固茹で卵の心

歳を経て、心は固くなっていった。


外殻は固く、でも中身は昔と同じドロドロとした半生で、心が動くたびに 胸の中で形を変えてうごめく


まるで中途半端に茹でられたゆで卵だ。


ハードボイルドに憧れた未熟のガキは、それが斜めに物事を見ていただけに気づけなかった。


そしてそれに気づいた時には心の外側は硬く、硬く、硬質化されていき、元のしなやかさを失っていた。


それでもその中身はいまだにグジュグジュと諦め悪く水気を残してそこにある。


それの何が悪いのか!


気恥ずかしさを振り払うように叫べども返す声は無い。


それでも構わないさ。


強がりだとしても、胸の底のそれが僅かに揺れるのなら。



固茹での卵はよく回ると言う


逆に中身が固まりきっていない卵は回転してもフラフラと回り、すぐに止まるそうだ。


決意、あるいは誓いの名の元にそうなることは良かれしと皆は言う。


だが、それが本当に正しいのだろうか?


半熟の卵は固茹でになることは出来るが、その逆は有り得ない皮肉。


全てを疑え。 他人も自分も。 言葉も態度も。


固定概念を揺らして不固定概念へ。


そして肯定。


取捨選択して疑念の熱を選択の情熱によって選別して


時代が求める何か皆が求める何かを区別して


捨てるそれらに一雫の愛情という名の餞別を。


君の心の中の黄身は硬すぎず、簡単に揺らがぬ半熟にしていつまでも半人前で。


そうあるべきか? あらざるべきか?


自分で考えれば良い。


ただ読んだ時に何かが揺れたのなら君はまだまだ固茹でにはなっていないことの証明だ。

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