第12話 何時の話をしているんだ、お前
「こっちで兄貴がしてくれる」
つっけんどんに
明彦さんは本殿と社務所の間に作られた飛び石の上を歩き、どうやら裏手側に向かっているようだ。それに続きながら私は周囲を見回す。
どこに続くんだろう。
普段こんなところまで入ることは無いので、なんとなく不安で胸がどきどきする。
ちらりと隣の清彦を見上げると、頬の赤みも引いて平然としていた。不思議なものでそんな表情を見ると、自分だけ怖がっているのもしゃくに障る。背筋を伸ばして私は顎を上げた。
そして。
不意に気づいて清彦を見上げる。
「あんた、私より背が高くなってるじゃない!」
「はぁ?」
盛大に呆れられたが、私はさっきの清彦のようにあんぐりと口が開いたままだ。この前の打合会ではずっと二人とも座ってたから気づかなかった。
小さかったのに、清彦……っ!
私のこと見上げてたのに! なによ、今は私が見上げているじゃない!
「悔しぃ‼」
「いつの話をしてるんだ、お前」
そう言ってせせら笑われた。
くそっ。腹立つ! 拳を握り、「くぅ」と思わず声を漏らして睨み上げると、びっくりしたように目を見開いて顔を背けられた。
「……なに?」
きょとんと尋ねると、顔を背けたままぼそぼそ何か言っているが聞き取れない。
「なによ」
耳まで真っ赤にして私を見ようとしない清彦にもう一度声をかけると、「うるせぇ! 俺を見るなっ」と怒鳴られた。なんじゃそりゃ。
私は肩を竦めて前を向く。
気づけば、明彦さんは立ち止まっていた。
私は慌てて明彦さんに近づく。その後を、ゆっくりと清彦がついてきてる気配があった。
「さて、
くるり、と明彦さんが振り返った。
明彦さんの後ろには、格子窓がはまった木製の祠のような物が見えた。暗くて中は窺い知れないが、とろりとした暗闇が祠の中には凝り、格子窓を通して溢れ出してきそうだ。
思わず背を逸らし、一歩後ずさると、ぽすりと背中に何かが当たる。振り返ると清彦が真後ろに立っていた。
首をねじるようにして清彦を見上げると、まだ薄く赤い顔を逸らされ、ぶっきらぼうに「前」と言われた。
言われるままに顔を前に向けると、神具机を両手で抱えた明彦さんが立っている。
「どれがいい?」
にっこり笑って明彦さんは私の前に、よいしょとばかりに神具机を置いた。それを見て私は戸惑う。
「……どれって……?」
思わず尋ねた。明彦さんは目を細め小さく頷く。
「使いやすそうなの、どれでも良いよ」
言われて再度促されるが。
机の上にあるのは。
どう見ても武器だ。
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