夜の裾を飛び出して


包まれたかのような暗闇で

触角のようなヘッドライトが進む先に触れている

黒は道の先をすっぽりと覆いつくし

世界を閉じこめている


どこに向かうのか?

どこに行けるのか?


疑問すらもバカバカしくなるほどに先は遠く果てない

頼りなく切り裂かれ、隔たれた数メートル。

止まらない車輪は静かに回る。

無心で、無言で、無感動に。


無数の部品の相互作用でガソリン燃やして走る姿は

仕組まれた細胞で儚く薄い羽を震わせて飛ぶ虫。


ただ走る。

無為に。

無意味に。


本能という意思だけで蠢く生き物。

時間がその終わりを告げるまで。


やがて夜が裾をひるがえせば

不意に隠されていた朝が見え始めた

それでも進もう


夜の裾から飛び出した羽虫は飛び続ける


光を求めて行けるところまで

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