第346話 取り扱いは要注意
「専門家に丸投げってどういうことだろう?」
「未開星系の監督は監察艦隊の仕事だったよねぇ~~?」
「一体全体、どういうことかしら?」
リリィの「丸投げ」という言葉にデューク達は「丸投げって?」という感じで艦首に疑問符を浮かべるのですが、上級生の二人は――
「なるほど、専門家に丸投げですか」
「それがよろしいかと思いますわ」
などとウンウンと訳知り顔で頷くものですから、置いてきぼりになったような気分のデュークは「リリィ教官、どういうことなのですか?」と尋ねざるを得ません。
「あら、あなた達、まだ上代人の遺物の講義を受けていないのね。そうか、あれは二年次の中ほどでやる科目だったわね」
と言ったリリィは「上代人の遺物の扱いは難しいの。危険と言ってもいい」と説明しました。
「上代人の遺物が危険……超空間航路とか天躍の門とかは随分と安定しているように見えるのですけれど?」
「あれらは長い年月をかけて性質や危険について研究されているものなの。それに比べて未解明の遺物はなにが起きるか分かったもんじゃないわ」
実のところ超空間航路は共生知生体連合を構成する古い種族が恒星間に飛び出た時に、すでに底にあったという代物です。そのため1000年単位のオーダーで研究がなされ「とりあえず安全、それに便利だし」ということになっているのです。
「天躍の門のことは初めて知ったけれど、多分かなり研究されているものよ。近衛が首都星系の裏門で近衛が抱えているということは、シンビオシスが首都星系になった1000年以上前から見つかっている可能性があるわね」
リリィは「首都星系選定の理由の一つかもしれないわ」などと言ってから、こう続けます。
「連合の歴史の中で遺物というものは複数見つかっているけれど。トンデモナイ大事故を引き起こしたものもあるのよ」
「大事故……ですか」
「最近だと10年前の事件だね。作られてから三万年以上は経っているコンテナをうっかり開けたら、超科学で出来た重武装のキリングマシーンが町を一つまるごと壊滅させたって話」
現地の科学者が不要にも封印を解き放ったのは全長1.6ートルほどの戦闘ロボットで、素手で重戦車の装甲を叩き割るパワーに、瞬間的な速度はマッハ5、対レーザー対実体弾が施された強靭なボディを備え、目から怪光線を放ち、口から炎のブレスを吐くというトンデモなものでした。
「軍艦並みの出力を持つ小型縮退炉を備えていたということだから、現地の星系軍では歯が立たず、宇宙軍の第一軌道降下団を使って対処したのよ」
「へぇ……」
リリィは「他にも、完全自律型の独立ナノマシンが惑星一つを丸のみにしたとか、いろいろあるの」などと説明するのです。
「でも、実のところそのくらいなら問題ないのだけどね」
「はぁ……」
殺人ロボでもナノマシンにせよ対処できるのであれば問題ないのです。キリングマシンーンは宇宙軍の武力でゴリ押しし、ナノマシンは惑星から民間人を脱出させた後に惑星ごと焼き払うという荒業で解決をみています。
「遺物は天体サイズの物もあるのよ。星系内を見たところ、ぱっとみそういうものはないけれど、ガス惑星の奥に潜んでいたりということは考えられるわ」
それこそ恒星の中にあることだって可能性は0ではありません。
「それに今回は時間に干渉しているって点が問題ね」
リリィは「原理は分からないものの、時間に影響を与える効力があるとすれば、恒星の重力異常や、下手すれば超新星爆発の引き金になりかねい」と言いました。
「こういうことは宇宙軍にその手の遺物の調査部隊に任せるのが一番なのよ」
「なるほど……でも、行方不明になっている前監察官はどうするのですか?」
「行方不明の彼がいろいろと問題の発端になっているのはかなり高い可能性をもっているけれど、それを探すことは監察艦隊の仕事ではないわ――」
リリィはそこで「今からジャンプアウトしてくるフネに乗っている人たちの仕事ね」と言いました。
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