ギシギシ。

ギシギシ。


ギシギシ。 ギシギシ。


骨の軋む音がする。


関節を繋いでいる靭帯。


それらを包む筋肉が呼応するように。


これは彼女の叫びだ。


彼女との逢瀬は週に一回と決めている。


多くても二回。


過去には出会えた喜びのままに毎日求めたものだが深くのめりこむほどに彼女が私を呼ぶ。


求める。


怖気が走るほどに。


私を忘れるなと叫ぶ。


その声はひどく大きくて強い、まるで切り刻まれるかのように。


そして声はやがて怨嗟へと変わりはて責め続けるものだから私はすっかりと参ってしまった。


良薬も男女の関係もまた情熱も、それが強烈であるからこそ、程良い関係を心がけなければ。


しかし声は止まない。


ギシギシ。


ギシギシ。


ギシギシ。


跡が残るどころか、その内側にある全てを握りつぶしてしまうような暴力にも似た力が叫ぶ。


内側からこみ上げる渇望と同義のそれ。


惚れた女の叫びに耐えながら、身体を丸めて、ただ一切が過ぎるのを待つ。


明日は日曜日。


もう少しだからね。


宥めるように私は狂おしく待ち続けるのだ。

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