第3話夏火の非日常(1)
4LDKのこの広い家は1人では空虚過ぎる。
メンバーが居なくなるとさっきまでの騒がしさと相まって静けさが不気味だ。
とりあえず明日UPする動画は編集したし…さて、22時かぁ…。
そう言えばお腹空いたな。
俺は冷蔵庫を開ける。
「何もねぇ…」
たまにみぃやふゆこが、女子力アピの為か料理を作って冷蔵庫に入れておいてくれたりするんだが、それは昨日食べ終えたんだっけ…
他何か無いかとキッチンを漁るも何もない。
たまにアキとかが、お菓子を忘れて帰ったりするのだが、今日はそれもない。
「はぁ…」
思わずため息が出た。
しょうがない買いに行くか。
こうして俺は近くのコンビニに食べ物を買いに行く事にした。
うちは、ちょっと特殊なマンションで1階のエントランスに警備員が何人か居る。
エントランスのカウンターには、受付嬢みたいな係員の人も居て、所謂凄い所なのだ。
結構有名人とかが住んでるらしくて、そんなマンションだ。
お互い不干渉を暗黙の了解にしてるので、ご近所付き合いみたいなのは無いが、この前みぃが俳優の誰々が居たとか何とか騒いでいたっけ。
なんで、こんなマンションに住んでるのかと言うと単純に有名になり過ぎたって言うのと以前住んでいた家の住所がバレてしまい色々あったから
思い切ってここに住んでみたって感じだ。
ピンポーン
そんな音が鳴りエレベーターの扉が開く。
「おや、戦刄君じゃない!」
先程説明したカウンターに居る受付嬢みたいな係員さんが話しかけてきた。
「あれ?この時間珍しいですね
「明日休み貰いたかったから
「彼氏とデートですか?」
俺は少しにやりとしながら言った
「違うって〜私彼氏居ないの知ってるでしょ〜。明日友達が誕生日だからサプライズ旅行的なのを計画してるのよ」
「それはきっと友達も喜びますね」
「まあ、私が一番楽しみにしてるんだけどね」
と、ケタケタと楽しそうに笑う音千花さん
「じゃあ、飯買いに行ってきます」
「気をつけてね〜」
こうして入口の自動ドア付近で構えてる警備員の横を通ってマンションを出る。
音千花さんは、一見優しそうなお姉さんに見えるのだが…確か年齢は24とかだし。
実は元警察官で、かなり腕は立つらしい。
流石に時刻は22時を過ぎていて外は真っ暗だ。
平日の夜だから人もそんなに居ない。
いや、もうちょっと賑やかな場所に行けば居るんだろうけど。
さっさと飯買って帰るか。
と、思っていたのだが……
「誰か!誰か来てくれ!
何やら声が聞こえる。
けんま??
声の方向からすると、遠くない場所だ。
俺は興味本位にそこに向かう事にした。
そこは、人通りの少ない場所で工事現場の看板が置いてあり足場が組まれていた。
どうやら新築のようで、周りにも何個か同じように足場とかが組まれていて人が寄り付かない場所だ。
そこに1人の人が倒れていて
「誰か…助けてくれ…」
と助けを求めていて、更にその先には…
「なんだあれ…」
右手が光っていて、その光が剣のように伸びていた。
「き、きみ!こ、これを使って助けてくれ!」
倒れてる男が俺に気付いて声をかけて来た。
俺は、すぐさま状況を理解し何かを渡そうと伸ばしてる腕に近寄った。
「それを受け取っては駄目だ!」
右手を光らせた不審者がそう言ってくるも状況から見てこの倒れてる人を傷付けたのは、この右手を光らせた不審者だろ?
なら悪はあっちな訳だ!そんな奴の言う事聞く訳には行かない。
そう思い俺は、すぐさま倒れてる人に駆け寄り迷う事なくその人が渡そうとしてる物を受け取った。
「これは…?」
それは楕円…と言うんだっけ。丸を少し伸ばした様な形をした物だった。
大きさは手の中に収まるほどだ。
「それは…ムーンギア…グッ!」
胸の傷が痛むのか辛そうだ。
「おい!大丈夫か?」
「大丈夫だ…それを握ってウェポンギア展開と叫ぶんだ!そしたら剣魔と戦える力が……」
「おい!おい!」
体を揺さぶっても返事がない。
まさか…死んだ…?
「ムーンギアはとても危険な物だ!それを使ってはいけない!」
剣魔と呼ばれた人物が声を荒げる。
「うるせぇ!人殺しの言う事なんか聞くかよ!」
「人殺し!?僕がっ!?」
「とぼけやがって!」
確かムーンギアを握るんだったな…
「ウェポンギア展開!!」
その刹那、俺は光に包まれる。
そして気付いた時には、両拳に黒色のレザーグローブ。
右手の方が中指部分が剥き出しになってて、左手は甲の部分に十字架が描かれている。
腰には二つの刀…脇差?が具現化された。
「なんだこれは…」
あまりの驚きに声を出してしまう。
「それがウェポンギアだよ」
剣魔がそう言う。
なんか体の底から力が湧いてくるような…。
そう思い腕を回してみる。
うん、体が軽いのが分かる。
これもウェポンギアの影響なのか…?
「僕の名前は
「いきなり何のつもりだ!?」
「君と話がしたいんだ!」
「はぁ?人殺しと話す舌は持ち合わせていねえよ!」
そう言って俺は剣魔に向かって走り出す。
うっひゃあーやっぱり体が軽い!
気付けばもう目と鼻の先に剣魔がいた。
「だありゃああああ!!!」
俺は右の握り拳を剣魔の顔面目掛けて殴りかかる。
キイィィィィィン
剣魔の右の光の剣と俺の拳がぶつかる。
「僕は君と争うつもりはない!」
「この期に及んで何言ってんだお前?」
「クッ!」
剣魔が後ろに飛ぶ。
「君は悪魔に騙されている!」
剣魔がそう叫ぶ。
「悪魔はお前だろ?剣魔って言うぐらいだし…何より人殺しだ!」
「違う!僕は人殺しなんかじゃ…」
「うるさい!」
俺は離れた剣魔に近づいて行く。
「だあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
そして右拳と左拳を交互に突き穿つ!
キィン!キィン!キィン!
俺の拳は全て剣魔の剣に防がれる。
「くそ!一発ぐらい当たれっての!」
キィンキィンキィン
それでも当たる気配がしない。
「そのまま惹きつけておいて!」
そう声が響いたと同時に
シュッッ!!!
剣魔の左足を光の剣…いや、矢が貫く。
「くっ!」
突然の事で、剣魔は体勢を崩した。
「今だ!」
俺は体勢の崩れた剣魔目掛けて拳を振るう。
ドカアアァァァ!!!
俺の拳は剣魔の顔面に綺麗に入り剣魔は吹っ飛んで行った。
「だとしても!!!」
そんな剣魔が空中で体勢を整え着地と同時にその場から消えて行った。
「あいつ!」
俺に吹き飛ばされたのを利用して逃げた…だと?
渾身のパンチが全然効いてねえって事かよ!
「くそっ!」
「まあ、あの剣魔を退けただけマシって考えた方が良いわ」
先程の声の主が闇から現れた。
「そもそもお前が!」
「って……くさ君?」
「は?お前誰だよ」
こうして夏火の非日常が幕を開けた。
ウェポンギア2〜月の形(仮)〜 @NIAzRON
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