終幕

 何時から、何処から、何故少女がそこに居るのか誰も知らない、誰も知り得ない。

 窓も扉も無い白い部屋。そこは誰も観測も干渉も出来ない領域。

 そんな場所に少女は1人存在している。少女と少女が腰掛けている白い箱しか存在を許されないその空間に、少女はずっと居る。

 少女は箱を抱え部屋を歩く。

 広くもあり、狭くもあるその部屋で少女は幾つも遊び道具を見つけ、遊び、そしてそれらは壊れていった。

 少女と白い箱以外は壊れていく、そんな世界に少女は嘆くことはなく。歩き、遊び道具を見つけたら遊び、眠り、そしてまた歩く。

 この繰り返しだけが、少女がこの部屋にいる理由だった。

 いつものように少女は、ナニかだったモノを白い箱に投げ込み、底を覗き込む。すると少女の耳に声が届いた。

 それはただの幻聴なのかもしれない。夢なのかもしれない。けれど、少女はその声に耳を傾けた。

 声の主はたった一言少女に問いかけた。

 キミの願いはなんだい、と。

 少女はその質問に、外を見てみたい、そう答えた。

 目を閉じて、開いてごらん。そこには外への扉があるよ、と声の主は少女にそう言葉を残した。

 そして、少女が目を閉じ、開くと壁に何の変哲もない扉があるのに気付いた。

 少女は箱をそのままに、扉に近付くと取っ手を捻り、扉を開けた。

 その目に写ったものは少女にしか分からないが、少女は笑いながら初めて部屋の外へと踏み出した。

 扉は少女が翔ていくのを見届けると静かに閉じた。

 その部屋には白い箱だけが残され、二度とその部屋では何かが生まれることはなかった。


 一面白く塗り潰されたその部屋は静かに消えていく。

 少女の居ない、少女が去ったその部屋は役目を終え、全てを閉じていく。

 少女が戻れないように、少女がもう一人にならないように。その部屋は忘れ去られる。

 けれど私は、私達は知っている。この部屋がどれだけ少女を見守っていたかを、どれだけ少女を愛していたかを、私達は知っている。

 消えるとしても、私達がそこにあった事を“わたし”は忘れない。

 “わたし”と共に成長した貴方達を、決して忘れはしない。

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創造cycle 夜表 計 @ReHUI_1169

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