第91話 龍骨慕情 前編

「ん――カラダの痛みがなくなってる。熱も下がったみたいだ!」


 デュークが目を覚ますと、熱っぽかったカラダが落ち着いて随分と良い気分になっているのに気づきました。そこで彼は、カラダを起して毛布を引き剥がそうとするのですが――


「おや、なんだこれ?」


 カラダの周りに何かが纏わりついているような違和感を感じるのです。


「あ、これは外殻の抜け殻だ。なんでここに、こんなものがあるんだろ?」


 デュークが手にしたそれは、幼生体が大きくなるときに剥がれ落ちる外皮に見えました。彼がそれを不思議そうに眺めていると、スイキーが声を掛けてきます。


「よぉ、起きたかデューク。調子はどうだ? って…………ありゃ?」


 デュークのカラダをマジマジと見つめたスイキーが不思議そうな声を上げました。


「お前、そのカラダどうしたんだ。初めて出会ったときみたいな真っ白な肌に戻ってるじゃねーか!」


「あっ、ホントだ!」


 デュークが部屋に設えられた鏡を眺めると、そこには真白な肌を持つミニチュアが映っていたのです。土の色がしみ込んで、洗濯機に入ってゴシゴシしても落ちなかったカラダの色が元どおりのツヤツヤの白い姿に戻っていたので、彼は大変ビックリしました。


「汚れが、綺麗サッパリなくなっていますね」


「どれどれ、ほォほォ、真っ白じゃのぉ」


「わぁ、ツヤツヤねぇ!」


 脇にやってきた他の仲間達も、デュークの真白なカラダを眺めて「まるで新品のようだ」などという感想を持たしました。


「あら? 白いのはたしかに白いけど、それよりデューク、背中に生やしているのは一体なにかしら?」


「せ、背中? あっ、これって……」


 マナカがデュークの背中に見慣れないものが付いているというのです。デュークがクレーンを伸ばして背中を触ると、角張った形を持つ箱型の何かが乗っていて、筒のようなものが伸びているのがわかりました。


「こいつは回転砲塔ってやつだぜ!」


「三連装の砲身が伸びていますなぁ」


「ほぉ、三つも付いておるノ」


 これまでデュークの背中――甲板上は、ちょっとしたアンテナ位しかなかったのですが、そこに三連装三基の砲塔が載っているのです。


「そうか、僕にも砲塔が生えてきたんだ……」


 デュークはそのうち砲塔が生えてくるかもしれないと、お祖父ちゃん達がいっていたことを思い出し、自分にも回転砲塔ができたことに大変喜びました。実のところ彼は、両舷にもとから付いていた大砲だけでなく「僕も回転式の大砲もほしいなぁ」と内心思っていたのです。


「わーい!」


 鏡に映る自分の姿を眺めたデュークが砲塔をクルクルと回しながら喜びました。スマートな流線型のカラダの上に、ゴツい作りの砲塔が鎮座し大砲がズドン! と伸びているさまは、得も言われぬ満足感を彼に与えるのです。


「ミニチュアに生えて来たってことは――――あ、感じるよ、本体の方にも砲塔が生えてる!」


 デュークが思念波リンクを軌道上のもう一つの自分に向けると、そこでも回転式の砲塔が備わっているのがわかるのです。


「龍骨の民というものは、本当に武装が生えてくるのですな、実に興味深い」


「ワシら樹木も枝や生えるし実をつける生き物じゃが――龍骨の民は武装が生えてくるものなのか。さすがは生きている軍艦だのぉ。ほっほっほ!」


「やっぱ戦艦といったら、こういう大砲が必要だよな。男のロマンだぜ!」


「男のロマンはわからないけど、大砲が乗ってバランスがよくなってるわ」


 パシスは感心したようにうなずき、キーターは長い枝をフルフルと振って「おめでとう」と告げ、スイキーは愉快げな笑みを浮かべ、マナカは「可愛らしくも力強いわ」とデュークの背中にある砲塔のミニチュアをなでました。


「でも、なんで今頃生えてきたのかなぁ?」


 生きている宇宙船の武装は結構いい加減に生えてきます。それは龍骨に潜む設計図が、必要なタイミングで発動するという、時限式遺伝子の発現めいたものなのです。


「必要なタイミング――――軍の訓練でカラダが出来てきたからかもしれませんな。または龍骨の中のご先祖様のおかげかもしれません。こないだの話によれば、ご先祖様システムというものは――」


 結構な学があるパシスが、デュークに砲塔が生えて来たことについて考察するのですが、それはあくまで推論であり、その部分について研究している専門家であっても、まったくわからないものなのです。


「小難しい話は置いといて――こんなに男前になったら、あれよね――」


「ああ、デュークが色男になっちたなぁ。へっへっへ、つーことは――」


 マナカとスイキーが目配せしながらニヘラっと笑いました。二人が口々に「あれ」というので、デュークは「あれってなに?」と艦首をかしげながら尋ねます。


「「分かっているくせにぃ――!」」


 スイキーとマナカはデュークの艦首をクリクリと突きながら、嬉しげにこう続けます。


「その姿あなたの彼女――ナワリンちゃんに見せたら――」


「メロメロになっちゃうぜ! よかったな色男!」


「ふぇっ?!」


 スイキーとマナカはその様に告げると、デュークはなんとも面食らうのです。たしかに、軍艦型の龍骨の民には強大な武装を持った異性を好むという傾向があるのですが――――


「いいから、早く彼女の所へ行って見せてきなさいよ」


「ああ、俺達は今日は邪魔しねーぞ。お前一人で行ってこい」


「私はお化粧品買ってくるわね。はぁ、訓練でお肌ボロボロだわ――」


「俺は映画を見てくるぜ。宇宙海賊スレイヤーさんの新作が出てるんだ」


 いつもは下世話な二人が「今日は干渉しないから」と言って、外にテクテクと出ていきました。


「ワタクシはグラウンドにいって穴をほってきますね。地面の中でヌクヌクするのです。彼女さんによろしくですよ、デューク」


「ふぅむ、今日は良い日和のようだからな、陽の光を浴びにいくとするか。どこかで一緒に光合成できる雌花はおらんかのぉ……」


 先に出ていった面子に続いて、パシスとキーターもデュークを置いて部屋を出て行きました。


「皆、勘違いしているよ。そういうのじゃないんだけどなぁ。あれ……そうだよね……?」


 仲間たちにからかわれているのはデュークにもよく分かっているのです。でも、デュークは自分の中に何だかよくわからない気持ちがあるのに気づいて、わずかに戸惑いました。


「とにかくナワリンのところへ行ってみるかぁ」


 デュークは扉を勢いよく開けると、元気よく宿舎の外に飛び出していきました。



「いい天気だなぁ。あ、あそこだったね」


 キラキラとした陽光とからりとした空気の中、デュークは目的地に向かって重力スラスタをスルスル吹かしていました。それなりの広さがある訓練所とはいえ宿舎の目星は付いていますので、彼はすぐ目的地に到着します。


「あれ? ナワリンのネームプレートはあるけれど、ペーテルの名前がないぞ……」


 デュークが扉の脇のネームプレートを眺めると、ナワリンの名前はあるのですが、ペーテルのそれがありません。


「そういえば、お腹の調子が悪いってたけど……無くなっているってことは……ま、まさか――――!」


 名札が無くなっているということは部屋の中にペーテルがいないことを示しています。


「な、何かあったんだ!」


 なにやら最悪の事態をいろいろと想定してしまったデュークは、部屋のドアをガンガンガン! と激しくノックします。すると、ナワリンがすぐに顔をだしました。


「な、ナワリン、どーしたの、なにかあったのっ?!」


「わわわわっ!?」


 デュークがものすごい勢いでカラダをワシャワシャワシャとゆするので、ナワリンは泡を食ってしまいます。


「落ち着いて、落ち着いてよ――ゆさぶらないで!」


「あ、ごめん――――えっと、ペーテルのネームプレートが無くなってるけど、大丈夫なの?」


「あ! それか――――ええとねぇ……」


 ペーテルの安否を尋ねると、ナワリンはなぜかもじもじと答えをはぐらかすのです。だから、デュークは「ふぇっ、やっぱりなにかあったんだ! どーしよー!」などと慌てふためきます。僚艦フレンズの一隻として認めあっていた仲間に何事かがあったと知っては、致し方がないことかもしれません。


「大丈夫だから落ちつて! ペーテル……というか、その――アレは中にいるわ」


「ほ、ほんと?」


「そうね、見たほうが早いわ」


「見たほうが? って、なんだよそれ……」


 デュークが少しばかり混乱している様子に、ナワリンは「いいから、入りなさい」と言って、彼を部屋の中に引き入れます。


「ヤツは、あそこのベッドよ――――」


 ナワリンが示した部屋にあるベッドには毛布がかかった1メートル程の物体が鎮座していました。中にはフネのミニチュアがいることは間違いありません。


「ほら、デュークが来たわよ。早く起きなさいよ!」


 そう言ったナワリンは、毛布の上からペシペシとクレーンで叩きました。するとこのような、甲高い電波の声が返ってきます。


「あ、だめ、やっぱり恥ずかしい~~」


 毛布を被ったフネのミニチュアはなにやらプルプルと震えながら、起きるのを拒否するのです。


「ふぇ、なにが恥ずかしいのさペーテル。あれ、なんだかいつもよりも甲高い声をしているねぇ。電波発振器の調子でもおかしいのかな?」


 デュークはペーテルの声音がいつもよりも微妙に高いことに気づきました。


「調子は悪くないんだけど~~~~!」


 そう言ったフネのミニチュアは、毛布を引っ被ったままジタバタジタバタと飛び跳ねました。傍からみていると、なんだか大きな饅頭がピョンピョンしているようにも見えるのです。


「ええい、こうなったら観念なさい。起きろ、おりゃっ――!」


 様子を横で眺めていたナワリンが「まどろっこしいことは嫌いよ!」と、毛布の端を掴んで、気持ち良いくらいの勢いで引っ剥がしました。


 ナワリンが毛布を引っぺがすと、蒼色をした流麗なシルエットを持つ”巡洋艦”のミニチュアがドーンと現れるとともに、「きゃぁ――!」という甲高い叫び声が放たれます。


「ん? 巡洋艦の活動体じゃないか。ペーテル、商船の偽装はもうやめたのかい?」


 訓練所までの旅路で「ボクは船なんだ~~!」と言っていた蒼き重巡は自分の事を巡洋艦であることを認め、本体に置いては偽装することをやめています。でも、活動体の運用に置いては「ガワの座りがいいんだ~~」と言って、商船の着ぐるみのような外装を好んでまとっていたのです。


「そう、やめたのよ~~!」


「ふぅん……それよりやっぱり声が変だね。大丈夫かい?」


 デュークは巡洋艦が放つ電波を受けて「なんていうか女の子みたいな声になってるなぁ」と呟きました。そして彼は、目の前の活動帯の視覚素子をまじまじと見つめるのです。すると――


「あれ? なんだろう、変な感じだ……」


 デュークは、龍骨に何か違和感を感じるのです。龍骨の民には雌雄の別があるのですが、それは外見や言葉尻、雰囲気と言ったもので判別ができるもので、生体センサである視覚素子の形状でもわかるのです。


 デュークが見つめたその視覚素子にはどこかフワッとした柔らかさがあり、それは切れ長なナワリンのそれとは形状は違っていても、性別としては同じものだと一目瞭然のものでした。


「きゃぁ――!」


 デュークに覗き込まれた薄青のフネは、甲高い声を放つと、また毛布をかぶりなおします。


「…………ねぇ、ナワリン?」


「なによ?」


「ええと、これってさ……」


「なによ? 早く言いなさいよ」


「いや……あの……さ。こ、これじゃまるで、女の子みたいじゃないか!」


 デュークが両のクレーンを持ち上げながら「どういうことなのぉ?!」と尋ねると、ナワリンは、こう答えるのです。


「まるでじゃなくて、まごうことなき女の子よ」


「ふぇぇぇぇぇっ?! ど、どういう事――――?!」


「ええとね、こいつホントは女の子だったのよ。嘘だと思うなら、シグナルを確かめてみなさいよ」


 デューク「なっ!?」と絶句しつつ、毛布の中から放たれている識別信号を解析します。フネの識別符号には名前を表すコードも含まれているので――


「巡洋艦ペトラ…………名前が女性形になってるっ!?」


「そう、こいつペトラなのよ」


 あまりのことに「ふぇふぇ」とあえぐデュークに対して、ナワリンは事実を事実として告げてから、毛布に閉じこもったペトラをツイツイっと突っつきます。


 すると毛布の中から「きゃん! くすぐったい~~!」と、明らかな女の子の声が漏れ出て来ます。


「一体、何が…………」


「それはね――」


 ナワリンはこれまでに起こったことをかいつまんで説明します。


「故郷を離れる際に商船に偽装しようとして、識別符号をいじったら、名前が変な感じになって、目元や声の調子も少しおかしくなって、仕方がないのでそのままにしていたら、完全に男の子だと思われてしまって、そしたらちょっと言い出せなくなって――――」


 ナワリンはそこで言葉を区切って「ふぅ」と排気を漏らしてから「あとは察して」と言いました。


「えっと……その……あの……」


「とにかく、これは厳然たる事実なの! 識別符号のコードをいじった罰みたいなものね。まぁ、ようやく復調してきたみたいだわ」


「な、なるほど。で、でも、なぜ隠れるのさ?」


「こいつ、恥ずかしがってて…………う!」


 そう答えたナワリンは「ちょっとこっち来なさい」とデュークの手を取ると、引きずるようにして部屋の外に連れ出しました。



 陽光うららかな天気の中、二隻は宿舎の傍に立っている3メートルほどの樹木の下で腰を落ち着かせています。


「ペーテル……じゃなくて、ペトラなんだぁ」


「まぁ、そうね」


「でもさぁ、なんで恥ずかしがるのかなぁ。女の子だってのは、もう分かってしまったことなのに……」


「あ、そういう事言ったらだめでしょっ!」


「ふぇ……なにか不味いことを言ったかな?」


 ナワリンが細長の目をキリッとさせて睨みつけてくるのですが、デュークは何の事だろうかとおもって、眼を丸くしました。


「だってペトラは…………」


 この時、ナワリンの龍骨にはいろいろな想いが巻き起こっています。そして何かを言いたげにするのですが、言葉が口に出て来ないのです。木漏れ日の下で、薄桃の戦艦の切れ長の目がデュークをまじまじと見つめます。


”大事な事を伝えたいけれど、それは自分の事ではないし――いや、自分だって……自分も? ええっ?! それってどういうことよ!”


 ナワリンの龍骨にはそんな思いや艦上がグルグルと駆け巡っていました。そしてそれは彼女にとってまったく初めての経験であり、どうにもこうにもならなくなり――


「何よこれぇ! 私の龍骨は何を考ええてるのよぉ――!」


「ふぇっ突然叫ばないでよ」


 龍骨の中の思いが溢れそうになったナワリンが、よくわからないまま、言葉を吐き出したので、デュークは艦首をかしげ「わけがわからないよ」と不思議がりました。


「つまり――――」


 と言ったナワリンは「言っちまうぞぉっ!」という感じで龍骨を暴走させつつ、このような言葉を吐き出します。


「ペトラはあんたが好きなのよ――――っ!」


「…………ふぇ」


 デュークの目がまったくの点になってしまいます。それに対して、龍骨が暴走状態に入っているナワリンは「ふぇって言うな――――! このお子ちゃまがぁっ!」などと彼をなじるのです。


 そして――――龍骨がよくわかんない状態に陥っったナワリンは、勢いのままデュークに大事な質問を投げかけます。


「あんた――――私のこと――――どう思ってるの!」


「ええええ、今度は、き、君の事かい?」


 話の流れが全く掴めないデュークは困惑するばかりです。


「そうよっ! ねぇ、どうなのよぉ―――――!?」


「ふぇぇぇ――?!」


 ナワリンから意図を掴めぬ問いを投げかけられたデュークは――


”えっと、ペトラは僕のことが好き――僕はナワリンが――――ええとなんだろう、僕は――ナワリンのことが――――あ、あれ? 頭こんがらがってきた”


 龍骨あたまを混線させながら、思考をまとめようとします。


 するとデュークの龍骨では龍骨に浮かぶコードがご先祖様の形となって「そこで、好きだと言うんじゃ――――っ!」などと絶叫したり、「馬鹿ね! こういうのは本人の気持ちなのよ! こういうのはっ!」というご先祖様が出てきたりして喧嘩を始めるのです。


「あう……」


 もしかしたら、そのご先祖様の声と言うのは、デュークの自身がもつ無自覚な思いの葛藤だったのかもしれません。そして、そんな状態で正しい言葉を紡げるほど、デュークの龍骨は大人にはなっていないのです。だから――


「ちょ、ちょっとまって、そんなこと突然言われても……」


 と、デュークが口ごもってしまうのもいたし方のないことかもしれません。


「デユ……」


 そして、今現在進行形でキレッキレになっているナワリンには、デュークの内心まで忖度できる余裕は、まったくないのですから――


「デュークの馬鹿ぁっ!」


「痛たっ!」


 クレーンを振るって、ベシン! とデュークの艦首を一つはたくと、ナワリンは「ばかぁ――――――っ!」と全力で叫びながら、逃げるようにその場を離れてゆくのです。


「あ………………ちょっと待ってよ!」


 デュークは何が何だか分からない気持ちで彼女を追いかける他ありませんでした。




 木陰からデューク達がいなくなってから数分後――――二隻の頭上に葉を茂らせて木漏れ日を作っていたキーターがクルリと振り向き、満面の笑みを浮かべてこう言います。


「ホッホッホッホホ! 黙っていれば、バレないものなのだのぉ」


「ナイスよキーター! 最高のポジションで、少年少女が三角関係で現在進行形なのを見させて貰ったわ! おねーさん、すっごく萌えちゃった――――!」


 キーターの枝に隠れていたマナカが物凄い笑みを浮かべながら「はぁはぁ、お、おかわり!」などと大歓喜の声を上げました。


「よしよし、デュークのヤツ、追いかけたな。偉いぞ、こういう時は女を追いかけるもんだ! アドバイスもしてないのに、偉いぞ!」


「ふふ、私たちはこうして見守るしかありませんが――頑張って欲しいものですね」


 少し離れた草むらでは、草木をカラダに巻き付け、匍匐前進姿勢で潜んでいたスイキーが「他人の恋路を傍絡みているのは、おもしれーなー!」と笑い声を上げています。すぐ横で地面の中から触角を出して一部始終を捉えていたパシスが分別臭い口調で「応援してますぞ!」と言いました。


「でも、覗き見するのは、ちょっと心苦しいですね」


「違うだろ、俺たちゃ休日を使って、隠密行動の訓練をしていただけなんだ。たまたま、そこにデューク達がいただけなんだよ!」


「なるほど、完璧な理論武装ですね」


「まぁな。さて、合図を出せ、撤収するぞ」


「はい隊長。では、第一宿舎の皆様――――撤収です! あと、第八宿舎の有志のみなさんも解散です。お疲れ様でした――!」


 パシスがそう言うと、辺り一帯の草木の影や岩土の間からザザザザザザザ――――ッ! とした音が鳴り響き、三隻のフネが属する第一および第八宿舎所属のカモフラージュ同好会――――もとい”フネ達の恋路を見守り隊”の隊員が総勢30名ほどもゾロゾロと現れたのです。


 この先――この二つの宿舎のメンバーは偽装カモフラに優れた兵隊であるとの評判を得ることになるのは、火を見るよりも明らかなことでした。

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