バンノキモチ

「みなさん、

お集まり頂けましたね?

お忙しい中、大変恐縮です」


「僕たちは何故、このような場所に

呼び出されたんですか?」


「ちゃんと説明してくれないと

納得いかないっすね」


「こっちは盤外出張で

疲れてるんですよ」


「二日酔いで頭が痛いってのに、

こんな朝っぱらから、

何の用事があるって言うのよ?」


「例の事件の話じゃないかしら?

全員を呼び出したって事は、

犯人の目星がついたってことよね?」


「これで的外れな

推理しやがったら、

ただじゃおかねーからな?

覚悟しとけ!」


「みなさん落ち着いて、

事件があった日のことを

もう一度聞かせてください…

まずは、『歩』さんから」


「お話しできる事は

全て話したつもりですが?」


「念のための確認です。

あなたは敵側の駒台にいた…

間違いありませんね?」


「え、えぇ…

でも、私は殺してなんかいませんよ!」


「落ち着いて。

状況の確認ですので。

では次に『香』さん、

あなたは私に嘘の証言をした…」


「『桂』のことっすか?

俺も知らなかったんすよ。

てっきり、あの場にいたんだと…」


「何故、そう思われたんです?」


「元々、あの日の護衛は

自分と『桂』だったはずなんすよ。

それがいつの間にか…

あ、だから俺が見た

もう一枚の『香車』が

『桂』の代わりに…!」


「まるで僕が悪いみたいな

口ぶりじゃないか『香車』君…

侵害だね」


「別にそうは言ってないすけど…」


「僕も当日、護衛のつもりでいたら、

急に『盤外出張』だと言われて

迷惑したんだよ」


「それは誰に言われたんです?」


「えーっと、誰だったかな…

電話がかかってきて、

女性の声だったような…」


「私じゃないわよ?

あの日は休みで、

昼から飲んでたんだから!」


「となると、残る女性は…」


「そうよ。私がかけたわ。

急遽、『桂』さんには

盤外出張してほしいから連絡しろと

『玉』さんから支持があったので」


「なるほど。それで、代わりの

『香車』を手配したと?」


「えぇ、何かおかしいかしら?」


「いえ、それでは事件発生時の

状況をお聞きします。

『角』さんは『3四』にいて、

『飛車』さんが『2三』…

ちょうど『玉』さんがいた『1二』が

死角になっていた…そうですね?」


「そうね、間違いないわ」


「では『飛車』さん、

あなたは『1一』に『香』さんが

立っていたと証言しています」


「それがどうかしたのか?」


「あなたは『3三』に移動して、

『龍』に成った…となると、

敵陣だったということになりますね?」


「あぁ、そういう事になるな…

この業界、珍しいことじゃねーだろ?

敵側の駒になることなんて」


「確かに仰る通りです。

しかし、あなたは『3一』にも

『香』さんがいた…

恐らく、急遽手配した方でしょう。

そう証言していますね?」


「だから何が言いたいんだよ!?」


「まぁ、怒らないで。

事実確認をしたかっただけなので」


「あなたが居なくなった事によって、

『開き王手』がかかった…

違いますか?」


「そのつもりはなかったが、

そういう事になるな…」


「ありがとうございます。

これで全ての謎は解けました…


危うく騙されるところでしたが、

『歩』さんの言葉を

思い出しました。


みなさんの中で、

1人だけ嘘をついている

駒がいます。


その方が『玉』さんを

殺害した犯人です!」


「早く教えてくださいよ…

誰なんですか?」


「それは…

感想戦でお話ししましょうか」

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