娘が生まれて無事に一ヶ月過ごせたので産土詣に詣でよう
さて、生まれた娘はすくすくと育っているし妙の産後の肥立ちも良好だ。
今のところ妙の乳の出も悪くないし昼夜構わず乳を求め飲んではねて、起きてはせがむを繰り返す娘を妙一人で面倒を見るのは大変だから乳母も雇って二人で交代で面倒を見てもらっている。
ちなみに妙が巻いていた腹帯は出産後は清花の産着にして出産後にも活躍しているぞ。
そして生まれて33日目には
「そろそろ産土詣の準備をしないとな」
「そうですね」
さっそく生後33日目を選んで真源寺での産土詣の祈祷を行ってもらうために文での予約を行った。
これは別名で
子供は神様からの授かりもので7歳までの小さなうちに死んだ子供は神様のもとに帰る事になってる。
それより大きくなったら仏様に切り替わるのは不思議といえば不思議だが。
日本においては出産や子供の成長は基本的に神社で行うのが普通なので鬼子母神を祀っている寺を詣でるのは少数派ではあるのだが鬼子母神も神様だから問題はないらしい。
今回も帯祝いの時と同じように俺の母さんや妙のご両親と一緒に行くことにする。
そしてこの風習も、もともとは平安時代の公家が始まりで室町時代に武家に伝わって、江戸時代に一般に広まったというパターンだ。
公家などの正式なお宮参りは母方が寺社に寄進するお金やお参りに参加する者の着るものをすべて準備して、父と父方の祖母が赤ちゃんを抱いて参加する。
正式には母親や母方の両親は参加できず、その理由は母親の産みの忌が明けるのは、産後75日から100日後とされていて、まだ忌中の母親やその家族は行けないので、父方の祖母が赤ん坊を抱いて連れていくことになっているのだが現在では母親のけがれを払うための儀式という意味合いも持っているということになっている。
もっとも父方の祖母に抱かせるのは産後の女性に無理をさせないためともいわれているけどな。
そして、公家ほど穢れがどうこう言っていられなかった武家に広まる間に母親の穢を払うという意味も加わっていったのだろう。
「清花の祝い着を用意してきましたよ」
ニコニコしながら妙の両親が立派な祝い着を持ってきてくれた。
「ありがとうございます。
では鬼子母神様からお預かりした腹帯は洗い清めてお返しいたしましょう」
母さんもニコニコしている。
やはり孫というのは皆にとって可愛いものらしい。
いや、俺にとっても目に入れても痛くないくらい可愛いけどな。
そして当日になりみんなで寺に向かうことにした。
しかし清花には晴れ着はあんまり着心地の良いものではないみたいで微妙にぐずってる。
「おお、よしよし、ちょっとがまんしてくれ」
母さんがあやしてなんとかしてくれた。
なんだかんだで母親のと言うものはすごいな。
そしてお寺についたら早速祈祷をしてもらうことにする。
みんなで手水で口と手を清め本堂へ向かい声をかける。
「すみません予約した三河屋ですが」
住職が出てきて対応してくれる。
「はい、三河屋さんですね。
では御祈祷料をお願いします。
腹帯やお守り、御札もお持ちでしたらこちらでお清めしておきます」
妙のご両親が祈祷料とともに安産祈願のお守りや御札を出す。
役目を無事に終えたお守りやお札はきちんとお焚きあげして俺達のかわりにうけた穢を焼き清めてもらわないとむしろ汚れの塊となってしまう。
お守りとか御札というのはいつまでも同じを持っているのは逆効果になるのだ。
「ではこれでお願いします」
そして寺の住職は包みを受け取って嬉しそうにしている。
「ほうほう、これはありがたい」
やはり一両ほど中身が入っているらしいが妙の両親はあいかわらず奮発してるな。
晴れ着とかも加えれば結構な支出だと思うんだが、繁盛してる材木問屋は遊郭の楼主より実入りが良い可能性もあるからそれほど大変でもないんだろうか。
「どうかよろしくお願いします」
俺たち全員で鬼子母神堂の脇にある小屋で産土詣の祈祷をしてもらう。
今回は娘をだいた母さんが最前面で俺はその横、妙とその両親達は俺たちの後ろだ。
「授かった子供が無事出産をおえ、母子ともに健康に過ごせたことを鬼子母神様に深く感謝いたします。
どうか此後もその後も健やかに成長します見守っていてください。
また妙の産み汚れのお祓いをお願い致します」
祈祷が終了すると祈祷を行った腹帯やお守り、御札が渡される。
「無事終わりましたぞ」
「ありがとうございます」
安産祈願の御札をお焚きあげしてもらい、無病息災家内安全の御札を替わりにもらった。
そして皆でお祝い膳として両家の皆でお赤飯炊いて、近所に配り歩いた。
その他に紅白のなますを作り、黒豆をにて、鯛の尾頭付きも焼いてみんなで食べたんだ。
「無事に産土詣が出来てよかたったねぇ」
「まったくですねぇ」
「うむ、鬼子母神様様だ」
みんなで飲み食いしているなか妙や乳母さんは清花の世話で大変だったが、乳を飲んでお腹いっぱいで寝てしまった清花はやはり天女のように可愛いぞ。
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