リュウノキモチ

「嘘をついているのは貴方です」


「テメー!テキトーな推理しやがって!

何か証拠でもあるのかよ!」


「まぁ、落ち着いてください。

貴方が3三に移動した事によって、

空き王手になった…間違いありませんね?」


「だから何度もそう言ってんだろーが!」


「えぇ、それは恐らく真実でしょう…

しかし、嘘をついているのはその後…

貴方は『龍』に成っていない!!」


「!?」


「!!」


「…」


「銀やら桂じゃあるまいし、

意味もなく敵陣で成らない奴が

いるわけねーだろ!」


「…そう、その不成には

ちゃんと意味があったのです…」


「どっ…どんな意味が…

あるってんだよ…?」


「貴方が成ったら、『玉』さんを

殺害する事は不可能なんです!!」


「…………」


「え?どういうことっすか?

さっきから何言ってるか全然わかんねーっす」


「やれやれ…

何を言い出すかと思ったら…」


「誰か私の悪口言わなかった?

まぁいいわ…終わったら起こしてちょうだい」


「まるで私も共犯…

みたいな口ぶりね、探偵さん?」


「飛車さん…もし貴方が

『龍』になっていた場合、

『玉』さんは2一に逃げるしかありません」


「それは不成でも同じじゃねーかよ!」


「えぇ、確かに仰る通りです。

しかし、そうなると…」


「待ってください!僕じゃないです!

僕は絶対にやっていません!!

だって、だって、僕が殺したとしたら…」


「そうです…

打ち歩詰めになるんです。

だから貴方はこの時は成らなかった…

いえ、成れなかった…のです」


「…そうだよ…俺だよ…

俺が殺したんだよ…

どうしても許せなかったんだ…

『玉』のことがよ…」


「俺の事を可愛がってくれた

将棋指しに向かってよ…

ヘボ将棋って言いやがったんだ…

それが俺にはどうしても…」


「飛車さん、貴方の気持ちはわかります…

しかし『将棋』というのは、

『玉』が詰んだら…終わりなんです…」


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コマノキモチ ぺるそなを @LION3G

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