第142話 廃棄されたコロニーの近くで
「このあたりに僕らの僚艦が集結しているって聞いたけれど、どこだろう? 見当たらないなぁ」
第四艦隊
「ん~~レーダーを使っても、近くに小惑星帯が見えるだけ~~ほんとに、座標ここであってる~~?」
「初めての星系だけど、天測――移動距離計算――龍骨はここで正しいと囁いているよ」
デュークは龍骨をねじりねじりさせながら、位置情報を再確認してから、そう答えます。
「もしかして、あんた諸元を間違ってるでしょ? 繭化してからの
ナワリンが、デュークの新しいカラダを眺めながら、そう言いました。大きな怪我を負い首都星系で治療を受けていたデュークは、穴ぼこだらけだった装甲は元以上の厚みとなり、傷ついた器官も治り数を増しています。
その上、先日の繭化を終えて新しいカラダは――
「まぁたでっかくなって、1.5キロを軽く超えてるじゃない。絶対数値間違ってるわぁ」
ナワリンは、デュークの体長を眺めて、呆れたような声を上げるのでした。昔の彼女は、同じ戦艦の少年のサイズに嫉妬するくらいでしたが、これほど大きくなると、そんなことがバカバカしくなるのです。
「大きいというか~~デブってる感じ~~?」
ペトラが自分の4倍にもなるデュークのシルエットを眺めて、どうだかな~~? という風に艦首を振りました。
おおよその艦型は変わらないのですが、お腹の周りが随分と丸みを帯びたものになっていました。平均的なヒューマノイドでいうならば、いささか太りすぎ――そんな感じがに滲み出る姿になっていたのです。
「こ、こういうのは、か、貫禄があると言うんだよっ!」
「まぁ、どう表現するかは、あんたの勝手だけどどね――」
「丸っこい~~丸っこい~~!」
小惑星を半分ほども齧れば、太ましくなっても仕方がありませんでした。そして、こんなやり取りが、首都星系を飛び立ってから続いているのです。
「氷の衛星で氷を食べ過ぎたから、その分も目方が増えたのよ」
「う――推進剤として吐き出したと思うんだけどなぁ」
氷の成分の中には、結構な有機物が含まれていたようで、大変な栄養になったようです。デュークは、「やっぱり、齧るのやめとけばよかったか……」と反省するのでした。
「それはそれとして……私の計算でも、ここで間違いないのよね」
ナワリンの計算でも、この場所が集結ポイントであっているようです。デュークは、「計算があってるなら、デブってるなんていわないでよ」と思いました。
「あそこに廃棄されたコロニーが見える~~やっぱり、ここなんだね~~」
ペトラの視覚素子が見つけたのは、星系内に打ち捨てられた最早住む人もいない廃棄コロニーでした。艦隊から提供された星系内地図には、集結地点の座標近くにそれがあることが示されていたのです。
「おかしいな。10隻程度の小部隊だけど、それだけいれば簡単に見つかるはずなんだけどなぁ」
「
「ん――システムを全開にしてるけど~~~~」
3隻の中で最も優れた探査器官を持つペトラが、「何も見つからない」と言いかけたときでした。
「ん~~~~? これってば…………コロニーの影に熱源を確認! ええと、こちらに向ってるよ~~!」
コロニーの影に隠れていた何者かが、長大なプラズマの炎を吐き出し、デューク達に向かってくるのです。
「すっごい大加速をしてる~~~~!」
「赤外線情報から計算すると――100G、200G、いやそれ以上よ! 普通の宇宙船じゃあれほどの加速はできないわ」
「なんだかわからないけれど、レーダーで目標を捕捉しなきゃ――ウグッ?! ッッッ――――!
デュークが電磁走査を行うと、その鼻面に痛みすら伴うノイズが飛び込みました。それは、彼の電子器官を叩き一時的に視界をホワイトアウトさせるほほどのモノだったのです。
「いやぁ――――私の電磁系も真っ白ぉ――!」
「こっちも同じ~~油断してた~~~~!」
前線とはいえ、宇宙軍が掌握する星系内であったこともあり、デュークたちは電磁系統の器官の防御を怠っていたのでした。
「赤外線と光学系だけでなんとかするしかないぞ!」
「わかったわ――でも、あれは一体何なの?! もしかして敵?」
「
わけがわからないまま、デューク達は謎の敵? の襲撃に身構えるのでした。
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