今年の花火大会は去年より盛大だぜ
さて、季節は夏になり、大川の川開きが行われ、そのときには納涼鎮魂のための花火も打ち上げられ、今年も去年と同じように水神祭りが行われる。
当然去年と同じように吉原の遊郭でも遊女たちがその馴染客とともに花火見物に出かけ、惣名主の方の業務に携わってる秘書たちや美人楼などの関係の店の従業員たちも一緒に花火を楽しんむんだ。
一部の人間は屋台運営をしていたがね。
まあ、その一部の人間というのは俺とか妙とかなんだが。
俺と妙は客寄せのために掛け声をかける。
「さあ、さあ、美味しいかき氷だよ。
冷たくて美味しいよ」
「どうぞ皆様よっていってくださいませー」
そしたら武家らしい男が俺のもとによってきてくれた。
「ああ、君。
かき氷を2つくれるかね?」
俺は笑みを浮かべて答える。
「はい、どうもありがとうございます。
種類は何にしますか?」
侍っぽい客が連れている遊女らしい女にきいた。
「お三津殿はどれが良いですかな?」
三津って俺が見てる中見世の伊勢屋の吉原娘。のメンバーだったな。
馴染客を捕まえられたようでよかったな。
「では雪をお願い致します」
「だそうだ、雪を2つくれるかね」
「はい、雪2つですね、100文になります」
侍はちょっと目を泳がせてから銭を取り出した。
「うむ、100文だな」
俺は侍から100文を受け取った。
「はい、たしかに100文受け取りました。
ありがとうございます」
俺が侍へかき氷を渡すと、侍は三津へかき氷を一つ手渡した。
三津は神妙そうな顔で言っている。
「山本様、いいのですか?
結構なお値段ですけど」
山本様といわれた侍は笑っていった。
「いやいや、このくらい安いものですよ、はっはっは」
うむ、あの侍は三津にいいところを見せようと必死っぽいな。
まあ、客離れに悩んでいた中見世の遊女に新しい歌を歌わせたかいは有ったようだ。
ちなみにかき氷の値段はお椀一杯50文(おおよそ1250円)。
2杯で100文(おおよそ2500円)は決して安くはないがボッタクリでもないと思うぞ。
氷も砂糖も安くないからな。
あと、桜と清兵衛にも俺は屋台を用意させて俺から氷室の氷を提供して、屋台でかき氷や氷で冷やした冷たい甘酒などを売らせて、それと一緒に餅や団子などを売らせたぞ。
氷を用意できる人間はごく僅かだから当然高くてもよく売れる。
「三河屋さん、毎度毎度助けていただきありがとうございます」
清兵衛がそう言って俺に頭を下げてくる。
「いや、お前さんと桜には幸せになってもらいたいからな」
桜ははにかんだように言った。
「うふふ、私は十分幸せです」
おーおー、惚気だな。
まあ、桜が幸せみたいでよかったぜ。
「桜、岩の方は大丈夫なのか?」
俺がそう聞くと桜はコクっと頷いた。
「あい、大丈夫です。
ちょっとずつ小さく成ってるようです」
「そうか、そいつは良かったな」
「はい、本当にありがとうございます」
まあ、癌にも進行の早いタイプと遅いタイプがあるが桜は遅いタイプだったんだろう。
早いタイプだとしこりがはっきりわかるころには体質改善でなんとかなるわけでもないが、遅いタイプだとなんとかとかなる。
ガンのしこりや腫瘍と言うのは原因ではなく結果、つまり免疫が落ちて咳が出たり発熱するのと同じようなものだ。
梅毒がある程度進行するとできもの腫れ物が出来るのと同じだな。
そして梅毒菌や結核菌を保菌して一度症状が出たからと言ってからと言ってすべて死ぬわけではないのとも同じだし、梅毒の出来物を切り取っても意味は無いよな、まあそれと同じだ。
そしてアメリカのがん予防14カ条・プラス1の一つカビ毒で汚染されたものは食べないに対して今まで遊郭では古古米なんかを食っていたわけだからそりゃ癌になる可能性も増えるわな。
21世紀ではアメリカは癌になりにくくなる方法を広めて癌の羅患率を減らしたが、日本は癌になったらどうするかしかいわないから世界一癌に罹る可能性の高い国になってしまっていた。
癌の羅患数比率でもアメリカを追い抜き、死亡率ではもっと悪い数字になっているんだが、日本の病院や医学界はアメリカを見習うつもりはないらしい。
病気になったら治すのではなく病気にならないためにはどうするかを考えたほうがいいんだけど、それだと病院が儲からないからな。
さて、昨年と同じように大川では厄を乗せて川に流す形代流しや、灯籠流しが行われ、小さな船に載せられて流されていく形代や灯籠に向ってみな手を合わせている。
「父さん俺はうまくやってるぜ。
だから心配しないで安らかに眠ってくれよ」
「あなた、戒斗は本当立派にやっていますよ。
だから安心してくださいね」
見世の遊女やその他の者たちも昨年と同じように明暦の大火で旧吉原が全焼した時に死んだ同僚の遊女などの鎮魂を願って手を合わせて祈りを捧げている。
そして今年は大名花火が特に盛況で徳川御三家の尾張・紀州・水戸の花火は、それぞれその豪華さをきそっている。
「うむ、やはり水戸のものが一番だ」
「いやいや、尾張のものこそ大人気ですぞ」
「はは、一番は紀伊のものに決まっているではないですか」
うん、水戸や尾張、紀伊の若様や殿様たちの間に火花が散っているが、水戸も財政も少しは良くなったみたいだな。
もちろん縄に火薬を塗って様々な花の形にして楽しむ仕掛け花火に金魚や花などに加わって協賛している遊郭などの名前で炎が上がって皆の目を楽しませてる。
今年も水戸、尾張、紀伊、仙台の殿様たちに加えて館林や甲府、松代や会津の殿様も来ている。
真田信之と真田信政親子が花火を見ながら談笑しているのを見るとちと歴史が変わってきてるなと実感はするな。
オレンジ色の炎が江戸の夜を華やかに照らし、隅田川の河原に幔幕を張りめぐらせて、その中で、緋色の毛氈の敷かれた上に、晴れ着に着飾った遊女たちが仕掛け花火を見物しながら、連れてきた客に酒の酌をしたり踊ったり三味線や琴を弾いたり踊ったりして賑やかに楽しんでいる。
各藩の奥女中の女たちも楽しんでるが暑い中での警護の武士たちはやっぱり大変そうだ。
鈴蘭と茉莉花は親方と楽しそうに笑ってるし藤乃はあっちこちで引っ張りだこ。
菫や山茶花、楓なんかも客に囲まれて楽しそうにしている。
鎮魂はどうしたといわれそうでもあるが生きている人間が楽しそうにしてる方がいいと思うぜ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます