第2話夏火の日常(2)
「次回、夕闇に塗りつぶされた恋。最終話【朝日が眩しい】」
カタカタカタカタ、とパソコンを弄り
「よし、夕恋編集終わり!」
と、夏火が呟く。
「あとは明日の19時にセットして……はい、完了!」
「とりあえずお疲れ様」
綺麗な長い黒髪で胸がデカイ女の子が、そう声をかけた。
「あとは最終話だけだ。ふゆこの方はボイトレ捗ってるか?」
「大丈夫だよ!ハルも居るし!」
落ち着いた雰囲気や見た目からお姉さんの様に見えるが、夏火達と同じ22歳だ。
「初のMフェスだからな。ふゆこの頑張りでエフェクターのファンが更に増えるって事を忘れずにな」
music festival…略してMフェスは、生放送で送る音楽番組だ。
「それはそうと何で僕も出るの?」
エフェクターのリーダーのアキとは違ったファン層を持っている。
「何でって…ふゆこ1人だけ送り出すのか?」
「違うよ!そーじゃなくて!普通は、ほらリーダーのアキとかコミュ力高いみぃとか適役が居るじゃん?何で僕なのかなって…」
「あー、それ確かに気になるかも!」
みぃが話に入る。
夏火には、ある考えがあった。
でもその考えを今言うのは絶対に違うと分かっているので、言葉を考える。
そして出た言葉が
「ハルとふゆこのペアならテレビ映えするし、まあ色々都合が良いんだよ」
「またそれ〜〜??都合が良いとしか言わないよね最近」
呆れながらみぃが言う。
「色々考えがあんの!」
すぐさま夏火はそう言った。
「ところで夏火、今後の予定は?」
エフェクターの中で一番イケメンと言う理由とコミュ力も備えてある事でリーダーに任命された。
基本的に夏火が今後の方針等決めるので、リーダーとしての動きはあまりしない。
趣味はギター。
「うん、5人集まったし今後の予定の話をしよう」
こうして、夏火・秋斗・春・冬子・美衣子の5人はテーブルを囲むようにソファに座り集まった。
「皆も知っての通り、夕恋は最終回を迎えた。もう撮ってあるから編集して金曜日にアップすれば終わりだ」
「次はどんなの撮るんだ?」
アキが質問する。
「うん、その事だけど、、今日は5月15日の火曜日だ。夕恋の最終話が上がるのが5月18日の金曜日。俺達エフェクターは週3日投稿だからな」
「もう次のドラマの脚本は出来てはあるんだけど、エフェクターを更に飛躍させる為に新しいチャレンジをしたいと思ってる」
「新しいチャレンジ…?」
ハルが不思議そうに呟いた。
「そう!来週の月曜…つまり5月21日から31日まで毎日投稿をしようと思う!」
「「「「毎日投稿!!!?!??」」」」
4人は驚きを隠せない表情で、そう言った。
「ドラマを毎日投稿する訳じゃない。撮影だったり撮影場所の許可だったり編集だったりで、絶対に毎日は無理だからな。なら何をするかと言うと……メントスコーラだ!」
「ちょ、ちょっと待てよ。メントスコーラって他の配信者さん達がやってるし、何よりブームが過ぎてる。絶対にウケないぞ?」
アキが言った。
「いや、ごめん。メントスコーラってのは一種の表現みたいなもんで、メントスコーラをやるって事じゃない。言うなればミーチューバーらしい事をしたいって事さ」
「例えば?」
ふゆこが聞いた
「例えばさぁー、商品紹介とか何かの検証とかゲーム実況とかドッキリとか色々あるだろ?」
「なるほどねぇ」
みぃが納得した。
「因みに最初の動画はもう決まってる。俺達の自己紹介動画だ」
「そう言えば、ちゃんとした自己紹介ってしてなかったわね」
ふゆこが納得した。
「ついでに何か最近ハマってる物とか買った物とかも紹介する予定だから、まあその辺は後で説明する」
「一番気になるのは、なんでこのタイミングで?って所だろうからちゃんと説明するよ」
4人は夏火の言葉に耳を傾ける。
「まず、5月18日にふゆことハルのMフェス出演が決まってる。そしてその日は、さっきも言ったが夕恋の最終話がアップされる日だ。これは意図的に合わせた」
「なのでMフェスが終わる20時に夕恋最終話をアップする。そうなれば、テレビ出演した事によって出来た新しいファンが見てくれる可能性が高い。つまり一番動画が再生されると予想出来るんだ」
「そこで、その最終話の動画の最後に毎日投稿するよ、と説明入れたらどーなると思う?しかも毎日投稿始めるのに土曜と日曜の二日間空く状態だ」
「なるほど…つまり新しく付いたファンは動画を振り返れるから新しいファンもすぐに取り込みやすくなるって事?」
ふゆこが言った。
「まあ、そゆ事。新しいファンを獲得しながら従来のファンにも飽きられない為に新しいチャレンジをするのにピッタリなタイミングな訳」
4人は納得をするしかなかった。
それと同時にそこまで先を見通してる事に驚きもあった。
「更にまだ秘密兵器を用意してるが、それは土曜日かMフェスが終わってぐらいに言うよ。とりあえず今は21日から31日までの10日間を乗り切るためのネタを考えよう」
「その前にホーミーからイベントの参加依頼来てるけどどーする?」
ホーミー……正式名称HOME WEEKは、夏火達エフェクターが所属してるMeTubeの事務所の事だ。
ドラマの場所の確保だったり撮影だったり色々な事をサポートしてもらってる。
元々小さい事務所だったが、エフェクターの活躍や他の所属クリエイターの活躍でMeTube界では有名な事務所だ。
「そー言えば6月中旬は毎年恒例のホーミーイベントがあったな」
「なんだかんだで私達参加したの最初の方だけで最近は全然参加してなかったよねー」
みぃが言った。
「今年は全員参加しよう!」
「そんな簡単に決めていいのか?」
アキが質問した
「今まではドラマ撮ってたから予定変えれなかったけど、今回はドラマ完結してるしな」
「でも6月から新しいのやるんでしょ?」
みぃが聞いた。
「大丈夫だろ。その日撮影被らないように調整すれば。てか、これはチャンスなんだ。絶対に皆参加だ!!!」
「動画以外で僕達5人が集まるの初めてだよね?」
ハルが嬉しそうに言う
「あぁ!小さいイベントや動画での企業のコラボなんかは2〜3人が主だったからな。まあ、そう言う風に調整してたんだけど」
「5人集まるのを珍しい事にしたいって前々から言ってたもんね!それが今年のホーミーのイベントで解禁するとは思わなかったけど」
みぃが言った。
「完璧なタイミングさ。新しいファンも取り込んだエフェクターがイベントで5人揃うんだぞ。これは別のクリエイターのファンも吸収出来るぞ。18日の動画で、この報告もしよう!」
「あんなに目を輝かせた夏火見るの久々かも…」
みぃ達は、夏火のノリノリっぷりに若干引いていた。
「とりあえずまだ5日程あるから木曜日ぐらいにネタ会議だ」
「分かった!色々考えとくね!」
「それと、自己紹介の動画は木曜に撮るから最近ハマってる物とか買った物とか何かオススメのを、2つ以上持ってくる事!」
「おっけー」
「最後にハルは気になってるゲームのアプリだったりソフトだったりの一覧を作ってきてくれ」
「え?分かった!」
こうして夏火の一日は過ぎようとしていた。
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