デューク再び大地に立つ
第155話 陸戦あるいは害獣駆除
「デュ――ク! 弾! 弾もってこいデュ―――――クッ!」
第四艦隊への出張を終えたデュークは、とある惑星の大地に立っていました。そんな彼に、大音量の命令が下ります。
大型のサルから進化したと思われるサル顔のヒューマノイドが、声を張り上げてデュークに弾薬を要求しました。彼は共生宇宙軍陸戦隊の倍力装置付きパワードアーマーを着こみ、大型の機関銃を掲げています。
「コング大尉、弾って、これですかっ――?!」
フネ用増加装甲――龍骨の民に合わせたパワードスーツを着用した活動体のデュークが、弾薬箱を背中にくくりつけて、声の主の元へスルスルと浮かびながらたどり着きます。
「早くよこせ!」
デュークがクレーンを伸ばして銃弾の詰まった弾帯を差し出すと、ゴリラ顔の軍人――コング大尉は、パワードアーマーの上からもわかるほどの大きな手で、ひったくるようにして取り上げ、大きな銃に装弾し――――
「ゴホォォォォォ――!」
――力強い雄叫びを上げ、引き金を引きました。すると、共生宇宙軍制式小銃の銃身を延長させた電磁式軽機関銃の筒先から盛大な火花が散り、加速された弾丸がばらまかれます。
「ンゴォォォォォッッ――!」
コングは鬼気迫る勢いで引き金を引き続けました。本来地面に押し付けて、二脚のポッドを用いて固定しながら射撃するべき機関銃――凄まじい反動が彼を襲いますが、それを強力な筋力を更に倍加させた力でねじ込んでいます。
GeBoooooooo!! とした発射音が響く中、片手で軽々と反動を抑え込んでいるコング大尉の姿に、デュークは「この大尉は
「見ておらんで、お前も撃て! お前も陸戦隊だろうが!」
「は、はい――!」
デュークは、背中に括り付けたライフルの発砲を開始しました。新兵訓練所時代に身につけた、龍骨の民の陸戦モードです。
「狙い定めて――撃ッ! だんちゃぁぁぁ、く――今!」
デュークはいつもの調子で、丁寧に狙いをつけ、これも習性になっている弾着を行いましたが、「呑気に、弾着確認するなっ! ばら撒け、ばら撒け!」と、コング大尉は激怒し、フルオートで撃てと命令しました。
「ええ――それじゃ弾が持ったいないですよぉ!」
「バカモン! あれを見ろ、撃てば当たるだろがっ!」
デュークが艦首の先1キロほどを確かめると、黒ぐろとした大地が見えるのです。それは手前に見える本来の惑星の大地の色とは全く違い、黒光りして光を乱反射して見える異質なものでした。
「確かに……」
デュークが視覚素子をズームすると、底には体長1メートルほどの――”生き物”――夥しい数のソレが、地面を覆い尽くしているのがわかるのです。
「すっごい数だ――!」
デュークは、その数に驚き、また「
「感心してないで、撃て!
コング大尉は、更に引き金を引きました。放たれた弾丸は黒ぐろとした生き物達に連続して着弾します。着弾と同時に、弾丸は充填された軍用高性能炸薬を破裂させながら、鉄片を周囲1メートルにばらまきます。
その威力は、共生宇宙軍陸戦隊の個人用武装としては相当に面制圧度の高いもの――対象が非装甲であれば、単身で一個大隊と渡りあえるという剣呑なものでした。
炸裂した鉄片と爆薬は、破壊のサイクロンとなって荒れ狂い、黒光りする生き物をなぎ倒し、粉砕し、なにやら茶色なのか赤色なのかよくわからない液体を撒き散らせました。
「………………うわぁ」
宇宙空間での戦い――陸戦よりは、比較的綺麗とされている――に慣れているデュークには、
コングは新しく弾帯を装弾し、ついで加熱した銃身をゴキャン! と外して交換しながら――小さく呟きます。
「むぅ……」
「え…………もしかして……」
コング大尉が呻くのを聞いたデュークは、先程まで地獄絵図が描かれていた1キロほどのところ――そこに黒ぐろとした生き物の新たな一団が現れたのを見つけました。
「ひぃぃぃ――まだいるのか――!」
「1匹見つけたら、10匹はいると思え――陸戦隊の教訓だ」
コング大尉は、なんとも忌々しげな顔をしています。
「う、動き出しましたよ……カサコソカサコソ――そんな
デュークの視覚素子には、黒ぐろとした生き物が、這いつくばるようにして前進を始めたのが映るのです。
「ああ、俺にも聞こえるぞ――虫けらどもの足音が、な」
コング大尉は奥歯が割れるかと思うほどに歯を噛み締め、「ここは一旦、引き上げるぞ!」と、吐き捨てるように言ったのです。
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