羅守國幻想

安良巻祐介

 

 トオノと名乗る人物が僕の留守に訪ねてきて、羅守協会国域観光案内というのを妻へ押し付けるようにして置いていった。

 一体全体見たことも聞いたこともない場所のパンフレットであったが、なぜか奇妙なデジャビュを覚えるので地図のところを開いて部屋の机の上の壁に飾っておいた。

 そんなことも忘れて日々を過ごすうち、やがて冬が過ぎ、春が来て、窓から一枚、二枚、舞い込んできた蝶が色とりどりに、壁の地図の網目の上に重なって、未発見種の花のようなかたちで死んでいた。

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羅守國幻想 安良巻祐介 @aramaki88

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