第134話 闘技場観戦 その3
「ふぇっ! 客席が動いている⁈」
闘技場を囲んでいた観客席がズゴゴゴゴと音を立てて動き始めていました。デュークらが座っているフワリと浮かぶ客席も、闘技場の中心からスイ――と距離を取り始めます。
それに合わせて、闘技場のフィールドは面積をドンドンと大きして、直径は300メートルを超えたものになるのです。
「これは一体?」
「次の試合に備えて、闘技場を広げているのだよ」
「というと――」
「――次の試合は、大型の知性体が出てくるのだ。観客席に影響が出るほどだから、闘技場のサイズを大きくしたのだよ」
メリノーが言うには、知性体のサイズや攻撃力に合わせて、闘技場はサイズを変化させるようです。その内部機構は、重力制御された構造体で出来ていると言うのです。
「外見は古臭いようで、実はなかなかハイテクなのだ」
闘技場の観客席は形を変えながら、拡大してゆくのです。そして、その中にあるバトルフィールドも大きなものになっています。
「随分と広くなりましたね」
「次の試合は、相当に危険なものだからな」
メリノーが続けて、「これでも不足かもしらんな――」などと言った時でした。
「地面が沈んだ――」
デューク達が見つめていたフィールド――広大なそれがボコリと沈下したのです。
「な、中から、なにかが浮かんでくるぞ!」
闘技場の中心は、一旦沈下したと思いきや、砂塵をかき分けてなにやら大きな構造体が浮かび上がってくるのです。
「ドームの中のドーム……これが本当のバトルドームなのさ」
地面を押し上げるようにして、弾き飛ばしながら盛り上がってきたのは透明な天蓋でした。
「地面の中から、ドームが出て来た……これは、デュラスチール系の素材か?」
デュークが見たところ、それは透明でありながら、随分と強度を持った素材で構成されていたのです。
「第五艦隊の根拠地にあった、リニアレールの軌道と同じものね」
デュラスチールは透明度が高く、そしてとても硬い金属ですが、宇宙線に弱いという特性があるため、都市の内部構造物や、電磁性であることを活かしてリニアレールの軌条として用いられています。
「すっごい分厚いわ~~! 戦艦の装甲みたい~~!」
「は、確かに確かに……あの天蓋は、戦艦と同じほどの厚さがあるのだよ。その上。君たちが艦外障壁と呼んでいる、バリアの機能も付いている」
「へぇ……でも、なんでこんなものが?」
「そいつはね――これから始める試合に必要だからさ。あれを見てご覧」
メリノーが指さしたところ――闘技場の端の方、その地下部分からなにやら大きな物体がゴロゴロと転がり出てきました。
「あれは――?」
デュークらの視覚素子には、それが10メートルほどの黒い球体に見えました。
「なんだ、あの球は…………光の吸収率が99.9%以上だぞ」
その球体は、周囲の光を吸収するように見えるのです。たとえるならば、漆黒の宇宙空間をそのまま形にした様な玉なのです。
「ええと……あの質感は、もしかして、超構造体かしら?」
「縮退炉のブランケットに使われている、あれのこと~~?」
超構造体はデューク達にもなじみの深い縮退炉――超重量を閉じ込めたエネルギー炉の外側に使われているものでした。極めて強い金属で、重力子に反応してさらに強固になるという性質があります。
「では、アレは宇宙船のエンジンってことですか?」
「いや、確かにあれは超構造体だが、中身は縮退物質ではないのだ……あの中身が次の試合の選手なのだよ」
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