降りる時に危ないから今更だが玄関や階段を使いやすくしてみよう
さて、清花も大分大きくなってきた。
そろそろ島原遊郭との囲碁対戦の準備もしないといけないな。
のだがその前にちょっと遊郭などの玄関や階段を使いやすくしようと思う。
日本の家屋は床下の湿気を抜くために床が高くつくられていて玄関には上がり
もっと古い時代においては屋敷の玄関を持つことはその持ち主の身分や格式の高さを現すものだったらしい。
武士などの屋敷では段差があったほうが家に侵入されづらいという理由もあったらしいけど。
ともかく日本においては家の中と外というのを厳密に分けでここで履物を脱いで家に上がるわけだがこれは日本以外ではかなり珍しいし、21世紀のアパートやマンションのような集合住宅では玄関の段差と言うのはあまりみられなくなっていた、段差があるとやはり不便であるというのもあるのだろう。
もっとも江戸時代の庶民が住む長屋も玄関と言うものはなくて土間の奥に床が高くなった板敷きの寝床になる場所があるだけだったりはするが。
「段差があるのはその上に座って履物を履いたり腰掛けてちょっと世間話をするのに便利ではあるんだが上がったり降りたりするのは大変なんだよな」
玄関の段差は一尺(おおよそ30cmほど)くらいあるから大きくなり始めた子供を抱っこしたりおぶったりした妙や乳母さんにはちょっと大変だ。
「このさいだからちゃんと式台を置くようにするか」
式台もしくは沓脱ぎ石と呼ばれるのは玄関の段差が大きい場合にその段差を埋めるためにおく踏み台だな。
もっともこの時代における本来の正式な式台というのは、公家や武家などの邸宅において身分の高い来客を迎えたり、草履などを履かずにそのまま牛車や駕籠などに乗るための玄関の外に張り出された板張りの部分を示す場所で、訪問客を受け入れるための正式な表玄関の外側に設けられていたものだがそんな立派なものを作るわけじゃない。
江戸時代だとこういった細かい家の作りにも身分等によって作って良いものと駄目なものがあり、大名屋敷などの上等な式台付き玄関では、わざわざそこに供の者が休めるような控え室も設けられていたりする。
「流石に踏み台を置くくらいなら怒られないだろうとは思うけどな」
なんやかんやでこの時代ではまだまだ色々面倒なしきたりがあるのはしょうがないけどな。
遊郭と茶屋の中は身分差は適用されないとは言え持ち主の身分は非人ではなくなったにせよ有力町人からは変わらないわけだし。
「後は階段だよな」
そもそも日本の家屋というのは平屋が普通であって2階建て以上の塔や楼と言うのは非常に少ない。
でその数少ない遊郭の階段はかなり急傾斜だったりする。
元々階段は寺院の塔などは生活のための空間ではなかったのではしごで昇り降りしたし、土蔵の高い場所のものもはしごで取るのが普通だ。
日本の階段ははしごの発展系なので狭くて急だったりするわけだな。
また複数階層ある城の上の方も基本的には生活空間ではなくて刀や槍などの武具や兵糧を備蓄するための倉庫でもあり普段から使うわけではないから床面積は少しでも広いほうがいいと考えられてる。
だから少々不便でも急で狭い階段だったりするのだな。
さらに日本家屋の場合、柱と柱の間が1間(およそ180cm)で、その柱の上に梁が載っており、階段をかける強度をそのために1間の間に階段を設置するというのもあったりする。
梁と梁の間に載せるというのであれば2間(およそ360cm)にしてもいいわけだがそれだけ有効に使える面積が減るわけだ。
だから、2階を普段から使う遊郭などでも登りやすい階段を設置すればそれだけ階段の設置面積が広がってしまうから急な階段にして、階段下はたんすを置いたりして物を入れられる収納スペースとして利用していたわけだ。
「でもやっぱり階段を作り直すか。
さらに階段に滑り止めと手すりをつければ降りる時多少は違うよな」
早速大工の銀兵衛親方に改築を頼むことにした。
「というわけで階段を2間の幅にし直してさらに手摺をつけてほしいんだ」
「階段を緩やかにして板の幅を広くして手すりをつければいいんですかい」
「ああ、あと玄関にちょうどいい段差の石をおいてほしい」
「わかりやしたやりやしょう」
これで登る時はともかく降りる時に怖い思いをしなくてもすむだろう。
急な階段は登るより降りるほうが怖いよな。
あと階段の端に杜仲で作ったゴムを貼り付けてすべり止めにしておこう。
滑り止めがある方が安全だろうし。
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