人間も、人魚も、ひとりひとりの行動を追ってゆけば、『みんな正しい』。人魚の女の子と人間の男の子はもちろんのこと、最初の人魚の思惑だって、終盤の人間の父親の選択だって、どれもそれまでの経緯があってこその選択なのだ。そう思ってこの物語を読むと、『この結末にして、悪役などいない』ということに気がつくはず……どこで、なにを間違ったのか。なにが足らなかったのか。さまざまに想像できる黒い童話です。