#76 肉味噌と卵焼きで朝ご飯と、結婚パーティメニュー決定
さて、朝である。何を作ろうか。壱はダイニングで腕を組んで考える。とりあえず確実に使うであろう
やがて考えが
まずは厨房へ。冷蔵庫から豚肉と卵、棚からブロッコリーとじゃがいも、玉ねぎと唐辛子を出す。
2階のキッチンに戻ると、まずは鍋に湯を沸かす。そして米も炊き始める。
続けてブロッコリーの
茹でている間にじゃがいもの皮を
ブロッコリーが綺麗な緑になり、ほぼ茹で上がったので、ザルに丘上げしておく。後は余熱で火が通る。
米の鍋が沸いたので、弱火に落とす。
唐辛子と玉ねぎは
次に昆布の鍋を火に掛ける。湧くまでの間に
沸いたら鰹節を入れて火を止め、沈むのを待つ。
その間に卵を割り解して、塩で味を付けておく。
鰹節が沈み切ったので、出来た出汁を別の鍋に移す。そこに水に
次にフライパンを出し、火に掛けてオリーブオイルを引き、卵を焼いて行く。
それを卵液が無くなるまで繰り返したら、出来たものをまな板に上げておく。
お次は豚肉である。出来る限り薄く切り、それを今度は細く。そして細かく、最終的には包丁を2本使って叩いて行く。
ミンチが出来上がる頃に、米が炊き上がったので、解して
さて、新たなフライパンを弱火に掛け、オリーブオイルを引く。そこで唐辛子をじんわりと炒める。
そこに玉ねぎを入れて、透き通るまで炒たら、豚のミンチ肉を加え、パラパラになる様に炒める。そこに味付けは赤味噌と砂糖。
余熱で火が通り、
焼いた卵を切り、皿に盛る。
鍋のじゃがいもに火が通っているので、味噌を溶かす。
そのタイミングで、サユリと茂造が起きて来た。
「おはようのう」
「おはようカピ」
「おはよう。もう出来るよー」
「ふむふむ、ありがとうのう。では支度して来るからの」
茂造は洗面所に向かい、壱はブロッコリに炒めた豚ミンチを掛ける。
出汁殻と味噌で作ったものは小皿に盛り。
汁物、そして白米をスープボウルに、サユリの分はサラダボウルによそい、全てをテーブルへ。
サユリは既にテーブル上でスタンバイ。
ブロッコリの肉味噌掛け、卵焼き、じゃがいもの味噌汁、
肉味噌が多めなのでボリュームが不足する事は無いと思うが、やや淡白な気もするか。
いやいや、朝食なのだから。最近しっかりしたものを作っていたので、朝ご飯だと言う事を忘れそうになっていた。
茂造ももう若くは無い。あまり重くならない様にしなければ。
さて、茂造が戻って来て、テーブルに着いた。
「では、早速いただくとしようかの」
「いただくカピ」
「はい、いただきます」
まずは味噌汁。ずずっと
卵焼きはいつもの塩味。ふんわりと柔らかく巻けている。やはり中がやや半熟状態が美味しい。
白米に佃煮を乗せて、頬張る。毎日同じ味付けで白米を食べているが、飽きる気配が一向に無い。不思議なものだ。
さて、ブロッコリの肉味噌掛け。肉味噌は巧く出来ているだろうか。
ブロッコリに肉味噌をたっぷりと絡ませて、口に運ぶ。
旨い!
この肉味噌はいろいろなものに合いそうだ。中華麺はかん水が無いので作れないが、今度うどんに掛けてみよう。
さて、気になるのはサユリと茂造の反応であるが。
ふたりとも、肉味噌をたっぷりと付けたブロッコリを、もりもりと食べていた。
「どうだろ、肉味噌」
「肉味噌と言うのかの? これは旨いソースじゃの。ピリッと辛みもあっての。他の野菜にも合いそうじゃ」
「合うよ。うどんとかにも合うよ。今度作るね」
「それは楽しみじゃのう」
茂造は嬉しそうに頬を綻ばせる。サユリも夢中になっていた。
「これは良い味カピ。また作るカピ。他のものとも食べてみたいカピ」
「きゃべつとかとも合うよね。でも先にうどんね。俺が食べたいからなんだけど」
「期待しているカピ」
サユリは言いながら、口を動かし続けた。
食堂の昼営業が終わり、休憩時間。壱は部屋に戻ると、デスクの上に出しておいた、結婚パーティ用メニューのレシピを取り、ダイニングにて紅茶で一息中の茂造に渡した。
「昨日言ってたレシピ。どうかな、難しそう?」
「ふむ」
茂造は言うと、真剣な表情でレシピを読む。じっくりと時間を掛けて。
その間に、壱は自分の
サユリがサラダボウルに作られたミルク珈琲を
「成る程成る程。確かにこれじゃったら、儂らでも出来そうじゃ」
「でしょ? 俺だってそんな凝ったの作れる訳じゃ無いから、俺基準で作れると思うものをピックアップしたもん。だから大丈夫だよ」
壱は少し得意げになってしまう。と同時に安心した。大丈夫だとは思っていたが、やはり昨日の茂造の様子を見て、少し不安もあったのだ。
「ふむふむ。
「だったら良いな。食堂のメニューが口に合ってるんだから、これも大丈夫だと思うんだけど、うん、それが
「大丈夫じゃと思うぞい。新しいメニュー楽しみじゃのう。鰹のタタキも
「あ、それだけは先に1回作って、食堂のみんなに味見して貰いたいと思って。これまでのタタキ、美味しいって言ってくれてたから大丈夫だと思うんだけど、風味ががらっと変わるからね、念の為」
「そうか、そうじゃの」
茂造も大きく頷く。
「ではの、明日鰹を貰うかの。夜の賄いじゃな。結婚パーティの材料も書き出して手配せんとのう。おお、儂はレシピをこの世界の文字で書き起こさんとのう。カリルとサント用じゃの」
「手間掛けさせてごめん。俺も早くこの世界の文字を覚えなきゃ」
壱は焦ってしまう。となると、誰かに教えて貰うなり、教材を用意するなりしなければ。しかしどうしたら良いものか。
「そうじゃのう。調理師免許を取る時にも必要になって来るしのう。時間がある時に教えるからの。少しずつ覚えると良いぞい。何、この世界の文字は、日本語みたいに沢山の文字は無いんじゃ。それこそ日本語で言うところのひらがなだけでの、言葉ごとに区切って意味を伝えるんじゃよ。じゃからそう難しくは無いんじゃよ」
「そっか。だったら俺でも覚えられるかも」
壱は正直勉強が得意な方では無かったので、それは助かる。ほっと安堵の息を吐いた。
「儂がこの世界に来た時に、先代に貰った文字一覧があるんじゃが、もう儂には必要無いもんでのう、物置に置きっ放しになっておる。しかしもう10年も前のものじゃからなぁ、紙じゃし、使い物にならんかも知れんのう。時間を見付けて新しく作るからの、少し待っててくれんかの」
「うん。いつでも大丈夫だよ。付けペンにも慣れなきゃ」
「そうじゃのう。ボールペンはここの村人の前でならともかく、村の外では使えんからのう」
しかし、こうして
サユリの魔力が戻ったその時、壱がどういう選択をするのか。それは壱自身にも想像すら出来なかった。
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