X案件
Yohukashi
X案件
コルゲ首相秘書官は、国家経理省のモヌエ参事官と面会。
「X案件」はワドバ首相のご意向であることを口頭で通達。
モヌエ氏は嫌いなボンジ主事に、これまた口頭で稟議書の起案を指示。
モヌエ氏は関係者に話をつけて、すばやく決裁を済ませた。
すべて口頭での指示だったため、「X案件」はボンジ主事が考え出したものとなった。
通常、下から上げられる稟議書には、計画を実行する理由が記載されており、
その裏付けも十分なされているのだが、
「X案件」は実際ワドバ案件のトップダウンだったから、
裏付けは不十分なものだった。
裏付けが不十分の「X案件」は、すぐにボロが出た。
だが、それは
裏付けを十分にしていないボンジ主事の怠慢
ということで片を付けられた。
自分のせいではないのに悪者にされたボンジ主事は、世を恨んで自殺した。
優しい夫を失ったボンジ主事の奥さんは、
恨みを晴らすべくボンジ主事の日記を野党議員に持ち込んだ。
野党議員はワドバ首相を糾弾したが、
圧倒的大多数を占める与党を率いるワドバ首相は、野党の糾弾を鼻で笑って追い返した。
「そんなに言うのなら、日記のようなあいまいなものではなく、確固とした誰の目にも明らかな証拠を持ってきたらどうだ」
世論は、
日記は首相や本省を逆恨みしたものだから証拠にならない
と断じており、「X案件」疑惑は、世論の話題から消えた。
「自殺者を出さなければ、日記のようなものも流れなくなる」
そう思ったワドバ首相は、
はみ出し者に稟議を書かすなと号令。
万一のことがあって起案者が退職の憂き目にあったとしても、
それ相応の再就職先を保証することにした。
これで、闇の首相案件が表沙汰になることはなくなった。
まさに、ワドバ首相のやりたい放題となった。
それを知ったあやしげな業者どもが、うようよワドバ首相に群がってきた。
狡猾なワドバ首相は、業者どもに与えた恩恵をポイント化して管理。
ポイントに応じて、業者はワドバ首相のお友達に便宜を図るのだ。
従来の金銭による贈収賄だったら、金の切れ目が縁の切れ目となるが、
ポイント化により自分の周囲に便宜の輪をつくることで、
自分への忠誠心を植え付ける。
ワドバ便宜グループが、
首相の地元の熱烈な応援者となり、あらゆる手を使って票を集め当選させる。
与野党議員の個人情報を集め、信奉者を便宜グループの輪に組み込み、反対者の闇情報をマスコミにリークして破滅させる。
こうして、ワドバ首相は反対派を完全に駆除、議会に絶対多数を作った。
「再軍備化に賛成の方、ご起立願います」
「ワドバ首相を終身総統とすることに賛成の方、ご起立願います」
議員全員が起立した。
X案件 Yohukashi @hamza_woodin
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