第326話 咆哮
「30秒……25秒……」
海賊たちが高速機動艇を囲みながら距離を詰めてきます。それを確認したスイキーははカウントダウンを開始し「残り15秒、いいぞ、カメレオンモード停止だ!」と、頃合いを見計らってデューク達に光学ステルスを解除するコマンドを投げました。すると――
「ぶはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ、息を詰めるのも限界だったぁ!」
デュークはそれまで体内にため込んでいたガス――カメレオンを維持するためにため込んでいた溶け切った冷却材を盛大に吐き出しました。それと同時に、彼の姿――超巨大戦艦が宇宙空間にまざまざと現れるのです。
「やっと廃熱できるわ――!」
「我慢はお肌にわるいんだよぉ~~!」
ナワリン達も同様にすさまじい勢いで廃熱を行います。デュークと同じようにして、スマートな高速戦艦と重巡洋艦の姿が、バッ! っと現れ出ました。
「これで海賊たちにも見えるようになったが、相手の動きはどうだ?」
「ええと……なにか変だわ」
スイキーの副官役を務めるエクセレーネの見たところ、海賊たちは何らかの対応をとるでもなくただ近づいてくるという不可解な有様でした。加えてこれまで宇宙海賊帝国がなんたら、宇宙の帝王の息子サン・バルドーがどーたらと浴びせて来た通信波が完全に途切れています。
「ううむ、まぁ、理由はなんとなくわかるが、念のためちょっと探ってみてくれ」
「わかったわ、思念を探るわね」
そう応えたエクセレーネは心理的サイキックの妙手でした。その彼女は海賊たちの思念を探るため、頭の上にキツネ耳をピコーンと立てるのですが――
「……なぁんにも思念を感じないわ。あれは頭が真っ白になってるんだわ」
「ああ、やっぱりなァ……」
突然目の前に500メートル級重巡洋艦やら700メートル級戦艦、その上1.5キロ超級超大型戦艦が突然現れたのです。
海賊たちが「はぁ?」とか「ひっ?」っだたり「ふっ?」やら「へっ?」に加えて「ほっ?」などとそれぞれ頭の上に巨大なビックリマークを浮かべるといった一種の心神喪失状態に陥っているのも仕方がありません。
「それが恐慌状態に変わる前に――――始めるか」
「了解! 開口部用意!」」
デュークはガパっと巨大な口を開口し、その中には超硬超重金属の塊である生きている宇宙船の歯並びを広げました。
「縮退炉全開、リミッター解除ッ!」
つづけてデュークは縮退炉の熱をMAXまで引き上げ、さらにリミッターの制約を完全に開放します。
「体内流路問題なし、最終調整終了!」
最後にデュークは縮退炉と大きな口との連携を図るエネルギーラインの調子を最終確認し、「いつでもいけるよっ!」と告げました。
「よぉし…………」
デュークの準備が万全であることを確かめたスイキーは「耳ふさいどけ――――っ!」とエクセレーネに合図し、それを受けた彼女は「もうやってるわ!」とキツネ耳をペタンと畳んで待機します。
「よし、盛大にぶちかませぇ!」
「わかったよ! 重力子解放!」
スイキーの合図とともに、デューク達はドぎゃおぉぉっぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおん! と最大出力の重力波の汽笛をあげたのです。
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