早速花鳥茶屋を営業するぜ
さて、俺は伊豆大島で色々手に入れて吉原に戻ってきた。
果樹や野菜のたぐいはとりあえずは自家菜園で育てるが、それなりに増えたらまた水戸の若様なり、尾張、紀伊、会津、甲府、館林の殿様なんかに献上して役に立ててもらおうと思うし、珍しい鳥や花は鳥小屋や鳥かごなどを作ってその中で飼う。
勿論頼むのは困ったときの権兵衛親方だ。
「三河屋さん、頼まれていた小屋や鳥かご出来ましたぜ」
権兵衛親分はきっちり仕上げてくれていた。
「おお、いつもながら惚れ惚れする腕前だな。
今回も謝礼は2両だ、またよろしくな」
権兵衛親分はしっかり小判2枚を受け取った。
「こちらこそ、また何かあったらよろしく頼みますわ」
そういって権兵衛親分は見習いと一緒に三河屋の方へ向かっていく。
「もう完全にお得意様だな」
そして俺は運ばせてきた鳥などを小屋に入れる。
「それにしてもお前さん、南蛮人に見つかったのは運が悪かったな」
俺は南蛮人から買ったドードーのつがいにそう言ってみる。
勿論ドードーが俺に答えることはないけどな。
ドードーは翼が退化して飛べないのに、歩く速度もよたよたと遅い。
ドードーは大きくなって飛べなくなった鳩だという話だが、寺なんかで沢山ウロウロしてるのんきな鳩を見て見るとなんとなく納得はするな。
食べ物は主に木の実や種などで性格はおとなしく、人に対しての警戒心もない。
実は人間に対して警戒心がない鳥は結構いたりするのだが更に飛べなく脚も遅いという鳥は江戸時代でも珍しいと思う、まあ、猫なんかがいる地域じゃ食われちまうからではあるんだろうけどな。
外見も美しいとも言えないが、結構愛嬌はあると思う。
そう言えば”最初のペンギン”オオウミガラスも同じような理由で絶滅してるんだっけ。
しかし、北極の沿岸に住むオオウミガラスを連れてくるのは難しいか。
主な食い物も魚だしな。
逆に孔雀は美しいが意外と気が強い。
孔雀は多少なら飛べるが飛行は得意ではなく、飛ぶ瞬間をみれるのは珍しいほどだ。
最も孔雀は足が早く毒蛇や蠍などを食べるのでインドでは孔雀明王としてありがたがられている。
性質としては鶏に近く、食べるものも鶏と同じでもいい。
ただし小屋は広めに作る必要はあるけどな。
具体的には屋根ついた小屋、動き回れる運動場、眠るためのとまり木や餌を入れるエサ箱、水を入れる水箱、産卵のための巣箱なんかも居るし、鶏と同じようにクジャクも砂浴びをするのが好きなので運動場はたっぷり砂を用意してやらないといけない。
野犬や野良猫に襲われないようにちゃんと周りを覆う必要もある。
「まあ、手間はかかるが可愛いやつだよな」
孔雀は雉の仲間なので狂暴なところもあるが案外人になれる面もある。
インコやオウムなんかは孔雀より小さい鳥かごで飼育することも出来るし、手に乗って甘えたりもするしほんとかわいいやつらだぜ。
その他にも鉢植えのバラや西洋蘭などの珍しくてきれいな花も見ながらのんびり茶を飲める場所だ。
そして鳥たちを鳥小屋や鳥かごに入れて配置し、花の咲いた植木鉢もおいて呼び込みにかかる。
最終的には竜胆に任すと竜胆が過労死しそうだし、誰か番頭新造の経験者に任せようと思う。
「さあ、異国の珍しい鳥や花が見れる花鳥茶屋だよ。
そこのお嬢さんちょっと見ていかないかい?」
通りがかった町娘が足を止めた。
「はあ、どんな鳥がいるのでしょう?」
俺は愛想よく言う。
「天竺からきた孔雀は綺麗だよ」
町娘は少し考えてから言った。
「じゃあ、ちょっと見ていこうかしら」
「入場料は16文だよ」
「あらやすいわね」
こんな感じでまずは若い町人のお嬢さんを茶屋に入れて反応を見る。
そして孔雀が見やすい場所の腰掛けに座らせる。
「あら綺麗な鳥ね、あれが孔雀?」
「ええ、そうです」
「たしかに珍しい鳥がいっぱいね」
俺は手乗りのセキセイインコを鳥かごから出した。
「こいつなんかは手に乗ってくれますよ」
「あらかわいいわね」
町娘にセキセイインコをた渡すとかなり気に入ったようだ。
「こいつに食わすエサ代に茶や茶菓子を頼んでもらえると有り難いんですが」
「じゃあ、お茶とお茶菓子を一式いただこうかした」
「へい、毎度あり」
その後町娘は心いくまで珍しい花鳥を堪能していった。
「楽しかったし、今度は家族で来ようと思うわ」
「ぜひお待ちしてます」
どうやら花鳥茶屋もうまく行きそうだな。
そして、大島から泊りがけの小見世の遊女たちも戻ってきた。
「いや、なかなかいいお客はんになりそうでありんすえ」
そういって彼女は金のネックレスを俺に見せた。
「朝方に帰る前に色々身の回りの世話をしたら帰り際にこれをくれたんですわ。
多分また来てくれって言ってたんだと思うんでやんすけどね。
くわしてくれた南蛮菓子もふわふわで甘ーいうまい菓子でやんしたな」
俺はウンウンと頷く。
「ああ、じゃあまたいってやるといいんじゃあねえか」
小見世の遊女も嬉しそうに言った。
「あい、ぜひ行かせておくんなんし」
大島に渡った遊女たちはみんなニコニコしていた。
南蛮人の水夫はそれなりに高給取りなので金払いも良く日本人女性は性格的にも外見的にも幼く見えるのか結構優しく対応してくれるはずなのだな。
しかし、俺の持ってる小見世だけだと全然人数が足りない。
なので、吉原の他の小見世に南蛮人相手はいい商売だと伝えて、一緒に大島へいく遊女を集めたら、案外賛同する小見世も出てきた。
無論南蛮人相手というのを断固拒否する店もあったが。
「よし、今度は合同で大島に渡るとするぜ」
「ああ、よろしく頼むぜ、惣名主」
こうして秋から冬にかけて大島に南蛮人がたくさんいる時は何件かの小見世の遊女がみんなで大島に渡って南蛮人水夫たちの夜や朝方の世話をすることになったわけだ。
まあ、朝方起きて世話をしてくれる女性がいるのはいいことだよな。
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