第153話 弾着、貫通、そして

「3、2、1、だんちゃ――――――――く!」


 デューク達が放った重エネルギー光線が、キノコ船の至近を――


「遠、遠、遠……外れたぁ!」


「あんた何やってんのよぉ――私まで外したじゃない!」


 ――かすめて行きました。超長距離からの射撃は当てるのが難しいのです。デュークと同じデータを用いて射撃したナワリンも見事に外しています。


「第二射――弾着……近、近、近! 今度は手前すぎたか……微かな点みたいな的に当てるのは難しいなぁ」


 二回目の射撃は、キノコ船の進路手前をかすめてゆきました。龍骨の民にとっても、超長距離の射撃は初弾必中とは行かないのです。


「ええぃ、まどろっこしいわ――次は私のデータで撃つわよっ!」


「うわぁ、そんな強引にコントロ―ルを取らないでっ!」


 ナワリンが射撃管制を強引に奪って、デュークの副脳を指揮下に起きました。デュークは抗議するのですが、ナワリンは我関せずと射撃態勢に入ります。


「私にまかせなさ――――! 第三射よぉ――――!」


「仕方ないなぁ……よいしょっと――!」


 デューク達は、ナワリンの射撃管制データに基づき、ガンマ線レーザーを放ちました。


「だん、ちゃぁぁく……………………ふっ、命拾いしたわね」


「かすめてすらいないよ。僕よりひどいな」


 ナワリンが先導した射撃は、まったく意味のないところに飛んで行きました。その頃、巡洋艦の二隻もレーザー射撃を続けています。


「遠、遠、近……うわぁい、一発当たったぁ~~! メノウさんのデータってすごいよぉ~~!」


 彼女たちの射撃は、ベテランであるメノウのデータを使ったいるので、数発の命中弾を得ています。


「でもぉ、流石に遠すぎるわねぇ。効果が薄いわぁ」


 メノウとペトラのチームは、初弾を命中させていましたが。でも、レーザーの焦点があっていないようです。


「それに、これまでのキノコどもより、装甲が厚いようねぇ」


 レーザーはキノコ船に到達すると、生体装甲である外部構造を炙って溶かすのでさうが、融解した生体装甲が気化蒸発するために、熱が吸収されてしまうのです。


「メノウさん、どうしますか?」


「ふむん……」


 と、メノウは少し考えてから――


「全艦、舵そのまま――推進器官、増速なさぁい。近づいて、ぶっ叩くわぁ!」


――と指示をだしました。甘ったるくのんびりとした口調とは裏腹に、彼女の龍骨は意外に果断なのです。


 ◇


 デューク達は、推進剤を吹かして、キノコ船に近づきます。


「もうそろそろいいかな――って、うわっ、撃ってきたぞ!」


 デュークが射撃態勢に入ったときでした。キノコ船はバシバシとプラズマ弾を吐き出し始めます。


 それらは生体プラズマ砲――高エネルギー物質の塊を纏めてから、フワリと投射するキノコ船の主武装でした。直撃すれば龍骨の民といえども、火傷だけではすみません。


「私達で排除するわねぇ」


 メノウは、ガンガンガン! と電磁誘導加速装置――質量のある実体弾を撃ち放つレールガンの射撃を初めます。超加速された重金属のペレットは、プラズマ弾に飛び込んで爆散するのです。


「ペトラちゃんも、迎撃よろしくねぇ」


「ボクもデュークと射撃したいんだけどな~~」


 ペトラはブツブツと言いながらも、レールガンやら高加速誘導弾やらを打ち始めました。


「援護射撃されているうちに、やるわよぉ!」


「そうだねぇ、そろそろ狙って見るか」


 デューク達は、豆粒ほどに見えるほどへ距離が詰まったところから、主砲の狙いを改めてつけ初めます。


「砲弾充填、砲身冷却完了よぉ! ターゲット、マーク!」


「軸線上から話さないようにして、と――――ッ!」


 距離が近づいて収束率の上がった戦艦級のジゴワットレーザーが、ギョガッ! と放たれキノコ船に伸びてゆきます。


「目標を――夾叉した!」


 レーザはキノコ船を覆うようにヒットしています。複数の射線は吸い込まれるようにして――直撃を果たしました。


 装甲に当たったレーザーは、表面を溶かして気化させます。先程は、これにより熱が奪われて無効化されましたが、今度はそうは行きません。


 溶けた装甲は気体からプラズマに変化します。その上、後方から更にレーザーが照射されて、運動エネルギーが加わります。つまり、超高熱のプラズマジェットが、キノコ船の内側に向かうのです。


「赤外線反応――――よし、貫通したぞ! 今度は手応えありだ!」


「まだまだこれからよ――――! 喰らいなさい!」


 キノコ船の表面に爆発がいくつも生じる中、デューク達は続けて砲撃を行います。戦艦クラスの巨体を持つ宇宙船ですから、ジゴワット級レーザーの一つや二つであれば、耐えられるのでしょうけれど――


「弾庫が空になるまで――!」


「打ち続けるのを――!」


「やめない~~!」


 ――最後はペトラまで射撃に加勢したことで、数十本もの光の柱が、ビシバシとヒットします。


 そしてキノコは、ポン! と爆発四散したのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る