番外編 二人の盗賊(後編)


~ゼロの町~


ワンダは零回廊にて無限の宝を手に入れ、ゼロの町に戻っていた


ワンダ「けっこう暗くなっちまったな、今回はここで泊まるか」


今夜はゼロの町に泊まることにし宿屋を探し始めた 。





ワンダ「ん?」


ワンダの目線の先には白いコートにマフラーの銀髪の子供がいた。年齢は12くらいだろう。この時間に子供がひとりで出歩くことを不審に思った。しかし、なによりも…


ワンダ(ユユ……?)


数年前の自分の初めての友達にして貧しい人を救うという目標を持つきっかけとなった子供の幽霊 ユユと姿が似ていた

ワンダはその子供に話しかけることにした


ワンダ「おい、お前」


?「………僕?」


ワンダ「そうだ、お前だ。なんでこんな暗いなかひとりで出歩いてるんだ?」


?「なんだっていいじゃん……言ったってお兄さんにはなにもできないよ……」


ワンダ「そんなの聞いてみないとわかんねぇよ?これでも色んなダンジョンとか色々乗り越えてきた冒険者だぜ?お前……名前は?」


?「フラム……フラム・ルシル」


ワンダ「そうか、フラム…家に帰らないのか?」


フラム「帰りたく…ない」


ワンダ「なんでだ?家いやなのか?親は?」


フラム「あんなの…親じゃないよ…」


ワンダ「親じゃない?」


フラム「お父さんは人殺し、それを知っててもお母さんはお父さんの味方してる……人殺しの子供って虐められててもだれも助けてくれないんだ」


環境もユユとほぼ同じだ


ワンダ「そっか……ってなんだあれ?」


突然赤い光がうっすらと見えてきた。最初は薄く見えるだけの光がどんどんと明るくなっていく


ワンダ「これってもしかして……火事か?」


フラム「あそこ……僕のお家がある場所…」


ワンダ「なんだって!?とりあえず行くぞ!」


フラム「あっ」


ワンダはフラムの手を掴み、うっすらと見える赤い光の方向に向かって走っていった

赤い光に近づいていくにつれはっきりと見えてくる。そして、その場所につくと……家が燃えていた


町人「まだ中に人が!」


ワンダ「ちっ」


ワンダはすぐに家の中に飛び込んだ


ワンダ「あっつ」


中は既に火の海。中に残っている人が生き残っている確率もよくて五分五分といったところだろう


「はーっはっはっはっはっ!!!!」


不意にどこかから笑い声が聞こえてきた。ワンダは急いで笑い声が聞こえてきた方向に向かった。


ワンダ(嫌な予感がする)


笑い声が聞こえてきた部屋の扉が見えてきた。炎を避けつつ扉に向かい、勢いよく開けた


ワンダ「大丈夫か!」


扉の先にいたのはたいまつを持って高らかに笑う男性と座り込んでた女性の二人。


ワンダ「こいつが、この火をつけた犯人ってわけか」


ワンダはどうするか考えた。たいまつを持っている男性の方を先に無力化させるか、放置して女性のほうを助けるか。と、考えているとき、女性が話しかけてきた


女性「お願いします!私の夫を……殺してあげてください!」


ワンダ「なっ!?」


ワンダは驚愕した。この火のなかではいずれ死んでしまうだろうというのにわざわざ殺してくれと頼んだのだ


ワンダ「なにがあった?」


女性「夫は……悪霊に取り付かれたんです!夫は不意に人を殺してしまって…それで酷く後悔していたんです。それで心が弱ってるところに悪霊が…」


ワンダ「そうか……わかった」


ワンダは一歩踏み出した。


男性(悪「はっはっはっ…はっ?なんだ…おまえ?」


ワンダ「話してんのは悪霊のほうだな?なぜ燃やした?」


男性(悪「た…から……むげ……ん…………」


ワンダ「たから?むげん?無限の宝のことか?」


男性(悪「なぜ……おまえ…しっている…?……そうか……おまえ…とった………おれの……たから……」


ワンダ「お前の?違うだろ?宝箱の中身は取ったやつのもんだろ?」


男性(悪「ちが…う……たか…ら……お…れの……よこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせよこせヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセ」


ワンダ「ちっ、これはもう浄化できねぇな……消滅させるしかねぇ」


男性(悪「ヨコセェェェェェェェェ!!!!!」


男性がたいまつを持って襲いかかってきた

それをしゃがんでかわし、足払いをかけた。男性は体のバランスを崩し、その場に倒れた

ワンダは倒れた男性を中心に周囲に5本のナイフを刺し、腰から短剣を抜いた


ワンダ「…悪いな」


倒れた男性の心臓部分に短剣を突き立てた


ワンダ「悪しき魂よ、世界の理から外れた魂よ、我が誓いのもとに、黒き闇を葬り、消滅せん!“ソウル・エクステンション”」


5つのナイフと突き立てた短剣をもとに星型の魔方陣が展開し、光を放った。


男性(悪霊)「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ………………………………」


光が消えると男性が跡形もなく消えていた


女性「あの…夫は…?」


ワンダ「魂ごと消滅させた。既にこいつの魂は完全に乗っ取られていた。それは魂としての完全な死とも言える。こいつが死んだところで輪廻の輪についたところでこいつの魂は完全に悪霊のものとなる。ここから救うとするなら消滅させるしかないんだ…悪いな」


女性「いえ、それが…人殺しになってしまった、そしてたった一人の息子を愛せなかった夫の罰なんでしょう…」


ワンダ「お前はどうする?」


女性「私もここに残ります。それが夫を助けてあげられなかった、そして親のせいで息子が痛い目にあうのを恐れてなにもしなかった私の償いだから…。……最後に私の願いを聞いてくれませんか?」


ワンダ「…なんだ?」


女性「息子を…フラムのことをお願いできますか?夫は人殺しになってから人生が狂い私やフラムに暴力を振るうようになってしまった。人殺しの息子とフラムも虐められるようになってしまった。私達が愛するより、決別して別の人に愛してもらうほうがあの子は幸せになれるから…」


ワンダ「なに言ってんだ、実の親に愛してもらうことが一番の幸せに決まってる。虐めだってな、そいつが乗り越えなきゃならない壁のひとつだろ?それを支えて助けてやるのが家族の役目だろ?」


女性「そう…ね、……でも、どちらにせよもう遅いわ。あの子は完全に私たちを嫌っている。もう戻れないの、だからあの子のことをお願い。私達との縁を完全に絶って普通の人として幸せにしてあげて…」


ワンダ「ああ……わかった」


女性「そろそろ行かないと、家が崩れてしまいますよ」


ワンダは駆け出した。来たときよりも火が広がっており、脱出は難しいだろう。それでも走った、火を物ともせず出口まで全力で走った。走っていると、屋根の一部が落下してきた。


ワンダ「くっ、“錬成”!」


ワンダは大きな盾を錬成し、致命傷を防いだ。そしてまた走る、走っているうちに出口が見えてきた。


ワンダ「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


ワンダは勢いをつけて出口に飛び込んだ。そして、出口から出た瞬間大きな音を出しながら家は崩れていった。


「大丈夫ですか!?」


「よかった!生きてたんですね!」


「怪我はありませんか!?」


外に出た瞬間、周りの人たちが心配してくれた


ワンダ「ああ……大丈夫だ」




「あの……中の人は……?」


ワンダは静かに首を降った


「そう……ですか…………」






ワンダ「……………………せめて安らかに眠れ」






~~~~~~~~




雪の降る中、ワンダとフラムの二人は座って話していた


ワンダ「…なあフラム、俺と一緒に来ないか?」


フラム「えっ?」


ワンダ「お前、家も親も失っちまったからな。お前が一人でも生きていけるように俺が面倒見てやる。俺がお前の《帰る場所》になってやるよ」


フラム「…うん、ありがとうお兄さん!」


フラムは笑顔で言った


ワンダ「俺のことは親分と呼べ、お前の親代わりでもあるが、当分は師匠として色々教えてやらねぇといけないからな。師匠じゃなくて親分だぞ」


フラム「わかったよ親分」


ワンダ「あと名前も変えろ。殺人犯の息子とかそんなもんに囚われないように、少しでも早くお前の親のことを忘れられるようにな…」


フラム「じゃあ……つけて?」


ワンダ「そうだな………フールだ。俺とお前で面白おかしく生きていく、二人のワンダフルなコンビになれるように、そんな意味も込めてな……だからお前の名前は今からフールだ。俺とお前でワンダフルだ」


フラム「フール………フール……うん!わかったよ!僕は今日からフールだ!」


ワンダ「あぁ、……とりあえず明日から旅に出るんだから今日はもう宿に行ってゆっくり休むぞ」


フール(フラム)「わかったよ親分!……そういえばなんで師匠はだめなの?」


ワンダ「そ、それはなんでもいいだろ///!……とにかく行くぞ!」


そう言って宿に向かって歩きだした


フール「あっ、まって親分!」


その後ろをフールがついていった









こうしてワンダとフールのワンダフルなコンビが結成された


ーーー


ワンダ「……そうだな」


フール「冗談ですよ、今の僕がいるのは親分のおかげなんですから」


ワンダ「…そう言ってくれると助かる」


フール「あれ?どうしたんですか?いつものばかみたいなテンションはどこにいったんですか?」


ワンダ「おいこら!もうちょっとまともになれや!…まったく、そんなばかみたいなやつについてきてんのはどこのどいつだよ」


フール「そりゃあ僕の今の家族は親分しかいないんですからついていくのは当然じゃないですか、あとこんな僕に育てたのも親分ですよ」


ワンダ「くっ、否定したいけど否定できないのがむかつくな!…まあいいや、とりあえず金も手にははいったし旅に戻るぞ」


フール「はい、どこまでもお供しますよ親分」


こうして表は盗賊のトレジャーハンター達の……ゴーストキラーで貧困の救済者のコンビの旅は続いていく・・・。





























フール「あれ?親分あれって」


ワンダ「魔物の群れがボックの町に一直線に向かってやがるな」


フール「どうしますか?」


ワンダ「もちろん行くに決まってんだろ」


フール「了解です、親分」フフッ




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転生した世界はまともじゃない K.K @kk64

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る