第150話 宇宙の華

 キノコ船に向けて、8隻の駆逐戦隊は雷撃位置へ進出を開始しました。対するキノコ船はプラズマ弾を投射します。速度は遅いものの熱量は十分なもので、直撃すれば駆逐艦の装甲ではひとたまりもありません。


「なんとか援護できないかな……」


「狙いを定めて……無理だわ!」


同族撃ちFrendryFireになっちゃうもんね~~」


 デューク達は主砲を持ち上げて狙いを定めるのですが、射線上には駆逐艦の姿があって、とてもではありませんが、射撃できませんでした。


「雷撃が終わるまでぇ指を咥えて待っているしかないのか……」


「そうねぇ。黙って待つのも、お・し・ご・とよぉ」


 ワタワタしているデュークたちに、メノウは待機命令を出しました。仕方がないのぉデューク達は「はむ……」「かみかみ……」「カジカジ……」などと、指を咥えて待つのです。


 そうそうするうちに、駆逐戦隊はキノコ船の射撃をかいくぐりながら、魚雷投射点まであと僅かの位置に到達します


「あと少し――――あ、キノコ船の弾種が変化した!」


「あのキノコ、レーザーまで持っているわ!」


「はえぇぇぇぇ~~凄い弾幕だ~~~~!」


 距離を詰められたキノコ船は、炭酸ガスを用いた光学兵器を使い始めます。火力は落ちるものの連続した射撃が可能な副砲や両用砲のようなものが――最終到達点に向けて進路を取る駆逐戦隊に向けて、無数に放たれます。


「回避してぇ!」


 ナワリンが叫びますが、すでに最終進路に入った駆逐艦達はそんな声など聞こえてはいませんでした。


「被弾しましたわ~~!」

「ふむ、装甲温度上昇」

「アチィ――! てめぇ! このやろうぉ!」

「もっと熱くなれよ!」

「ぐっ……やるではないか!」

「消火装置も作動なのです!」

「ダメコン発動急げ――左舷何やってんの弾幕薄いよ!」

「我、被害拡大――! 異論は認めない――!」


 被害状況が刻々と上がります。


「ひ、被害報告が来たわ⁉ 皆、小破以上だわっ!」


「先頭のミュラージュさんは中破してるぞっ?!」


「まだ、撃たないの~~?! やられちゃう~~!」


「「「も、もどかしぃ~~~~!」」」


 デューク達はクレーンの先をカジカジしながら、ハラハラと見守るのです。


 でも、メノウは、「大丈夫よぉ、私の妹達は、アレくらい沈むようなフネじゃないわぁ」と笑うのでした。


「被害を気にせず、敵の目の玉が見えるところまで近づいてぇ―――――――――今よぉ!」


 メノウが切れ長の目をカッ! と見開いたときでした。デュークはレーザーの雨が渦巻く前線に異変を感じます。長大なプラズマの光が8本、戦場に輝いたのです。


「あれは……緊急増速オーバーブーストの光だ――!」


「進路を変えたってことね」


「ということは~~」


 駆逐戦隊は、推進剤を盛大にぶちまけながら避退行動に入っています。「魚雷を投射したわねぇ」とメノウが呟きました。


「全艦、対閃光防御してぇ!」


 メノウがバイザーを下ろすように命令した直後、キノコ船の前面装甲付近で、眩い光がキカッ! と灯ります。


「つ、対消滅反応――――――――――!」

「光子魚雷を使ったのね」

「反物質~~?」


 駆逐艦が投射したのは、光子魚雷でした。反粒子で構成された弾頭を叩き込むことで、敵の装甲と対消滅する剣呑な兵器――たった数グラムで熱核兵器と同様のエネルギーを産むものです。


 その光は、一発や二発ではありません。立て続けにキカッ! キカッ! キカッ! キカッ! キカッ! キカッ! とした煌めきが巻き起こります。それは、まるで宇宙に咲いた、満開の華のようでした。


 その花びらは、大変剣呑なものなのです。激しい光の他、大量の赤外線や放射線が飛び込んできます。


「うわぁ……凄まじい熱量だ……」


「ひぇ、電磁波も凄いわ……」


「目が~~!」


 8隻の駆逐艦による8連装光子魚雷の同時弾着――デュークは爆発の熱量に戦慄し、ナワリンは大量の電磁波に驚愕し、バイザーを下ろすのが遅れたペトラは涙目になるのでした。

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