第283話 査問
「総員、第三艦隊司令ラビッツ執政官に最敬礼!」
12名のリクトルヒに続いて扉をくぐったラビッツ提督が現れるやいなや、カークライト提督はカッ! と号令を掛けます。共生宇宙軍の軍人たちはいつもの敬礼ではなく深々と頭を下るという敬礼を行い、第三者であるトクシン和尚やゴルモアのテイ大佐はそれぞれの礼にかなった作法で恭しくお辞儀をしました。
「うんしょっと……」
「はぁ、最敬礼ってめんどいわ」
「偉い人には土下座をしないと首を刎ねられるんだよぉ~~!」
デュークたちは艦首をブンと振り下ろし、床スレスレまで近づけるという傍から見ると土下座にも見える礼を行っています。実際のところは重力スラスタを上手く使えばそれほど面倒なことでもないのですが、執政官や軍の最高指揮官レベル相手にしか使うこともないお辞儀なのですからあまり慣れてはいなかったのです。
「やぁ、諸君」
集まった軍人達に向けてラビッツはいつもながらの愛嬌たっぷりな軽い口調でそう言いながら、両腕を左右に広げて厳かな答礼をします。それは全てを平等にそして公正に扱うという共生知性体連合のシンボルである天秤をモチーフとした執政官のみに許されている敬礼でした。
「連合執政官ボーパル・ラビッツです」
この時のラビッツは共生宇宙軍の軍服の上に長い布きれを纏っています。これは執政官の正装であることから、今の彼は共生宇宙軍司令官というよりも執政官であるということを強調していることがわかりました。
「ん、
ウサギの執政官はゴルモア軍のテイ大佐に向き「あなた方が母星系を喪ったことについては、誠に申し訳なく思っている。ただ、ゴルモア人にはしかるべき星系を用意しているので、ご安心いただきたい」と頭を下げました。
すでに葉巻の火を消しているテイ大佐は「新しき故郷が得られれば問題ありませんな」と答えるのです。ゴルモア人は連合との間になんらかの密約でもあるのでしょう。
「それより、かねてより希望していた縮退炉技術――そちらをよろしくお願いいたします。閣下」
クワシャァと蜘蛛の足のような口吻を広げたテイ大佐に、ラビッツ執政官は「うん、一度なされた約定はこれを護る――それが共生知性体連合だからね」と共生知性体連合のポリシーを語り、今度はネコとペンギンに向かってこう言います。
「ラトウィッジ元中将――いや、三大冥王トクシン僧正、ドンファン・ブバイ教団のご協力に感謝するよ。それからスイカード、君は君で上手く務めを果たせたようだね」
トクシン和尚は「ほっほっほ」と福々しい笑みを浮かべ、スイキーは「クワカカッ」と親しげな一声を上げているところを見ると、執政官と彼らはどこかで接点があったようです。
「ゴルモア防衛隊指揮官ペパード大佐――あの状況下で良くゴルモアに残ってくれた。あれで連合のメンツが相当に立ったよ」
それを受けた恐竜族の大佐はふてぶてしい表情を浮かべながらも「私は、義務を遂行したまでです」と包帯をグルグル巻きにした未だ癒えぬ頭部をペシペシと叩きました。ラビッツは「義務、か。それでもなかなかできることじゃないね」と笑みを浮かべました。
「それで分艦隊指揮官――」
「はっ、カークライトであります」
足のない幽体と化しているカークライト提督が軍敬礼を行う姿を見つめたラビッツ提督は「ふぅん幽体化したと聞いたけれど元気そうじゃないか……幽霊に元気もなにもないかもしれないけれどね」と冗談めいたセリフを口にします。
「まぁそれはそれとして。提督と分艦隊の皆さん、第三艦隊主力の到着までいい感じに敵を食い止めてくれて、誠にありがとう。ゴルモアでの遅滞行動がなければ、あと数星系――主要星系の先端にまで侵攻がなされていただろう」
「恐縮です、執政官閣下」
そして執政官は「しかし、よくもまぁ、アーナンケまで助けることができたものだね」と言いました。
「星系住民の疎開に回す艦艇を算出――残存艦艇および小惑星アーナンケの状況を分析、味方とゴルモア軍その双方を救えるという可能性が生じました。ならば、実行するのみです」
「ニンゲンらしい果断な判断だね。それに救援方法が振るっている、油断した敵を奇襲したこと以上に――小惑星ごと移動させるというのは大胆不敵だったね。実現可能性はありそうだったし、実際に実現したわけだね」
そこで執政官はふと「誰の発案だったのかな? 提督かな?」と尋ねます。
「いえ、そこにいる私の従兵、分艦隊旗艦デュークの発案です」
「なに? 生きている宇宙船の少年が発案者か……本当かい?」
カークライト提督はデュークを指差し「間違いなく彼の考案であり、アーナンケ救援の最大の功労者と言えます」と言いました。
「ふぅむ、戦闘情報によると、君は今回の作戦行動の要でもあったようだから――最大の功労者、たしかにそうだね」
そこでラビッツは鼻の頭をヒクヒクさせると「よくやった、デューク曹長。君の機転と奮闘に感謝せねばなるまい」と賛辞を送ります。
「ふぇぇっ?! ぼ、僕はちょっとした思いつきを言っただけです」
「ほぉ、謙虚な少年だね。龍骨の民らしいとは言えるが――――ではあれだな、君にはなにかご褒美を与えねばなるまいね。なんでもいいぞデューク君、君が望む事を言い給え」
突然報奨を与えると言った執政官に「ふぇっ、ご褒美……って」とデュークは少しばかり悩み始めます。脇にいるナワリンとペトラは「あら、良かったじゃない!」とか「食べきれないほどのご飯とかもらっちゃえ~~!」などと囃し立てました。
「はっ、そうだな龍骨の民といえばご飯かな。では、10キロ級資源小惑星の一つでもあげようか? 君のような大きな龍骨の民でもなかなかに食べ切れないぞ。おお、そこなお嬢さんたちにも分け与え給えるといい」
「じゅっ、10キロ級資源小惑星…………ですか」
それだけの大きさの小惑星であればたとえデュークであっても三ヶ月はおやつに困ることはありません。その上、ただの岩くれではなく資源という名の付いた貴重な鉱脈を有する小惑星であり、デュークの俸給の何十年分になるかわからないほどのお値段がするのです。
「うわぁ……」
デュークは10キロ級のご馳走と聞いて「ハフン」とため息を漏らし、ナワリンたちも「執政官ってば太っ腹ね!」とか「ボク達もご相伴に預かり~~!」などと喜びを見せました。
「ふふふ…………さて」
そこでラビッツ執政官は表情と口調を改め、少しばかり冷たい口調でこのようなことを尋ねます。
「本題といこう。チタデレ、連合主要星系の端にも近いこの星系――分艦隊がここまで下がった判断それ自体は否定しない。しかし、無断でいくつかの星系を放棄したな? もちろんゴルモアも含めてだ。そのことについて、いくつか質問をさせてもらうが、よいか?」
ラビッツ執政官が有無を言わさぬ命令口調で「いいな」と尋ね、カークライト提督は落ち着いた声で「はっ、なんなりと」と応えました。察しの良い者は「うっ」やら「ふむぅ」などと咳払いやため息をつき、査問が始まったことに身を固くします。
「まず、分艦隊がゴルモア星系に到達した時点で敵艦隊を食い止めるとういう計算はできなかったかな?」
「はい、いいえ。星系住民の疎開にリソースを割く必要があり、目算などまったく立っていませんでした」
「なるほど。その時点では、か。アーナンケ到着後はどうだったかな?」
「小惑星アーナンケを避退させつつ敵部隊に対して遅滞防御をしかけましたが、果断な指揮官の追撃により、主力である重打撃戦隊および水雷戦隊を消耗しました」
「ふむ、敵の巨大戦艦と一戦交えたとも聞く。そこで君も一度は死んだということだが、星系外縁部に到着後、賦活処置を得て指揮権を回復したのだな?」
「はい、そうです閣下」
カークライト提督は重症どころか死亡にまで至ったのですが、星系外縁部に到着したところで、幽体状態とはいえ指揮権を回復したのです。
「一応聞いておくが、その時の戦力は?」
「星系外縁部に落着後、残存艦艇を集結させましたが、その時点で手持ちの艦艇は1200隻ほどでした」
カークライト提督が率いていた分艦隊は当初総数3000隻あまりでしたが、主力である重打撃戦隊は叩かれに叩かれて消耗し、脇を固める水雷戦隊は別ルートに入り込んで星系から逃れていたのです。
「だが、艦載母艦ゴッド・セイブ・ザ・クイーンズは手つかずで残っていたはずだ、これをフル回転させれば再戦力化が可能ではなかったかね? 軍艦を多数搭載し、それらを整備補給、修理すら行える艦母という艦種は一種の機動要塞ともいえる存在である。その機能を最大限に発揮すれば、どうにでもならなかったか?」
「はい、確かにその可能性はあります」
続けてラビッツ執政官が「超弩級艦載母艦GSTQ。分艦隊に貸し出した最高戦力、これを使わない手はないな? それでゴルモア星系で敵を足止め――少なくともあと3日はやれたはずだ」と言うと――
「発言許可を願います!」
突然、ゼータクト准将が発言の許可を求めましたものですから、執政官は片眉を潜めながら「ぜータクト准将か、発言を許可する」と応じます。
「星系外縁部に避退した時点で、GSTQのリソースはおおよそ吐き出しております。アーナンケ救援だけではなく、ゴルモア疎開船団の護衛およびコロニー牽引作戦――最低限の物資まで使い切り、余力は30パーセント程度でした」
「ほぉ……それはカークライト提督の指示かな?」
「はい、提督は全力でゴルモア人を救えと命じられましたから」
「だが、残余のリソースは30パーセントはあったのだな?」
「……はい」
執政官はなにかを考えるように長い耳をヒョコリと折り曲げながら「戦略兵器としては十分だな」と呟きました。その言葉を聞いたぜータクトは「むっ」とその美貌を夜叉のような物に変えるのですが、さすがに口を閉ざします。
「それで、可能性はあったのに、ゴルモアを捨てた――独断で?」
「はい、私の責任に置いてゴルモアを捨てました。そう、独断で」
カークライト提督は責任と独断という言葉を強調しながら首肯しながら、こうつづけます。
「また、その後、ゴルモアの後背星系――無人とは言え連合資産が残る星系も三つばかり放棄しています」
「そして、ここに至る、か」
チタデレ星系は連合加盟星系まで、スターライン航法でもあと何度かのジャンプで到達できる位置にあります。
「ふむ、繰り返すが――通信途絶状態とは言え、星系放棄は明らかな独断専行と認めるか?」
「はい、閣下」
執政官の叱責に対して、カークライト提督は他者の干渉を許さぬ断固たる口調で、「故意で命令無視でその判断を行った」というのです。査問の場においては明確な証拠能力を示す発言を聞いたラビッツは「そうか」と頷きました。
「では、カークライト提督、軍法に照らし君を分艦隊指揮官から解任する。また、現役を解除し、予備役編入――その上で共生宇宙軍刑務所にて冷凍刑10年に処す」
するとカークライト提督を囲む軍人たちが「くっ」「それは……」「むぅ」と呻き声を上げるのです。
「れいとーけい? 冷凍刑ってどんな罰なの~~?」
「えっと身体をカーボンフリーズして凍結させ完全なる拘束状態におくという相当な重罰――か。うわ、これって、僕らだったら宇宙を飛べないしご飯も食べられないんだ。思考すら凍結されるんだから――」
「うげっ、それは酷いわ!」
冷凍刑なるコードを引き出したデュークの言葉に、ナワリンとペトラは「あんまりだわ!」「提督はなにも悪くな~~い~~!」とクレーンをフリフリ抗議の声を上げました。
「独断専行はそれだけの重みがあるのだ」
龍骨の民の少女達の抗議に対して、ラビッツ執政官は「それが軍法というものだ」と平坦な口調で応えます。カークライト提督も「当然だな」と表情も変えずに言うのです。
「でも、それはあんまりです!」
デュークは「あんまりだ!」と叫び、ナワリンは「わけがわからないわ」と嘆き、ペトラは「裁判長、ここは無罪でどうですか~~」などと意味不明なセリフを吐くほど混乱します。
「共生宇宙軍法、また連合法にすら違反している行動なのだ。デューク君、分かってくれ給え」
「で……でも……」
そこでデュークは少しばかりアワアワしながら「な、なら――」と次の句を吐き出します。
「執政官閣下、その、あの……先程のご褒美って、別のものでもいいですか? ご飯以外のものでもいいですか?」
「うん?」
デュークは「小惑星ではなく、別のものをください!」と言うのです。いつものナワリンたちがそれを聞いたら「お主、龍骨がネジ曲がったかっ?!」とか「デュークが、壊れた~~!」などというのでしょうが、このときばかりは押し黙っています。
「ほぉ、龍骨の民が
「ええと……カークライト提督の――め、免責をお願いします。せめて冷凍刑だけは堪忍してあげてください!」
デュークが龍骨の中のコードを引き出し免責という言葉を発すると、ナワリン達は「よしっ、よく言ったわデューク!」やら「それはグッドな取引だよぉ~~!」とはしゃぎました。
「む……しかし彼が行った軍権の逸脱については、何らかの対処をせねばなるまいと。ゴルモア星系および各星系の無断放棄は明確な命令違反であり、現地での事情を鑑みても……」
ラビッツ執政官は
「なにか別のものではだめだろうか?」
「ええと、ダメです」
いつもはそれほど意思の強いところ見せるタイプではないデュークでしたが「これは譲れません。それに、なんでもいいって言われたのは執政官ですから!」という程に艦首をクイッと上げました。
「だめか?」
「ダメです」
それは龍骨の民の基本的に温和で人懐っこいという特質――それと同居しているある種の頑固さというもの発露だったのかも知れません。ラビッツ提督は口をすぼめながら「生きている宇宙船のこの顔、どこかで見たことがあるぞ……ああ、龍骨の民の先代執政官がこんな顔してたか」などと思います。
「ふむ…………まぁ……」
と、ラビッツが何かを言いかけたときです。事態を傍観していたカークライト提督が「閣下」と呼びかけました。
「なんだろうか?」
「それこそダメです。やはり独断専行の責任は取らねばなりません」
カークライト提督は否定を許さぬ断固たる口調で「そのようなことをすれば、示しがつかなくなります」と告げました。
「……すまんがデューク君、ご所望の免責は当の本人が断っている」
「そういうことだな、デューク曹長」
「ふぇっ……なぜですか、提督ッ?!」
「責任者とは、責任をとってこそ、だからだな」
デュークの背中を叩きながら「指揮官たるもの、その覚悟がなければならないと、言ったことがなかったか?」とカークライトは諭しますが、デュークは「納得がいきません!」と喚きます。
「納得の問題か。私は納得しているが?」
「でも、でも、冷凍刑になったら、ガッチガチの氷漬けになって!」
「そうよ、思考まで凍結されて、心まで氷漬けにされてしまうわ!」
「10年もご飯食べられないなんて酷い~~あっちょんぶりけ~~!」
デュークはジタバタジタバタしながら「くっ……僕にもっと力があれば」と重金属の歯をギリリとさせます。ナワリン達は「こうなったら私達の本体でクーデタを起こすわよ!」とか「げっへっへっへ! 執政官を人質にィ~~!」などと物騒極まりないセリフを漏らすほどの混乱を見せました。
「おいおい嬢ちゃんら、あんたらも軍人なんだから冗談でもクーとか言うもんじゃねぇぞ。まったく、龍骨の民ってやつはフリーダムな生き物だぜ……」
見かねたスイキーが「それにやめろよ。提督が困っているじゃねーか」と言うのですがナワリンたちは「飛べないトリが何をいうの!」やら「毟っちゃうぞ、羽毟るぞっ~~!」とすごい剣幕で怒りの声をあげるのです。
「俺に怒るなよ……つーかさ、俺は冷凍刑ってヤツは良い処分だと思うぜ?」
「ふぇぇぇ……スイキー!」
「良い訳がないじゃないっ、あんた阿呆なの!?」
「そうだよ、トリ頭の上、馬鹿なんじゃなぃ~~?!」
デュークは「な、何を言うんだ君は!」と憤り、ナワリンは「種族ごと母星を消されたいわけ? 龍骨の民を怒らせるとただじゃ済まないわよ!」と目を吊り上げ、おペトラなどは「重γ線レーザーで焼かれるのがいいかな? 熱核爆弾と対消滅弾頭もおすすめよ。それとも重力子兵器で形も残らないのがお好み?」と、いつもと違う冷めた口調で選択を迫ります。
「だぁぁぁぁ、だから物騒な事言うなって……あのな、ちょっと良く考えてみろよ」
「ふぇっ、何を?」
スイキーが「今のカークライト提督の状態だよ。ほれ、よく見てみろ」と言うものですから、デュークは提督の姿をマジマジと眺めます。
「うん、生前の姿のまま――幽霊だけど」
デュークの視覚素子には、サイキック能力の影響か思念そのもの――幽体とも霊体と化した提督の姿がありました。ナワリン達は「南無阿弥陀、南無阿弥陀仏~~迷わず成仏ぅ~~!」やら「いや、成仏させちゃだめでしょ……」などと呟きます。
「こいつは思念の塊みたいなもんだ――そうだな、お前たちで言えば活動体ってやつに似ている。そうなると、本体はどうなっている?」
「えっと、まだ棺桶に入ってる……氷漬けで」
カークライト提督の身体は賦活処理を受けたあとも意識が回復せず、その思念だけが宙を漂っている状態でした。
「つまり、冷凍刑になってもあまり変わらないってことだ。思念体は自由に動けるようだし、物を考えることもできるからな」
「あっ……」
思念体を冷凍する技術は現在の連合にはありませんし、そうなると本体を凍結することになるのですが、提督の自由は保証されているということなのです
「拘禁刑というより、事実上の名誉刑というわけだな。独断専行は重犯罪かもしらんが、提督は功績をあげてもいるし、故意ではあるけれど悪意は全くないからな」
カークライト提督は独断専行の責任はとらないといけませんが、思考と行動の自由は保証されることになるのです。その上、彼のサイキック能力をもとにした幽体であれば、相当な距離を移動することすら可能でした。
「それなら納得が行くかよデューク?」
「ええと……そういうこと……か。あ、あれ? で、でも、なんでスイキーはそういうことを知ってるのさ?」
手品の種を披露するのはその仕掛け人――デュークはそんな事をチラリと思いながらも、素朴な疑問を口にします。
「なんでって、こいつは俺の提案だもの」
「ふぇっ?!」
「そこのウサギな執政官は、種族は違うけれどよ、俺の叔父貴みたいなものでな――通信態勢が整った時に――おじさん、おじさん、どうせバランスを取った落とし所を見つけようとしてるでしょ? だったらこんな手はどうですか? ってな感じで根回ししておいたのさ」
執政官は「実にうまい手だとおもうね。スイカード、君も親父さんに似てきたな」と苦笑いします。ペンギン帝国の皇太子でありまた執政官の一族でもあるスイキーは、ウサギの執政官とは家族ぐるみの親交があるのでしょう。
「ちっ、貶されてるのか、褒められてるのかわからねーなぁ。だがまぁ、これでとりあえずは一件落着ってことだ。わかったかデューク」
「な、なるほど……そういうことだったのかぁ」
この問題は単純に今回の裁定だけで片がつくような問題ではないのですが、取り急ぎのところはこれでどうにかはなりそうです。四角いものを丸く収める立役者となったスイキーは「クワカカカカッ!」と高らかに笑うのでした。
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