興行で、上様も大名や豪商たちに芝居を見物するように指示して下さっているからこその人の入りだからな」


 江戸肥前掾が俺の言葉に一応納得したらしい。


「なんだそういうことだったのか。

 それじゃまあしかたねえかもな」


 実際に明暦の大火でさんざん散財した幕府にとって、今回の大地震で畿内や九州の天領の復興にまたカネがかかるとするとさぞや頭が痛かっただろう。


 ちなみに今回の興行での総収入は全て合わせて1万両ほど(約10億円)


 これを5で割ってそれぞれが2000両(2億円)の4割の800両(8000万円)が手元に残れば桟敷席などを作るのにかかった金を差っ引いても十分お釣りは来ると思うし、これから大名様から直接ここに声がかかることがあるかもしれないことを考えれば十分だしな。


 幕府としても6000両(およそ6億円)もあれば結構助かるだろう。


 幕府としてもただ単に復興に金が必要であるから、各藩に財を供出せよという訳にはいかない。


 無論大名にただ働きで天下普請をさせることはできるが、江戸の武家屋敷の移転や再建などをしたばかりで、すでに財政がやばいところも出てきているのもわかってるだろうから、そこまで無理はできない。


 そこで遊女の歌劇や猿楽、猿若舞や絡繰り芝居などを楽しむために、余裕のあるものは観劇せよとなれば、余裕があるものからだけ金銭を集めることもできる。


 楽しむために金を出すのと、ただ単に復興が必要だからと金を出すのでは、出す方の心象も当然変わるし、これからもうまくやっていきたいものだぜ。

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