第11話2003年の出来事はてんこ盛り
2003年が始まると、家族の知らなかったことが少しずつ見えてくる。
同居を始めてからというもの、看病と家事に追われて、思えば私は賃金が発生しないなんでもやってくれるヘルパーさんとして雇われたようなものだ。
普通、結婚してすぐの頃は「新婚さん」とまわりから言われる時期があるものだよなぁ。
義妹たちは、豪華な結婚式と披露宴で、親戚へのお披露目をやったものだけど。
こちらは入籍だけして、いきなり義父の看病が4ヶ月続き、亡くなったあとは葬式だの四十九日だのと慌ただしい日々、やっと落ち着くと思ったのもつかの間で立て続けに義妹たちが妊娠だなんて、私たちの結婚式なんてどこかへ消えちまうわな。
最近では離婚と言う言葉は、ここでもあそこでも聞くけどデータを調べてみると結婚式を挙げなかった夫婦は式を挙げた夫婦より、断然、離婚率が高いという結果があると言うではないですか。何やら、嫌な予感がしてならぬのです。
「新婚さん」のはずだけど、夫婦で出かけることが全くなかった。人前で夫婦として並んでいたのは、葬式と四十九日くらいなものだ。隣同士に並んで、お焼香してくれた人に無言で頭を深々と下げる。
どれだけ考えても、それくらいしか思い出せない。
夫婦で出かけられない理由には、もう一つある。それは、お義母さんの存在だ。
お義父さんが亡くなったあと、お義母さんの姉と妹が心配してよく家へやって来た。どちらも夫婦でやってくる。わりと近くに住んでいるし、夫婦で来るって普通のことだと思うのだが、お義母さんにとっては違ったようだ。
お義母さんの姉夫婦や妹夫婦が帰るなり「頭に来るのよね。私は夫を亡くして未亡人になったというのに、なんで二人で来るかしらね。腹が立つから二度と来なくていいのに。」と、毎回必ず言うのである。
それを聞かされる私は「お前は絶対に夫婦で行動するなよ」と言われている気がしてならなかった。
ある時、夫がフレンチのコース料理招待券をもらって来た。「おふくろはフレンチと聞くだけで“私は嫌い”と文句言うに決まってるから、たまには二人で行くか」と、夫が言った。日頃のお義母さんの言葉を聞いていたら、二人で出かけることは許されないでしょ。「二人で行くことの方が文句言われそうだから、三人で行こうよ」なんで、こんなに気を使わなければならないのだ。
とりあえず、当日の朝「今日は三人でフランス料理を食べに行きますから、出かけられる準備をして待っていてくださいね。出先から帰る前に電話入れますけど、5時くらいには家を出ますから、とろしくお願いします」と、お義母さんに伝えた。
いつでも逆の返事しかしてこないお義母さん、「私は行かないから」と、思った通りの言葉が返ってきた。
あまのじゃくだから仕方ない、それ以上は何も言わずに私は外出した。
都内で用事をすませ、新宿駅から家へ電話をした。「あと1時間くらいで帰りますから、出かけられる準備をしておいてくださいね」と、返ってきた言葉は「私は行かないから」って、行きたくないなら行かなくていいと思いながら「わかりました」と電話を切った。
家に着く頃、外出していた夫もちょうど車で戻ってきた。そのまま夫を車の中で待たせ、私はお義母さんを迎えに家へ入る。
「お義母さん、出かけますよ」、台所の方から「私は行かないって言ったでしょう」と相変わらず可愛げのない言葉が返ってくる。「そんなこと言わないで行きましょうよ」と台所へ行くと・・・、なんとバッチリ化粧をして着飾ったお義母さんがいるではないか。“えっ?”と目をパチクリしている私に「そこまで言うなら仕方ないわね、行くわよ」ですと。
やっぱり、初めから行く気満々だったのだ。本当に面倒臭いお義母さんだ。いちいち気を使わなければならなくて、私の心はすり減るばかりである。
神様は意地悪だよな。
やっとの思いでお義母さんを車に乗せ、1時間ほど車を走らせ到着した店だったのに、無情にも「本日定休日」のプレートが入り口に掛けられていた。
もういや。
その後どうしたか、あまりのショックで記憶にありません。
きっと、この先ずっとこんな調子で、お義母さんと暮らしていかなければならないなんて、“怖い”。
Reborn〜新しく生きる〜 えりらはのし @erirahanoshi
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