本間南2
「じゃあ1つ心理テストをしてみよっか。せっかくだからマスターもやってみてよ。
では今から言う事を目をつぶって頭の中で想像してみてください。
辺りには真っ白な雪景色が広がっています。ビルなどの建物もなくひらけている場所です。
そこに白いコートを着た女性が1人立っています。
髪の長さは肩より少し長いくらいで肌も白い可愛い女性です。
その女性は色の付いていないマフラーを巻いていました。
では、そのマフラーに色を塗ってみてください。
直感で初めに思い浮かんだ色で塗ってね!」
2人は目をつぶりながら頷いた。
「じゃあ色は塗れたかな?」
「おう。塗れたぞ」
「塗れたよ」
「目を開けてください。では塗り終えたマフラーの色を教えてください」
「赤色だな」
マスターから狙い通りの答えが返ってきた。上手く誘導できたみたいだ。
「黄色かな」
「……!? 黄色? マジ? しっかりと想像した?」
南から想定外の答えが返ってきて少し戸惑った。
確かに個人の経験や好きなものなどの影響は受ける心理誘導だが……
「想像したんよ。ただ、頭に想像してたらなんかホラーみたいで怖くなってきたから、周りをお花畑に変えたんさぁ。そしたらなぁ、最初赤が頭に浮かんだんけど黄色の方が明るい気持ちになるかなぁって変えちゃった」と南は自信たっぷりに訛りの強い言葉で答えた。
「勝手にお題変えてるじゃん! お花畑って……あははっ。南ちゃんみたいに答えた人初めてだよ」
突拍子もない南の答えに笑いを堪えきれなかった。
赤色に上手く誘導できない人は今までにもいたが、お題を変えてきた人は今までにいなかった。俺にとって少し衝撃的だった。
「ハハッ。勝手にお題を変えられては心理テストが通用しないな! ところで今の色が何だったんだ?」
マスターも南の天然さに少し笑っている。
俺はポケットから赤いハンカチを出して説明を始める。
「えっと今回のは、実は赤色になるよう誘導してたんです。南ちゃんも黄色にする前は赤色を想像していたように、しっかりと俺の言っていた事を想像すると大体8割の人が赤色を思い浮かべます」
そう2人の顔を見ながら話した。2人は興味津々に聞いている。
「じゃあ何故か。説明していくね。
まず辺りには真っ白な雪景色が広がっています。ビルなどの建物もなくひらけている場所です。っていうところなんだけどここの部分で季節は冬だという事、頭の中を雪の白色でいっぱいにする事を想像させました。
次に白いコートを着た女性が1人立っています。髪の長さは肩より少し長いくらいで肌も白い可愛い女性です。の部分では白いコートの部分と肌が白いという所では更に白を意識させ、髪の毛の長さをセミロングくらいにしたのはオーソドックスな女性を想像させるために言いました。
今、頭に想像したものをキーワード化すると、【雪・冬・白・オーソドックス】になります。ここまで大丈夫かな?」と俺が聞くと2人は頷いた。
「じゃあ今言ったキーワードで思い浮かぶものは何ですか?」
そう俺が聞くと
「冬とか雪とか言われっとクリスマスとか、雪だるまとかかなぁ」と考えながら南が答えた。
「そうだな。俺もそんな感じだな」
マスターも首を縦に振り、南の意見に賛同する。
「大体ほとんどの人がそんな感じだと思います。って事は俺の質問でクリスマスとか雪だるま、サンタクロースとかを無意識に思い浮かべていた事になるんです。
サンタクロースは赤と白のコスチュームだし、絵本とかに登場する雪だるまのほとんどが赤色のものを身に付けています。赤色のバケツの帽子や赤色の鼻、赤色の手袋やマフラーとかね。
またクリスマスと言えばCMなどでK◯Cのチキンやコカ◯ーラ、クリスマスケーキの映像が流れています。これらも全部赤色が強調されています。
他にも紅白◯合戦や日本の国旗も白と赤がセットになっているよね。これらは冬や白といったキーワードと関連づけされています。
今言った理由から【雪・冬・白・オーソドックス】のキーワードからは赤色を想像しやすいって事になります。
オーソドックスっていうキーワードも大事で、髪の毛の長さを設定してあげないとショートカットのコテコテのファッションをするような人を想像してしまう人もいるからポイントの一つになってるんだよね」
俺は出来るだけ丁寧に分かりやすいスピードで説明した。
「なるほどな。言われてみると無意識に連想していたのかもしれないな」
「すっげぇ! 少ない情報与えるだけでうまく誘導してたんなぁ。てか心理学ってこういう勉強もするん? なんか面白そう」
マスターからは腕を組みながら感心した様子、南からは心理テストに満足した様子がそれぞれ伺えた。
「こういうのは雑学的に勉強したりするかな。普段はカウンセラーになる為の勉強とか対人関係の勉強がほとんどだけどね。
あと今みたいな心理誘導は、経験や好きなものとかの影響を強く受けるものだから必ず誘導できるってわけじゃないんだけど、統計をとったら南ちゃんみたいに別の色を答える人は2割だったよ。ただ、あんな風にお題を変える人は今までにいなかったけど」
南の天然ぽい所を少しいじりながら言った。
「イェーイ! 2割の方だぁ」
俺のいじりに気付かず、ピースサインをしてむしろ喜んでいる。本物の天然だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます