勝ち組だぜ、まあ面倒ごともありそうですが。
窓から差し込む光にまぶしさを感じ、意識が覚醒する。
ふと、目が覚めると、茶髪の綺麗な人が俺を抱きかかえていた。
あぁ……そっか、俺は転生したんだな。
「あぶ……ばぁ!」
「はいはいお母様ですよアイン」
どうやら俺の名前はアインというらしい。
それでこの綺麗な人は母、といったところだろう。
「うんうん。元気に生まれてくれてありがとうね」
こちらこそ、母が綺麗で嬉しいです。
あれ、でも言葉は日本と同じなのかな?
普通に日本語聞いてるみたいに聞こえるけど、まぁいいや特典みたいなもんだろきっと。
あ……なんかむずむずしてきた……。
「ふぇ……おぎゃあ!おぎゃああ!」
「あらご飯?はいはいご飯あげますよー」
ふむ。こんな綺麗な母からの母乳ならいくらでも飲める。
素晴らしいね、腹が減ったからと無意識に泣き出す。
そんなデメリットはあるが、それを上回るメリットを感じる。
けど、なんかエロさは感じないんだよなあ……やっぱり母親だからなのかな?
それとも俺が赤ん坊だから、そんな意識は生まれないんだろうか。
あ、お母さんもうお腹いっぱいですありがとう……
「あらあら寝ちゃったわ、立派な騎士に育ってねアイン」
「オリビア?」
「あら旦那様……ちょっとだけ遅かったですね」
「ん?なるほど寝てしまったか……食べるのと寝るのが仕事というだけはある、丈夫に育ってくれるとよいのだが」
転生先はぱっと見豪華なお部屋でした。
伯爵家ってのも間違いないんだろう、なんて勝ち組なんだ。
……政争とかに巻き込まれないでまったり過ごしていきたいなあ、無理かな?
まぁいいや。とりあえず休もう、もう眠気が限界……。
お母さんが立派な騎士になってとか言ってるけど……ごめんなさい、俺の能力は——。
*
「よしそれじゃ情報を整理しよう」
俺がこの世界に転生してから4年が経った。
その間言葉に関していえば最初から困らなかった、とはいえ、話す事ができるようになったのはしばらくしてからだが。
まず身体能力、これは確実にアドバンテージを貰ってると思う。
成長が周りより早いし運動能力も7歳とならかけっこをしても勝てることも結構多い。
あとは俺が待ちに待った魔法だ。
この世界にきてから魔法といったものに触れる機会が幾度もあった。
忍び込んだ書斎で読んだが、基本的に魔法には多くの属性が存在するが、特別どの属性しか使えないなどの適性はないらしい。
ただしあくまで難易度が変わるのと得手不得手はある。
始めの部分だけやってみたが、魔法の得手不得手に関しても特に不得手というのはなかった。
「この2点に関して言えば、恐らくこれも特典だったのかもしれない」
神様からの説明にはこんなものはなかった。
だが、ここまで才能がうまく揃ってるのもどうなんだ?と思ったりする。
父は国でも有名な将軍だし、母は城で仕事をしていた魔術師だったらしいから、遺伝の可能性も捨てがたい。
この世界では遺伝の強さが大きいらしいし。
結果遺伝であったとしても、伯爵家を引いた自分の運の付随特典だし。
遺伝じゃなかったとしても、運よくそういう子に産まれることができたというメリットしかない話。
でも確実に特典だろうなと思うのは一つだけある。勉強していて感じるんだ、すぐに頭に入って記憶ができる。
俺が産まれたこのハイム王国の歴史なんて、すでに14歳の成人までの知識を詰め込み終わった。
前世の俺はそんなことできなかった、と思う。
実際そんなイメージ浮かばなかったし。
「あと顔も悪くないよね」
母のオリビアが持つ綺麗な茶髪を受け継ぎ、父……ローガスの持つ精悍な顔つき。
まさに将来が楽しみな容貌をしていると自負しておりますはい。
「うむ、わかった勝ち組だ!」
ッシャオラア!って叫びたくなる気持ちもわかってほしい、こうまでうまくいくとは思いもしなかった。
スキルは残念だが、お母様がアインも立派な騎士になれますよと言っていたので、努力でなんとかしようと頑張ってます。
「アインー?」
「はーい今行きます!」
ちなみに今は、父との訓練の休憩途中だったりする。
まあ訓練とかいっても俺が木刀で踊らされるだけなんですけどね。
「あら不出来な坊ちゃんここにいたの?」
……一つだけ嫌なことはあった。
こいつだ、このおばさん。
「アルマお母様……おはようございます」
「はいおはよう。ローガス様も大変ね……戦闘も魔法の適性もそのどちらも持ってない子、そんな子の訓練をしなければならないだなんて」
「……父には頭が下がります」
「本当です。でもよかったわ……私の子があなたと違って、聖騎士なんてものを手に入れたんだから」
この国では生まれた時に生まれ持った才能、スキルは診断される。
勿論俺も診断されて簡単にばれた、毒素分解EXがな!
EXと書いてあったことでたしかにみんなから驚かれたけど、それでも所詮毒素分解。
いいんだわかってたから……。
それに比べ俺の弟、側室のアルマから生まれた男の子は聖騎士とかいうかっこいいもん手に入れて生まれた。
二つ年下だからまだ俺と違って訓練はできない。だが父も楽しみだと言っているほどだし、期待されているんだろう。
ちなみに弟はアルマの金髪を受け継いだグリントっていうこれまたイケメンになりそうな顔立ちの子だ。
「ええ父にはご迷惑をかけていて、本当に申し訳なく思ってます。だからこそ私ができる努力をして……少しでもお役に立てればと思ってます。もちろんアルマお母様の名を汚さぬようにも」
「ふふ……そうね。未来の跡継ぎであるグリントの役にも立ってほしいものだわ」
やかましい。
そりゃあさ、グリントのほうが跡継ぎになる可能性は高いよ。
お婆様だって正直俺への態度なんかより、グリントへの態度のほうが数段は優しい。そして甘い。
俺にだけお土産なかったことがあるし、お母様がそれを嘆いてこっそりお土産を足していた、それを俺にくれたのは気が付いてます。
ありがとうお母様。
「えぇそうですね。ではすみません、お父様から呼ばれてますのでこれにて」
「そうね待たせてはいけないもの。早く行きなさい」
声をかけたのお前だろ。
その金髪ドリルにするぞ。
はぁ……せめて追放なんてされないといいなあ、とか最近思います。
マザコンに目覚めた俺から母を遠ざけないでほしいです(切実)
「遅いぞアイン!何をしていたのだ、呼んだら早く来なさい」
「申し訳ありません。アルマ母様からお声がけ頂いたので」
「……そうか、何と言っていた」
「頑張って父とグリントの役に立たねばならない、だから頑張りなさいとお声を頂きました」
「そう、か。それでお前はなんと?」
「……もちろんそのつもりですよと言いましたが、何か?」
「いや何もないさ、なら本日の訓練を始める。剣を取りなさい」
「はっ!今日もよろしくお願いします!」
もう少し自分の強さと頑張りを主張してほしいものだと、父のローガスは思う。
だがグリントもアルマも、ローガスにとっては二人とも大事な家族。そのため二人を悪く言うことも考えなかったのだ。
かといってアインに失礼なことを言うなと指摘するつもりにもなれなかった。
*
ラウンドハートの長男、アインが風呂に行っている間にメイドが部屋を整えていた。
まだ幼い彼はとても手がかからなく、頭の良い子で使用人にも優しく、メイドたちの中でも評判はとても良かった。
「よいしょっ……と。ベッドメイク終わり、あとは……」
アインの部屋は伯爵家の長男ではあるが、特別豪華な物を多く置いているわけではない。
高価な物と言えばベッドやソファといった体を休める物だった。
勿論メイドは掃除に手を抜くことなくソファの埃も軽くたたいて取り、この部屋の主であるアインが快適に過ごせるようにする。
「あら?また切れちゃってるのかしら……」
アインの部屋は他の住人の部屋と違い、なぜか灯が切れやすかった。
灯には小さな魔石を載せてその魔力を媒体にして光りを灯す。
「うーん……不良品が最近多いのかしら。今月はもう3回目よ――取り換えるの」
アインの部屋の魔石は、一か月でもうすでに2回は交換している。
通常ひと月に一度交換すれば基本的にはそれで充分なため、一月で三度目まで進んでいるアインの部屋はやはり異常だった。
「お腹が空いたアイン様が食べちゃったりして・・・なーんてね。お腹空いたからって魔石なんか食べたら体壊しちゃいますよね。あと美味しくなさそうだし」
アインの部屋の魔石はすぐ効果がなくなることから、アインがその中身を吸っているのではないか?とメイドの中で冗談交じりに噂された。
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