第177話 司令部へ
「ここが集結地点の星系だぜ」
デューク達はデッカ―に先導され、比較的短い超空間航路を抜けて、別の星系にジャンプアウトしました。
「たはぁ……早めに来たつもりが、随分と数が増えているな。艦隊構築が始まってやがる」
星系内には多種多様な数多くの艦艇が続々と到着し、憲兵の紋章を抱いたフネが到着した軍艦を右に左に捌いていました。その先では、軍艦が保つ役割を組合わせて、様々な役割を持った部隊が構築されつつあるのです。
「あ、あそこでは巡洋艦と駆逐艦が集まっているぞ。水雷戦隊を構築しているんだなぁ。命知らずのフネばかりなんだよね」
「遠くにいるのは、戦艦と巡洋艦の集団の重火力戦隊ね。長距離砲ばかり揃えた砲兵大隊もいるわ」
「フリゲートの哨戒戦隊だ~~! あっちは艦載機を持った空母かな~~?」
編成された部隊から、補給を受けたり訓練を開始しています。
「工作艦に補給艦、徴用病院船もいるや。後方支援部隊ですね」
「そうだ、重要な部隊だぞ。兵站や整備――後方支援がしっかりとしていないと、継戦能力が不足して、戦い続ける事ができんのだ」
デッカーは「憲兵隊もその一つなんだ」と言いました。
「そりゃぁ、これだけの艦艇が集まったら、交通整理って、絶対必要ですよね……おや、あれは――」
デュークが視覚素子をキョロキョロさせていると、なんだかとても大きなフネの姿が視界に入ります。
「――うわっ、なんだあれ! 随分とでかいフネがいる!」
「え、どこ……あらほんと! 物凄くでっかいわ!」
「ぎょぇ~~デュークよりも何倍も大きいよぉ~~!」
とある部隊の中心に、差し渡し全長5キロ以上はある巨大なフネがいるのです。
「あれは龍骨の民ではないなぁ。それに戦闘艦種だと思うけれど、主砲が付いていないけれど……なんだろう?」
「平らな板が伸びているわね。そこに艦載機が沢山乗っているのわ」
「だったら、超大型の空母ってことかな~~?」
そのフネは長くて幅広い装甲板を何枚も伸ばし、その上に多数の宇宙船を載せているのです。
「おいおい、乗っているのは艦載機じゃねぇよ」
そう言ったデッカーは――
「ありゃぁ、”フネ”を載せているんだ」
――と言ったのです。
「フネっ?! あ、たしかに乗ってるのは駆逐艦だ!」
「フネを載せたフネだ~~!」
「じゅ、巡洋艦も接舷しているわ!」
デッカーの言う通り、そのフネは甲板上に軍艦を載せていました。あまりにも大きいので、乗っているフネが艦載機のように見えるのです。
「あれは
「艦母ですか!」
艦母とは一種の要塞艦であり、軍艦サイズのフネの整備や補給、修理まできるものでした。
「はぁ……フネのお母さんってところかしら」
「まぁ、どちらかって言うと機能的にはネストみたいなもんさ。主要種族のどこかが供出した兵器だがな」
巨大な艦体の中央には、補給のための様々な物資が詰め込まれていますから、龍骨の民にとってはネストの様なものなのです。
「移動するネスト~~~~! すごい~~!」
「ああ、第三艦隊でも数隻しか無い貴重な存在だぜ。こいつを中心に、数百隻くらいの艦艇が集まって、”艦母打撃群”を構築するんだ。艦隊の基幹戦力ってやつだな」
「艦母打撃群っ! なんだか強そうですね! もしかして、僕たちもあそこに配属になるのですか?」
「うんにゃ、お前さんらの配属はあそこじゃないぜ。だけど、挨拶だけはしておけや。いつかご厄介になるかもしれんからな」
デッカーが挨拶するように促したので、デューク達はクレーンをフリフリさせながら「こんにちは――!」などと挨拶をすると――
”こちら艦載母艦ゴッド・セイブ・ザ・クイーンズ。お腹が空いたり怪我をしたら来てちょうだいね”
――艦母の艦長は、龍骨の民が挨拶をしてきたため、その様な返答を返してきました。随分と茶目っ気を持っている軍人のようです。
「「「お腹へってまーす!」」」」
デューク達が冗談半分、本気半分な回答をしました。
「飯は後だ。先に司令部にゆくぞ。司令官直々の出頭命令がでているんだからなぁ。位置は――」
デッカーはアンテナをピョコンと立てて艦隊ネットワークに入り込み、通信の流れを読むと、「あそこだな」と言いました。
デューク達はデッカーに引率されて、司令部のある方角を目指しました。
星系内をしばらく進むと、デュークの視覚素子に直径500メートル程の輪っかの中に球体を閉じ込めたような形をしたフネが入ります。
「なんだあのフネ、面白い形をしているなぁ」
「軌道ステーションを小さくしたようなリング型だわ。アンテナをたくさん生やしているわねぇ」
「あれが艦隊司令部となる司令部船だ。 中央にある球体が指揮ユニット――凄い数の通信装置がついているだろ? あのフネだけで数千隻の艦艇の指揮を取ることができるんだ」
「へぇ、でも武装らしいものがほとんどありませんね」
「司令部が主砲をぶっ放すようになったら、負け戦ってことだろ。そのかわりあいつは、要塞クラスの装甲と、艦外障壁をもっている。丸いリングは防御装置で、各種の防衛装置が満載されているのさ」
「なるほど……でも、推進器官もないんですが」
デュークが見たところ、司令部船には、小規模な推進装置しか付いていないように見えるのです。
「推進モジュールは自律航行ができる最小限の構成になっているからな。全エネルギーを指揮ユニットに回すための措置だ」
「え、それじゃぁ、とっても足が遅いじゃないですか。それで艦隊を指揮できるんですか?」
「ま、おいおい分かるだろうぜ――とにかく司令官にあってからだ」
デッカーは「活動体に入って司令部船に入るぞ」と言いました。
◇
「厳重な警備ですねぇ」
「そりゃぁ、分艦隊とは言え艦隊司令部だからな。変なやつが入れないようにしてるんだ」
デューク達は活動体に乗り移り司令部船の中に入りました。中はいくつかの防爆隔壁で仕切られ、ハッチごとに完全武装した衛兵――陸戦隊が警備をしています。
「さて、この中が艦隊司令部となる作戦室だ」
デッカーに連れられて、デューク達が作戦室に入ると、直径100メートル程の球形の空間が広がっているのが分かりました。球状の空間の中心には、重力制御されたフロートが幾つか浮かんでおり、制御卓のようなものが幾つも備わっています。
「空中に情報が浮かんでいる……」
空中には沢山の情報――「
「これは艦隊のリアルタイムデータかぁ。ここでは、艦隊情報が手にとるように分かるようになっているんだ」
「艦隊ネットワークがここに集中しているのね」
「すっごい情報量~~頭が沸騰しちゃうよぉ~~!」
デューク達は作戦室の中に浮かぶ立体映像を見て、艦隊の状況が即座にわかるようになっているに気づきました。
「おい、見とれてないで、さっさとあそこに降りるぞ」
作戦室の中心に浮かぶフロート群を指したデッカーは、その中でも最も大きいもの――直径10メートルはある所に向けてデューク達を導いたのです。
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