番外編 二人の盗賊(中編)
ユユと別れたあの日、ワンダは自分やユユみたいなこども達に手を差し伸べることを決意した。金がなく、また、親に愛されないこどもを救うことにした。しかし、ワンダはお金もなにもない。
ワンダ「これが虹のオーブか、魔力は感じないし外れだな。まあ、貴族どもには高く売れるか」
ワンダはトレジャーハンターになった。ダンジョンなどでお宝を手にいれ、貴族に売るなど、一番稼げる方法でお宝を売ってお金を稼いでいた。魔力のこもったものを除いて。
ワンダは鋼属性以外に適性がないこともあり、錬成、強化など鋼属性のことはかなり研究していた。
とある日のこと
~カイの町~
ワンダ「ゼロの町の近くの零回廊とかいうところに無限の宝があるらしいからな、トレジャーハンターとしては行くしかないな」
ガシャァァン
「君!」
ワンダ「ん?」
「待て!」ガシッ
「いやっ!放して!」
「それはうちの商品だろう?万引きを許すわけにはいかないんだ!」
ワンダ「どうしたんだ?」
店員「あなたには関係ないです!」
ワンダ「いや、関係はある。俺はその子の知り合いだからな。」
店員「関係があるとしてもっ、あなたになにが出切るんですか?まさか、この子のかわりにお金を払ってくれるとでも言うんですか?」
ワンダ「そうだな、とりあえずこれで手を打ってくれや」
そういってワンダは5000ゼルを手渡した
店員「なっ!?こんなに……こ、今回だけは見逃してあげます!」
ワンダ「大丈夫か?」
少女「うん、ありがとうおにいちゃん」
ワンダ「なんで万引きをしたんだ?」
少女「うぅ…」
ワンダ「怒らないし説教もしないから言ってみろ。俺も昔は万引きとかしてたんだぜ。気持ちはわかるさ」
少女「あ…あのね、パパもママもいなくなっちゃってね、それでおなかすいたから…」
ワンダ「そっか、でもな、万引きはいけないぞ?捕まったら痛いことされるかもしれねぇからな。これやるよ」
少女に3000ゼルを渡した
少女「こんなにお金貰っていいの?」
ワンダ「あぁ、俺はなお前みたいな貧しいやつを助けるために旅してんだ。断られたらこっちが困る」
少女「うん、ありがとう!」
少女は笑顔で感謝の言葉を言った
ワンダ「じゃあ気をつけてな、あ、あとお守りもやるよ」
少女「お守り?」
ワンダ「あぁ、それがあれば悪いやつから守ってくれるんだぞ」
少女「ほんと!?」
ワンダ「ああ、ほんとだ」
そう言って退魔の護符を渡した
ワンダ「じゃあ、俺はもう行くわ、じゃあな」
振り向いて港の方に向かおうとすると
少女「ありがとうおにいちゃん!」
満面の笑みで感謝された
ワンダ「……あぁ」
ワンダ(いつまでたってもこんな子供は減らない、金持ってるだけの貴族は役に立たねえし)
ワンダは港に向かうことにした
船長「船に乗りたいのか?」
ワンダ「あぁ、ゼロの町に行きたいんだ」
船長「いいだろう、連れてってやる」
ワンダ「助かるぜ」
船長「だが気をつけろよ?あそこは幽霊がでるとかいう噂もあるからな」
ワンダ「幽霊退治は得意分野だ」
船長「なら安心だな」
こうして船に乗り、ゼロの町に向かった
~ゼロの町~
船長「ついたぜ」
ワンダ「ありがとな、代金は?」
船長「3ゼルだ」
ワンダ「ほいよ」
きっちり3ゼルを払い船を降りた
ワンダ「さて、零回廊に行くか、幽霊退治は後だな」
ワンダは町を出て零回廊に向かった
~零回廊~
ワンダ「ここが零回廊か」
見た目は小さな遺跡、恐らく地下に続いているのだろう。ワンダは零回廊に入っていった。
ワンダ「思ったより狭いな」
中は一本道で特に気になるようなものは一切なかった
ワンダ「これずっとこの同じ道が続くのか?」
少し歩いたが分かれ道などもなく同じ景色の一本道が続いていた
歩いていると突然魔物が現れた
ワンダ「ゴブリンか!」
現れたのは3匹のゴブリン、二匹はこん棒、一匹は短剣を持っている
こん棒を持っているゴブリン二匹が殴りかかってきた。
ワンダ「よっと」
それをスライディングでかわし、鋼魔法で短剣を2本生成し、ゴブリンの首に一本ずつ刺した。その間に短剣を持っているゴブリンが背後から襲いかかってきた。
ワンダ「おらっ!」
即座に足を払い、倒れたゴブリンの脳天を突き刺した。
ワンダ「弱いな」
ワンダは先に進んだ。さらに進むとまたもや魔物が現れた。
ワンダ「次はスライムだな」
魔物は十数匹いるスライムだった。スライムが襲いかかってくる。飛びかかってきたスライムを回し蹴りで蹴り飛ばすがすぐに再生した。
ワンダ「めんどくせえな」
スライムには核があり、その核を壊さなければスライムはすぐに再生してしまうのだ。
ワンダ「“錬成”」
ワンダは複数の針を錬成した
ワンダ「“強化”」
さらに針を強化した
ワンダ「くらえ!」
ワンダは針をスライムに向けて飛ばした。針はスライム達の核を的確に貫き全滅させた
ワンダ「ふぅ」
スライムを倒し、さらに進むと扉を発見した。
扉を開けると目の前に宝箱がぽつんとあるだけで他にはなにもない真っ白な部屋だった
ワンダ「なんだよこの部屋…宝箱しかねえじゃねえか。しかも短すぎだろこのダンジョン…ほんとにこんなのに無限の宝とやらがあんのか?」
ワンダは警戒しながら宝箱を開けた・・・と同時に警報が鳴り響いた。
ワンダ「なんだ!?」
辺りを霧が包み、次々と魔物が現れる。
ワンダ「ちっ、やっぱ罠かよ」
霧が晴れた頃には大量のゴブリンやスライムに囲まれていた
ワンダ「やってやろうじゃねえか!」
大量の魔物達が一斉に襲いかかってきた
ゴブリンが棍棒で殴りかかってくるがそれをかわし頭に即座に錬成したナイフを刺す。さらにスライムが数匹飛びかかってくる。針を投げ、的確に核を貫いていく。このような感じに十数分と、二十数分という長い時間戦い続けた
ワンダ「はぁ…はぁ…、くそっ…、こいつら…いつまでたっても全滅する気配がねぇ」
ワンダ(なにかここを突破する方法はないか?)
ワンダは冷静になって魔物の攻撃をかわしつつ辺りを見渡した。
ワンダ(戦いの途中、隠しスイッチみたいなもんがないか探してみたが壁にも床にもそんなものは見つからなかった)
隠し扉のスイッチらしきものどころか違和感のある場所すらなかった
ワンダ(入り口の扉は閉まったままだな)
魔物と戦っている間に入ってきたはずの入り口が閉まっていることに気づいた。
普通に考えれば詰みの状況だ
ワンダ(考えろ!他に何がある?)
ここにあるのは真っ白な部屋に宝箱、そしてゴブリンやスライムの群れのみ
ワンダ(ん?宝箱?)
ワンダはふと思い付いた。宝箱になにかあるんじゃないかと。
ただ、宝箱を調べたときにはなにもなかった。中にもなにもない。普通に考えればただのトラップを発動させるためのオブジェクト。
ワンダ(宝箱は固定されている…だが、隠しスイッチ壁にも床にもないとなればあとは宝箱…壊してみるか)
ワンダは短剣に魔力を込めて宝箱に攻撃した。しかし、宝箱は破壊できなかった
ワンダ「くそっ、だめか」
もう一度攻撃するも弾かれるだけだった。宝箱に夢中になっていたワンダは後ろからゴブリンに殴られた
ワンダ「ぐっ…」
ワンダ(くそっ、どうすりゃいい?)
ゴブリンの攻撃をかわしながら考えた
考えているうちにゴブリンに囲まれていた。
ワンダ「げっ…っ“ニードルボム”!」
とげとげの球体をゴブリンに投げつけ、当たると同時に数百もの針が飛び散った。
ワンダ(そういえば宝箱って確か特殊な金属でできてんだよな…ならやってみるっきゃねぇ!どっちにしろこのままやってても疲れはてて死ぬだけだ!)
ワンダは宝箱に手を触れ唱えた
ワンダ「“分解”」
そう、ワンダが思い付いたのは宝箱を分解するということ。宝箱は魔物の触れることができない特殊な金属でできている。全ての宝箱がそうではないが金属でできていることは同じ、鋼属性の特徴は錬成と強化だが、根本的なところを見るとなにもないところから武器を作り出す、無から金属を作るということ、つまり無から金属が作れるならその逆もできるのではないかと考えた。
宝箱は粒子となり欠片も残さず消えた。そして、宝箱があったところにはスイッチらしきものがあった。
ワンダ「よっしゃ!ビンゴだぜ!」
ワンダはなんの躊躇いもなくスイッチを押した。押した瞬間辺りは白い光に包まれた。
目を覚ますとそこはなにもない一本道だった。
一瞬入り口に戻されたかとも思ったが来るときの道よりも明らかに綺麗だった。ワンダは一本道を進んでいった。
少し歩くと突き当たりに宝箱があった。
ワンダ「ま、また罠とかじゃねぇよな?」
ワンダは恐る恐る宝箱を開けた
宝箱を開けた瞬間、ワンダの中に白い何かが入ってきた。
ワンダ「うわっ!」
何かが入ってきたが特に変わったところもなかったので宝箱の中身を調べることにした。
宝箱に入っていたのは一枚の紙。
『《おめでとう!!》
君は試練を突破した。そんな君には僕の最高な能力を君に託そう!
ここにたどり着くには宝箱の仕掛けを見破る頭脳と実行できるほどの能力がいる
あの宝箱本体は絶対壊れないようにしてある、だがそれを破るなら分解してしまえばいい。簡単に言っているように聞こえるが簡単じゃない。鋼属性の根本的なことを知らなければ金属を分解するなんてこと出来るわけがないからだ。ほとんどの人は魔力を使って剣とかを作り出す、ここまでしか理解できていない。確かにこれでも錬成はできる。だが、細かく言うと魔力により地面の砂などを砂鉄に変換させ、さらに本物の鉄に近づけるために細かいところまで結合させている。ここまで理解していればもっと高性能な武器を錬成できるし、君がここに来たときのように金属を分解することもできる。あの宝箱は特殊な金属でできててね、このことを理解していても簡単には分解できないようになっている。分解できるのは鋼属性についてそれなりに熟知していて細かい分解もできる実力者だけ。そんな君にこの能力を使って欲しい。僕はこの能力で沢山の人を殺めてしまった。本当はわかってたんだ…この力は人を傷つけるためにあるんじゃないんだって。確かに戦争とかでは重宝されるかもしれない、でも僕はこの能力を助けるために使いたかった。でも、運命はそれを許してくれない。ソビの町の人々がゾンビとなってしまい、僕にはそれをどうにかする力はなかった。僕にできたのは殺してあげることだけだった。だから君には正しくこの能力を使って欲しい。能力の名前は「無限錬成」武器を錬成するときの魔力が格段に減少し、同時に錬成できる数も増える。これを誰かのために使ってくれることを祈っているよ
矢口 鉄也 』
ワンダ「無限錬成…これが……無限の宝……」
ドン……ドン……
後ろから足音が聞こえてきた
現れたのはアークゴブリンだ
ワンダ「ちょうどいい、実験台になってもらおうか!“無限錬成”」
無限錬成を使うと瞬く間にアークゴブリンの周囲を百を越えるナイフが囲んだ
そして指をならす……
指をならした瞬間ナイフが飛び、アークゴブリンを次々と刺していった。
ワンダ「すげぇ……っ…さっき殴られた頭がいてぇ、さっさと帰るか」
こうしてワンダは無限の宝「無限錬成」を手に入れた
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